クラス会

勝利だギューちゃん

第1話

窓際に、ぬいぐるみが置いてある。


子猫のカトレア。

私がデザインした、ぬいぐるみ。


私はもともと、イラストを描くのが好きだった。

いわゆる、ゆるキャラ。


クラスの子たちもみんなそれを、知っている。

クラス全員に、それぞれのゆるキャラを、デザインしてあげた。


海が好きなMくんには、イルカ。

はちみつが好きなKちゃんには、クマ。


私は、ネコにした。

名前は、カトレア。

カトレアの花言葉のような、大人の女性になりたい。


そう、願いを込めた。


なぜなら、私はそれまで、生きられないかもしれない。


私はもう、長い間入院している。

日に日に、弱っていくのがわかる。


そんな私に、クラスの子たちがお金を出し合って、ぬいぐるみを作ってくれた。

それが、私のゆるキャラの、カトレア。


イメージキャラと言った方がいいかもしれない。


毎日、会話をするのが日課となった。


ある日の事。

不思議な体感をした。


私は、カトレアと一体となった。

私の魂が、カトレアに乗り移ったかのような・・・

不思議な感覚。


ネコとは言っても、擬人化しているので2足歩行。

私は、窓から抜け出した。


一階なので、簡単に出れる。

「高所恐怖症の設定にしておいて、よかった」


今更ながら、思う。


ネコは夜になると集まるという習性がある。

でも、私はネコであって、ネコでない。


久しぶりに学校へ行くと、自分の教室に灯りがついていた。

とても、賑やかだ。


恐る恐るのぞいてみると・・・


「あっ、カトレアちゃん、久しぶり」

「退院、おめでとう」

「脅かせようと思って、知らせなかったんだ」


私は、愕然とした。


ホワイトボードには、『カトレア、退院おめでとう』と、書かれていた。


クラスには、たくさんのぬいぐるみたちが、ざわめいていた。

しかも、私がクラスの子たちに、贈ったイメージキャラばかり・・・


イルカの子が、話しかけてくる。

Mくんに贈った。


「Mくん?」

「何言ってるんだよ。マリンだよ」

「マリン?」


確かそう名付けた。


「じゃあ、くーちゃん?」

「そうだよ。忘れないでよね」

クマの子に、話しかけた。


しばらく、クラスの子たちと話す。


すると、先生が入ってきた。


確か先生にも、作ってあげたな。

確か、コンドル。

日本語だと、怒られるので、やめておく。


ぬいぐるみの名前は、うたさん。

初老の男性で、恐妻家。

という設定。


釣りが好きらしい。


「え・・・先生?」

そこにいたのは、うたさん・・・


「みんな、夜遅くにすまんな。今日は、カトレアの復帰会だ」

拍手が起こる。


「みんな、無礼講だ、楽しんでくれ」

歓声が起こる。


皆が、私を取り囲む。


うたさんは、落語が得意。

素人名人会で、何度も優勝している。


「内緒なんだがな・・・」


素人名人会は、落語や漫才で出演した方には、番組から「また出てください」と、声がかかるらしい。

歌はたくさんくるが、落語や漫才は少ないので、オーデションがなく、ほぼ受かるらしい。

ここだけの話。


和気あいあいとしている。


「楽しいクラスだな。また戻れるかな」

私は、涙が出てきた。


「カトレア」

「Sくん・・・でなくて、ラルフ?」

「君に涙は似合わない」

「相変わらずキザだね」

「涙が似合うのは美少女だ」


ほっといて。


でも、嬉しかった。


翌朝。


私は、教室で目が覚めた。

私は私だ。


カトレアのぬいぐるみを抱えている。


そしてクラスには、ぬいぐるみが散乱していた。

昨日会った、クラスの子たちの・・・


「そっか・・・」


私はぬいぐるみたちを、集めてそれぞれの席に着かせた。


「みんな、ありがとね」


ホワイトボードには、こう書かれていた。


『加藤玲亜ちゃん、私たちはいつまでも、クレスメイトだよ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クラス会 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ