史実によって作られたのかと思うほどに、貴族・王族として抱える問題を丹念に描いており、前半部は一つの史料として読んでみるのも面白い。それも、同時代に生きた民衆ではなく、より内情に通じた「ある王国の婚約者」によるものであるため、独特な情緒もある。後半部では、数奇な運命に振り回された主人公の新たなる日々が描かれており、境遇に惑わされない姿勢に励まされる。