春を継げる歌

@kamisamanoinaisekai

春を愛する人

ある病院の一室、『北内 沙羅 様』とかかれた部屋に、私はいる。


ある学校の一室、『3年2組』とかかれた教室に、私はいる。


ある友情の一幕、楽しそうに仲良く肩を並べて帰る高校生の隣に、私はいる。



どれも、私。そう、どれも『私』


私は『私』

私は『北内 沙羅』

他の誰でもない『北内 沙羅』


けれど、私は『北内 沙羅』だ。


『北内 沙羅』は優等生だ。

だけど、私は劣等生だ。


『北内 沙羅』は眉目秀麗だ。

だけど、私は醜女だ。


『北内 沙羅』は皆が大好きで、皆も『北内 沙羅』が大好きだ。

だけど、私は皆が大嫌いで、皆も私のことが大嫌いだ。


『北内 沙羅』は私だ。

だけど、『私』は北内 沙羅じゃない。


私が『北内 沙羅』になったあの日。

『私』は誰にも見つけられない様になった。

『私』は誰にも探されないようになった。




『私』は皆の記憶からいなくなったんだ。



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