アイリス


アイリスは仕事を終えて家に帰った。


「ただいま〜!あれっ!カラスいたの?」


部屋の真ん中の机の上には一羽のカラスがいる。


「アイリスに押し付けられた仕事ちゃんと終わらせたんだからな!」


カラスはそう文句を言いながら、羽を羽ばたかせて床の上に降りた。


「それは、ありがと!…で、あのね、さっき対価を受け取ってきたんだけど、それの処理しないといけないから手伝って欲しいんだけど…ちょっと人型になってくんない?」


そう言われたカラスはため息をつくと、一瞬で黒髪の青年になった。


「おっ、やっぱりかっこいいね!じゃあさっそく、あの男とイヤリングと血を渡しに行きたいんだけど、どの世界だっけ?色んな世界がありすぎてわからない…カラス、調べてよ」


「りょーかい。ていうか、ちゃんとこのパソコンにデータまとめてあるんだから自分で調べろよ…」


カラスはそう文句を言いつつも、椅子に座って机の上にあるパソコンを開いて調べ始めた。


“世界”というものは数多く存在している。

人間だけの世界、動物だけの世界、鉱物が豊富な世界、吸血鬼が数多く存在する世界、などいろいろな種類の世界がある。

アイリスはそんな世界を渡って、なんでもやを営む魔法使いなのだ。

そして、カラスはアイリスの、使い魔雑用係なのだ。


数多く存在する世界から来る依頼をこなすために、全ての世界に数字を付けてパソコンで管理をしているのだ。主にカラスが。





「おわった?」


数分後、アイリスはカラスの向かいの椅子に座って問いかけた。


「ん、終わった。…まずは、血はこの前オレらに依頼した吸血鬼に渡すけどそれは、明日 009 の約束のカフェに夜6時に行けばいい。イヤリングは、029 のわがままお姫様の依頼で、明日の午前中にでも届けに行くか。…で、その男はどうする?数件依頼があるけど…」


「りょーかい。男はどうしようかな…食人鬼さんからの依頼いつも沢山あるもんね…その男、結構暴力的だから強めの男に渡したいかな…。015 にいるあの食人鬼に渡そうかな…」


「わかった。早い方がいいみたいだから、今から届けに行こう、アイリス」


「はーい!じゃあ 015 にいこう!いやあ、依頼人に丁寧語で喋んの疲れたからちょうどいいね。さっきなんて、なんて挨拶すればいいか分からなくて『お久しぶりです!』って言っちゃったんだよね……1日しか経ってないのに。けど、アイツなら気楽に喋れるから楽だ!よし、行こう!」


そう言ってアイリスが立ち上がったと同時にカラスも人型からカラスに戻り、アイリスの肩に止まる。


「まて、生きてるか?」


カラスは出発する寸前にアイリスを引き止めた。

アイリスは水晶を手のひらの上に出して確認し出した。


「…1日しか放置してないから生きてるよ。息あるし、魔法で眠ってるだけだし、大丈夫。なんかあっても多少生きてれば治せるから問題なし!」


「はぁ、人間はさ、結構脆いんだから、しっかりと管理しろよ…。よくこの仕事1続けられてるな…もう、100年くらいになるか?アイリスも、例え見た目が中学生だとしても、若くないんだからしっかりしろよ…」


カラスは呆れたように言った。


「は?何言ってんの?年齢のこと言うんじゃねぇよ。ババアじゃねぇし…っと、ちょっと!いつも言うけどね、年齢なんてどうでもいいじゃん!カラスがしっかりしてるから大丈夫!そんなことより早く行くよ?しっかりと捕まっててね!では、出発!」


アイリスにとって年齢の話は地雷のようだ。


アイリスは、カラスがまた何か余計なことを言う前に、淡い光を包まれながら目的の世界へと消えていった。






〈なんでもや アイリス〉


アナタに憎い相手、復讐したい相手はいませんか?


消えて欲しい人がいるけれど自分ではどうしようも無い、と思っている人はいますか?


そんなアナタの願いを なんでもや アイリス は叶えます!




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アイリスのお仕事 ネオン @neon_

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