第3章 公安ゼロ編
プロローグ
現代は4月。
桜の花が舞い散り、人々が新しい出会いに花を咲かせる季節である。
「わざわざ電車乗らないといけないのダルいなぁ」
「なら、僕が車で送ろうかい?」
「光瑠、お前免許持ってないだろ」
「持ってないよ」
「笑顔で無免許運転しようとするなよ」
隣に座る光瑠が笑顔で答えるので、俺は苦笑しながらツッコミを入れる。
「私は電車なんてほとんど乗ったことないから楽しいよ」
「痴漢されるかもしれないから結界張っといた方が良いわよ」
「そうなの結梨ちゃん?」
「ええ、先生に言われたわ」
「真顔で嘘を吹き込むなよ」
沙月に嘘を吹き込む結梨に、俺は横からツッコミを入れる。
光瑠は兎も角、結梨までボケに回ると俺がツッコミに回らないといけない。
「まぁ、でも痴漢されるかもしれないのは嘘じゃないから気をつけなさいよ」
「う、うん」
どうして俺、光瑠、沙月、結梨、の4人で警察総合庁舎を目指しているかと言うと、今日4月3日が俺達の初出勤の日だからである。
初出勤というのは勿論公安ゼロにだ。俺を含めたこの4人が公安ゼロに新しく入ることになった軍校の新2年生である。
「お前らも公安選んだんだな」
「僕は揉み消して貰った恩があるからね」
「なるほどな」
俺で3つもスカウトが来てたんだから、光瑠はもっと沢山スカウトが来ていたとしてもおかしくないだろう。
「私は公安ゼロからしかスカウト来てないから」
「同じく」
1年でスカウトされるのはほとんどが生徒ランクがSランクの生徒であり、俺や光瑠は生徒ランクSという肩書きのお陰でスカウトが来ている節がある。その為、Aランクでスカウトされるのは相当凄い事だ。
「そろそろ着くわね」
「ああ、そうだな」
警察総合庁舎の最寄り駅である次の駅にもうすぐ到着するというアナウンスが流れたので、俺達は降りる準備をする。
電車を降りてから少し歩くと、すぐに警察総合庁舎に着いた。
「公安ゼロの本部って警察庁の中にあるの?」
「公表されていない地下4階にあるぞ」
「何処から地下4階まで行くわけ?公表されてないならエレベーターは繋がってない筈よね」
「えーと、確か特別な入り口があってそこから入る」
1度公安ゼロの本部に入っている俺へと連続で質問が飛んでくる。
「あっでも・・・・・・」
「どうかした?」
俺が苦笑しながら何かを思い出した様な言葉を口にすると、結梨は怪訝そうな表情でそう聞いてくる。
「公安の基地までの道のりには色々もセキュリティがあるんだけど、俺にはそれを1つも解除出来ない」
「はぁっ!?じゃあどうするのよ!」
「大声出すなよ。警官が寄って来るぞ」
私服の高校生なんて普通の警察官や一般職員からしたら、部外者にしか見えないだろう。そんな俺達が警察庁の敷地内で騒いでいたら、職質されるに決まっている。
「それでどうするんだい?相真」
「取り敢えず舞さんに電話してみるようかなぁ」
そう言ってポケットからスマホを取り出して電話を掛けようとしていると、1人の女性がこちらに歩み寄って来る。
「貴方達が東京軍事高等学校の2年生の方々ですか?」
こちらまで近づいて来た女性にそう聞かれる。
彼女の容姿は色白で黒髪、服装は黒のスーツと一般的である。
一見は警察庁に勤める普通の女性に思えるが、軍校を知っているという事は、こちら側の人間であろう。公安ゼロのエージェントだろうか?
「・・・・・・そうですけど。貴女は?」
「失礼、私は
そう言って彼女は軽く頭を下げる。
「皆さんを案内いたしますので着いて来て下さい」
そう言われたので、俺達は言われた通りに彼女に着いて行く。
綾川さんに連れられて公安ゼロ専用の入り口から、本部へと入って行く。
相変わらずサイバーチックなデザインをしている場所だと思いつつ、廊下を進んで行く。
「これからここ公安ゼロの指揮官である双葉 舞と会って貰います」
望さんがそう言うと、3人、特に沙月と結梨のの表情が強張る。
まぁいきなり公安ゼロのトップと会うんだから当然だろう。俺も職務体験の時は同じくらい緊張していたしな。
(まぁ実際はそこまで緊張する必要は無いと思うけど)
基地の中の最奥の部屋の扉の前まで来ると、ノックしてからその扉を開ける。
「舞さん、新人の方々をお連れしました」
「ありがとね、望ちゃん。お疲れ、下がって良いよ」
「ハイ、失礼します」
部屋の中に入ると舞さんがお洒落な椅子に座って微笑浮かべていた。
舞さんは望さんにねぎらいの言葉を送る。それを聞いた望さんはぺこりと一礼して、その場を後にする。
「取り敢えず自己紹介するね。私は双葉 舞、ここの指揮官である『Numbers』の『ZERO』よ。宜しくね」
そう言って彼女はニカッと笑う。
「自己紹介も終えたし、君達に公安がどんな組織かの説明をするね」
舞さんはタブレットを操作しながら話を続ける。
「私達公安ゼロはこの国を守る盾であり、国の害となるありとあらゆる存在を排除する刃でもある。公安は国防の要、この国は公安があるから生きていると言っても過言じゃない」
舞さんは自慢げにそう話す。その後1度間を開けてから再び口を開く。
「じゃあ具体的にどんな事をしているのか。相真君、分かる?」
「えっ?えーと、犯罪者を捕まえてる?」
唐突に俺へと質問が振られる。驚きせいでなんとも頭の悪い回答となってしまった。
「それも間違いではないけど、それだけじゃない。私達の仕事は多種多様にある。スタンダードな所だと、犯罪者や危険人物の監視や逮捕。テロリスト、犯罪組織、反社会的勢力の監視や殲滅。国外の任務だと、仮想敵国での諜報活動、海外の犯罪組織や反社会的勢力、その他武装勢力などを監視したりしている。後は国内にいるスパイを捕らえたり、要人の護衛をしたり、裏であくどい事している悪〜い権力者の排除。他にも別の組織は出来ない仕事などをこなしてるよ」
「なるほど」
舞さんはタブレットを使って分かりやすく仕事の内容を説明をしてくれる。
想像以上に仕事の種類が多い。その上、重要性、危険性共に高いであろうものもあり、これなら国防の要と呼ばれていてもおかしくない。
その後も公安ゼロの組織構成や基地の構造などの説明30分程度受けた。
「まぁ、こんな所かな。他に何か聞きたい事ある?」
「いえ、特に無いです」
ぶっちゃけ情報量が多すぎて途中から聞いていない所もちらほらあった。まぁその辺はいつも通りルナに任せておけばなんとかなるので問題無い。
『そろそろ私も怒りますよ?』
『でもルナって怒った事ないじゃん』
『それはそうですけど・・・・・・・』
「じゃあ最後に入隊式的なことして解散にしようか」
「入隊式、ですか?」
「そう入隊式。まぁ一瞬で終わるけどね」
入隊式があるとは聞いていなかったので、俺達は首を
彼女は椅子を引き、その場で立ち上がる。そしてーー
「国立東京軍事高等学校2年生、黒木 相真、白夜 光瑠、星那 結梨、雪宮 沙月、以上4名を『ZERO』双葉 舞の名の下、公安ゼロのエージェントとして任命する」
燃える様な瞳で俺達を見つめながらそう告げる。
「「「「はい!」」」」
「ふふ、いい返事だね。それじゃあ、この国を守る為に力を尽くしてね」
俺達4人の声が重なり、それを聞いた舞さんは笑顔を浮かべる。
スペル・ソルジャー ゆっくりユキト @yukkryukito
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