語らない恋愛描写の試み

 非常にわかりにくいのですが、サイコブラックは恋愛ドラマでもあります。

 好きだとか愛だとかと言う言葉を一切使わず、明確な描写もなく書いたらどうなるか……ちょうど、主人公のキャラクター的にストレートに愛情表現を行うのは似つかわしくないタイプだったのもあります。

 一応、お互いの性別を意識する場面はあるのですが、それはあくまでも生物学的な分類の域を出ていませんでした。

 

 主人公のサイコブラックは、悪を討ち弱きを助ける為には手段を選びません。と言うより、最短ルートを選ぶことしか知りません。

 自分の行動が悪人に対して非道を働いていると言う感覚が欠落しており、その為に「自分でやっておいて心を痛める」と言うおかしい事になったりします。

 はじめはヒーローとしての使命の為にそうしていたのですが、物語の途中、彼の価値判断は明らかにバランスを崩していきます。

 そして本人がそれに対して疑問を抱いていないため、描写的にもスルーしてあります。

 終盤のネタバレにも絡むのであまり詳しく言及しにくいのですが……この、語らない恋愛描写をやってみるには、サイコブラックは相応しい題材でもありました。叙述トリック的にも、うまいこと作用してくれたと思います。

 結果、読んでくれた知人には「どこに恋愛要素が?」と言われるほど、薄く紛れていましたが……それで良いとも思います。

 サイコブラックで第一に描きたかった事は恋愛では無かったし、こう言う、曖昧な描写があっても良いと思うのです。

 もしもこの作品で確実に恋愛を描きたかったら、私はストレートに描写した事でしょう。

 ちなみに、続編のサイコシルバーがそれに当たります。ブラックとはうってかわり、非常にわかりやすい恋愛模様が描かれていると思います。

 

 結論。

 やはり、はっきり明言しないと、人の気持ちは伝わらないものです。 

 まあ現実でも、薄くほのめかすのではなく、はっきり好意を伝えた方がうまく行く事でしょう。

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