私の描写観を変えた一文

 まことに申し訳ないのですが、何ぶん大分昔の事なので、出典を明確に出来ない事を先に断っておきます。

 

 恐らく小説を書き始めて5年を超えたころでしょうか。

 何となしに、小説の技術を指南するウェブサイトを渡り歩いていた頃、某所の管理人が物書きの先輩に言われたという一言。

「雪とは、ただ真っすぐに落ちているわけではない。風に吹かれて螺旋を描いて降っているんだ」

 を目の当たりにして、一瞬にして私の情景描写スタンスが一変しました。

 本当に、一瞬の出来事でした。

 非常にデリケートで、こういう場で表現しづらい事なのですが、

 描写とは、見たもの・感じたものを文章に変換する事。

 その、体感的な部分を学んだ気がしました。

 そして「本当にこの描写で良いのか?」を常に疑うと言う、当たり前の感覚をようやく身につけられた気がします。

 

 ただ、その出来事で今の作風に至った訳ではありません。

 そこから更に数年、勘違いも経て、失敗を重ねて来たと思います。

 リアリティと言う物にこだわるあまり、そこらへんのどうでも良い、事務所の片隅にあるスチールラックの質感(錆や無数に走る傷)にまでこだわってみたり……未熟者はインスピレーションを受けても未熟者です。

 

 今の時代、こういう“気付き”を与えてくれる一文に出会える機会は減ったのではないかと思います。

 けれど、何が自分の感性を変えるかわからない。

 それもまた、小説書きの醍醐味と思います。

 場合によっては危うい所でもありそうですが。

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