第10話

 魔界は夜なのに明るい。都会の繁華街のようなところ。空気は排気ガス臭い。

 リーゼントの派手なスカジャンを着た男が巨体を揺らして近寄ってきた。


「いいもの担いでるね、どちらさんっすか」

「ルシファーさんの使いで、ジェフリー・メイソンという人に会いに来たんですが」

「ジェフリーのクソ野郎なら、あの家にいるよ。呼び出す?」

「あなたはルシファーさんの部下ですか?」

「部下っていうかその金属バットで殴り殺されて子分になった人。で、おたく何しに来たの」


「魔王ジェフリー・メイソンを倒さないと家に帰れなくなりまして」

「なら呼びだす」


 リーゼントの男は携帯電話を取り出した。

「ジェフリー、ルシファーさんが殺し屋送り込んできたけどどうする?会う?逃げる?」


 通話を切ってからぎゃははと男は笑った。

「話せば分かるはずだから家に案内しろって。話すことなんて何も無いんでしょ?」

「無い」

 僕は金属バットを肩に担いで紫水晶の宮殿に向かった。

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