第11話
「まず私が言いたいことは私が神だということだ。それは最終戦争の時にはっきりと証明される」
延々と熱弁する魔王ジェフリー・メイソンは小柄で長髪あご髭の狡猾そうな男。眉間に漢字で「神」の刺青。
「僕とアヤミちゃんの間に出来る子供をあなたが引き取る件についてですが、ルシファーさんが大変不満に思われていて」
「まだアヤミは妊娠していないようだがいつになるのかな?」
この男は神と名乗りつつアヤミちゃんの不思議を見抜いていないのか。底の浅い人だと思いつつ慇懃無礼に返答。
「彼女はまだ学生なので、まだ先の話になります」
「それと子作りはまた別の話では」
「どちらにせよ先の話になります」
「孕んだら腹を裂いて胎児を取り出し肉屋に売る。この宮殿はそうやって稼いだ金で建てた」
自慢気に語る魔王。こんな腐った奴がいるとはさすが魔界。怒りに任せ金属バットを頭に振り下ろす。手応えはガゴンとあったが倒れない。
「私は神だ」
もう一回。倒れない。魔王と呼ばれるだけあってルシファーの金属バットも効かないのか?
「私は神だ」
横殴り。少しぐらついた。
「私は神だ」
「なんで逃げない」
「神は悪魔の使いから逃げない」
魔王ジェフリー・メイソンは頭を殴打されるごとに「私は神だ」と言い続けた。フルスイングしているので息が乱れてきた。それを見て取った魔王は誇らしげな笑顔で「私は」と言いかけたが眉間の「神」という刺青が裂けて流血し、白目をむいて昏倒した。
亡骸に背を向けて出口に向かうと彼の部下らしき若い女性がいた。スーツ姿。胸元にIDカード。
「何故誰も助けに来なかったんです?」
「神は助けても助けられることはないと常々仰っていたからです」
失望したように彼女は返事をした。
こうして僕は魔王になった。だが大して生活は変わっていない。相変わらず税務課で働いているし、アヤミちゃんは高校に再び通い始めた。まだキスもしていないがたまに僕の部屋に勝手に入って来て、そして出られず相変わらず首を傾げている。
紫水晶の宮殿は僕のものになったが外見も内装も悪趣味で住む気にはなれず売ってしまった。さて、売り上げはどこにも申告していないがそのうち取り立てが来るだろう。何も払う気はない。もはや僕は神に近い特権階級なのだから。(了)
ルシファーの娘婿になってみた スリムあおみち @billyt3317
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