38話 鋼の大蛇! 妙に頑丈な掘削機械(多分)に大苦戦!
岩をくり抜いた通路から飛び出た
いきなり重力が来てガクンと落ちるが、直ぐに
「重力魔法だっけ、
飛び出た先は、覆われた岩をくり抜いた椰子の実型の居住区画の空洞だ。
通路はその先端の中央にあったので
「広いな。居住区画」
と、中央部に建物が付いてる巨木が眼前に迫る。
「あぶねぇ!」
中央にあるでんと聳え立つ樹の枝葉にぶつかりそうになるがなんとか回避、ぐるりと廻り込むように滑空する。兎竜は廻りつつゆるりと減速していく。
ぶつかりそうになった、でんと中央に聳え立つ、太い樹は、系統樹のように上に伸び、沢山の太い枝は、天井を突き抜けて生えてるように見える。
まるで生きた樹の柱だ。
四方八方に伸びる枝に、密に生い茂る葉が沢山付き、なんというか
力強い安寧を与えてくる。
岩窟の壁面は光苔が覆い、淡いとはいえない強めの光が岩窟内を力強く照らしている。
眼下に見える地面には光り苔とはまた違う種類のような苔や草が生え、岩の大地に緑の彩りを添え、花々も咲いている。
小さな畑もあり、残された家畜の類も居る。
……多分家畜だよな。あの三本角の牛みたいなの……
建物は岩を利用しているのか苔を背負った大岩に扉や窓が付けられたようなものが多数あり、生活臭溢れる小物が家の横に置かれている。
家々は壁の側面にまである。
鉱山小惑星と言うが、見たこともない感じではあるものの、のんびりした綺麗な田舎の村落という感じだ。
『マジかよ。小惑星の中やぞ。こんな僻地で普通に生活しとるやん』
おいらは魔法世界の技術に驚く。
『
プリカが小声で念話して教えてくれる。
プリカさん、小声で念話しても丸聞こえは変わらん気もするが……
先ほどカーナに怒られたのは余所見していたおいらだから多分大丈夫やで。
滑空しつつ下を眺めると、逃げ遅れたのか、まだここに居る人、十名くらいと甲冑兵数名がなんか揉めている。
「帰れ、わしらは此処に残るんじゃ!」
「そうじゃ、そうじゃ。敵とかわしらは襲われてないぞ!」
『妙な振動が来てる。敵襲かもしれない。退避しろジジイ!』
テルルがブチ切れている。
と、箒に乗った魔女隊、三分隊、九名が到着した。一分隊が降り、もう一分隊とプリカの隊は岩窟内を緩やかに飛んでまだ残っている人が居ないか調べているようだ。
『広域念話でお知らせした通り、惑星『翡翠』は壊滅しました!もう助けは来ません。最初で最後です、お願いですから退避をお願いします!』
広域念話でプリカが呼び掛けている。必死な感じで岩窟内を魔女隊の箒が飛び回る。
と、おいらの感覚に何かが引っかかる。左上の方だ。大きい!
『なにかが来る!左上!大きい!』
おいらは念話で警告を発する。
曖昧な感覚だが確かにうっすらと見える。
大きな振動が、残ろうとしていた人々を襲い始め、爺婆が転倒している。
何か妙な音も聞こえ始め、それが轟音になっていく。
『残るのは許可しない! 鉱山員は
カーナの途轍もなく強烈な意思込みの広域念話が来た。甲冑兵や箒の魔女隊も一瞬よろめく強烈な奴だ。これに従えない奴は人間じゃねぇ!
「「「ひいいいっ」」」
カーナの強烈な意思込みの念話で軍人でもない、非難拒否していた人達は、腰を抜かした奴多数。
おいらは兄貴でこういうのは慣れている。問題ないっす。むしろ感動。
『放射念探(高深度探知魔法)許可! 残ってる奴は無理やりでも全員連れて来い。確保後、急いで離脱しろ!』
『了解!』
放射念探なのか、ぞわりとする感覚がおいらを撫でる。結構いやんな感覚。
『居るのはこいつらだけだ。あたいらは殿だ。魔女隊、彼らを頼む!』
テルルが甲冑の面頬を下げ背中の槍のような武装を構える。
部下の甲冑兵もそれぞれ、剣盾とごっつい杖のような物を構える。
甲冑兵達に強力な魔力の高まりを感じる……が三名で支えきれるか……
魔女隊の箒が次々舞い降り、腰を抜かした爺婆を可愛い声で鼓舞しながら、それぞれ後ろへ無理やり乗せ、更に巻きつくように紐のようなものを箒から放つと彼らを固定し、発進可能になった者達から次々と飛翔していく。
『猿さん、お爺さん達置いたら、直ぐに戻ってきます!』
プリカも爺さんを箒の後ろへ乗せつつおいらに叫ぶように念話してきた。
『戻る必要は無ぇ。そのまま突撃艦で逃げろ』
『その通りだ。後はあたいら陸戦隊に任せろ!』
岩を砕く轟音と己の振り撒く轟音とともに大きな何かが天井から飛び出して来た。
それは聖樹の若木とその中央にある作業小屋を粉砕しながら落下し轟音とともに地面に落ちる。
開口部は岩を切り裂く為か、家一軒分くらいの大きさの口のような円状のギザギザが交互に逆回転
しながらギリギリと回転している。
『敵襲!大型の鋼の蛇型』
テルルが即座に報告。おそらくは高深度念話。大雑把な説明のようで、テルルの視覚映像と説明込みでかなりの情報が伝わっているハズ。
カーナが即断して命令を下す。
『陸戦兵二分隊、行け。無理して倒す必要はない、救助確認出来たら撤退しろ』
『『『了解!』』』
念話から港に居る他陸戦兵が援軍に来る声も伝わって来た。
そいつは首を持ち上げるように上を向き、テルル達の方を向く。
『放て!』
テルルが構えた長い鉄槍に描き込まれた魔法陣が淡く輝く。
後方で上に向け構えていた甲冑兵のごつい鉄杖も淡く輝く。
一瞬で高熱になった空気により爆発するような音とともにテルルの鉄槍の先から火炎球が射出、後方の甲冑兵の鉄杖からは空気を切り裂く音とともに雷撃が射出される。
射出の衝撃で土煙が上がる。
火炎と雷撃は敵の鋼の大蛇に着弾する。が……
『ちっ。さほど効いてねぇ』
『俺が行く!』
『馬鹿、お前、止めろ!まだ退避が終わってない!』
テルルの怒鳴り声。
『猿、お前は戻れ、
高深度の念話がカーナから来た。緊急だからか内容が一気に来る。
対艦も想定されている
訓練受けた飛竜ならある程度強度を変えられるらしいが
……気が荒くて乗り手いなかったらしいからなぁコイツ。
テルル達の連続魔法攻撃で鋼の大蛇の外板は赤熱し、動きが多少悪くなっている。
が、鋼の大蛇は土を弾き飛ばしながら、口のようにも見える掘削円盤が嫌な唸り音で高速で回転させながらテルル達に迫る。
テルル達は鋼の大蛇の到達前に更に数発攻撃を叩き込んだが、破壊までは至らず、邪悪な口の如き掘削円盤が物凄い音を立てて迫り、素早く前へ出た盾持ち甲冑兵が
盾で受け止めた。
巨大な掘削円盤が甲冑兵の盾にぶち当たり、ギリギリと嫌な音を立て削り捲くる。
盾持ちの甲冑兵は受け止めたものの、かなりきつそうだ。
「こりゃ持たねぇ……」
上空から見ると鋼の大蛇は円筒を関節で繋ぎ合せたような形状だ。
繋ぎ目は恐らく弱い。そして恐らくは……
テルルの甲冑が鉄槍を構え、盾持ちの後ろから弾かれるように飛び出し、飛翔。
『取ったぁぁぁ!』
掘削円盤の後ろ、頭部っぽい部分に急旋回、急降下で鉄槍を突き刺すと同時に火炎球を射出したのか鋼の大蛇の全部から盛大に炎が噴出す。
鋼の大蛇は首にテルルを乗せたまま、暴れ廻る。
鉱山の人達の住処は一撃で粉砕され、土砂と建材とともに、家具が衣服が撒き散らされていく。
口というか、掘削円盤はその回転をほぼ止めるのには成功した……が本体の動きにはさほどの変化は無い。
暴れまわる鋼の大蛇の動きに耐えられずテルルが遠心力で振り落とされた。
横倒しで地面に叩きつけられる。テルル。
直ぐに魔力を推進器らしき部位に流すと其処から離脱しようと試みるが鋼の大蛇の掘削円盤が叩き付けるように、其処へぶち込まれる。
『テルル! 大丈夫か』
おいらは歯噛みしながら呼びかける。
『あたいは大丈夫だ! お前も退避しろ!猿!』
鋼の大蛇は地面に埋まり動きの鈍くなったテルルに何度も掘削円盤を何度も叩きつけた。
テルルの甲冑の障壁の淡い輝きが、明滅するように薄れてるように見える。
盾持ちの甲冑兵が盾で守ろうと近づくが連打が激しいく簡単には入り込めないようだ。足場も悪いので下手すればテルルとともに連打の餌食になってしまう。
少し遠くから援護の障壁を展開、テルルへの打撃を緩和してはいるが、連打はとまらない。テルルが潰されるのは時間の問題か。
杖持ちが雷撃を浴びせるも、その動きを鈍らせるには不十分のようだ。畜生、無駄に頑丈だな、鋼の大蛇さんはよ。
どうする。どうやって倒す?
魔女隊の箒は振動で転んだ爺婆で発進が遅れてるのが三機ほど見える。
おいらは蛇の廻りを飛び、注意を引こうとするが、ガン無視される。畜生!
カーナには悪いがおいらは退避する気は無い。仲間を置いて逃げるとかあり得ない。
「
掘削機械だよな。機械っつーと、おいらの世界と根本的に似た代物なら、精密な中央演算装置は基本振動や動きの少ない場所にあるはず……
となると中央付近が怪しいなぁ。というか中央部に大きめの円筒部分があるじゃねーか。
……あそこが狙い目か。
最近、物凄いおいらの視覚で目を凝らすが内部構造は……見えねぇよな……そりゃ。見えても構造理解できるかって問題もあるけど。
おいらの思考を読んだフッ君から自分の機能の利用の念像付き提案が来た。
フッ君が提案した機能なら内部の一部をぐしゃぐしゃには出来るはず。
……いける!……多分な。
『テルル、もう少し耐えろ、おいらがなんとかする!』
『馬鹿、来るな!』
テルルが叫ぶがもう遅い。
頼むぜ、
おいらの思考を
「うっしゃぁぁぁ!」
加速の付いた
軍服のフッ君の性能無しではあり得ない速度での衝突。
殺し切れない慣性に足が膝が、悲鳴をあげる。
「……!!!」
声にならない声で痛みに耐えつつおいらはフッ君に魔力をブン流す。
おいらの腕というかフッ君の袖口から半透明の黒い帯がぶわっという感じでとびだす。
『な、なんだ?狭い所に落ちた物を拾うとき使う魔力手……じゃないか』
下から見えたのかテルルの叫ぶ。
『お前、そんなもんで何する気だ! 素人が出しゃばるんじゃねぇ、逃げろ!』
やなこったい。おいらは三下だ。好きなようにやるっすよ。
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