魔道星戦-星間戦争にパシリ三下が召喚されて勇者とか呼ばれてもマジ困るんよ。でも超強美少女に可愛い魔女、小悪魔性格の竜に囲まれちょい嬉しい
28話 陸戦隊の着ている甲冑の正式名称は重骨装甲《じゅうこつそうこう》と言うらしいっすよ
28話 陸戦隊の着ている甲冑の正式名称は重骨装甲《じゅうこつそうこう》と言うらしいっすよ
ひと段落ついて、座っているおいら達にファナ艦長が何か話そうとしたときに、念話で連絡が来たようで耳を押さえて何か話している。
「そういえば会議の時間ですねー」
優雅に上を見上げるとカーナの方を見る。
「わたしも猿と手合わせしてみたいんだけど」
おいらの方を見るカーナ。
「無茶言わんで下さいっす。一撃で屠られます」
おいらは断固拒否する。おいらがなにかどうか出来るという絵が見えない。
訓練にもなりそうにもない。
確実に痛いことになりそうだし。
「飛竜隊の指揮官が来なくてどうしますー?」
ファナ艦長に耳を掴まれ引きづられて行くカーナ。
「痛たた!行く、いきますから放して艦長」
引きずられていくカーナ。手を少し上げおいらの方に手を挙げ指を震わしてる。
挨拶かな?
おいらも軽く手を振り見送る。プリカも手を上げ指を震わしてる。
どうやら手を振ると同じ意味合いの動作っぽい理解は間違っていなかったようだ。
「見送りのときの動作は、ほぼ同じなんですね」
プリカが手を振るおいらを見ながら言う。
「だな。しかし先生と生徒みたいだな」
引きずられて行くカーナを見送りながらおいらは呟く。
「当たらずとも遠からずです、ファナ艦長は軍属の教導官の長でもありますからね。特に飛竜隊になる選抜兵達は直接教導することも多いらしいですよ」
「激務?」
「どうでしょう? 軍の規模も小さいですからね」
「おれら殖民惑星の軍なんか自警団に毛が生えたようなもんだぜ。まぁ艦長は歴戦の指揮官だけどよ」
近くで訓練していて、おいらの手合わせを囃し立てていた陸戦隊の連中が近づいてくると、歴戦の兵士っぽい容姿の陸戦隊のおっさんが近づいてくると話かけてきた。
テルルを怒っていた古参兵っぽいおっさんだ。
テルルも横に居る。運動用の軽装でもなく、全員が甲冑に乗り込んだ時の軍服着用なのが、おいらからすると違和感あるが、軍服の機能使用も訓練項目のひとつなんかな。
ごま塩頭の古参兵っぽいおっさんはおいらの前に腕を組んで立つ。
「艦長相手にあれだけやれるとは、結構やるじゃんよ」
言いながら穴だらけな廻りを見回す。
おいらも見回すが、ちょいと驚く。
「あ、穴が殆ど塞がってんじゃん」
「ん? 何驚いてんだ。
ごま塩頭が頭を掻きながらおいらの目線を追い言ってくる。
何時の間にか沸いたか、ゲル状の粘性生物が落ちた枝等を取り込み、床は元に戻りつつありすでに、闘争痕は綺麗になりつつある。
「お掃除機能つきかよ」
魔法技術凄ぇ。
おいらが感動していると、頭の後ろで手を組みながらテルルが横槍を入れてくる。
「結局逃げてただけじゃん」
「やかましいわ……と言いたいけどその通り。だから手合わせしようとか無しな」
「え?」
やはりテルルはそれを言うつもりだったようだ。先手を打って正解だった。
回復魔法あるからと四肢切断も普通にあり得る魔法世界の軍事訓練とか嫌です。
「え、そりゃねぇよ。なぁ」「俺等と違う戦い方の奴と手合わせできるなんて数百年先でもないぞ」
陸戦隊の他の連中も騒ぐ。全員手合わせする気だったらしい。
さすが陸戦隊。血の気多い奴しか居ねぇ。
「おいらも違う戦い方には興味あるけども、荒っぽ過ぎるんだよぉぉ」
艦長であれなら陸戦隊はいわずもながだ。
プリカもおいらの横で頷いてる。
「ま、おいおい慣れれば、戦う機会もあるだろうよ」
ごま塩頭の古参兵が騒ぐ仲間を収める。いや、戦う事はないと思いますよ。
「戦用魔具や戦器や陣を使いこなすようになればかなり手強いぞ、こいつは。なんたって数万年ぶりに召還された特異点だからよ」
「魔力は桁違いだし、速いしな」
テルルが獣の目になっておいらを見てる。戦いてぇ、戦いてぇと心の声が漏れ出てる。おいらドン引き。
「の、脳まで筋肉はこれだから困る」
「は、違いねぇ!」
面白かったらしく陸戦隊の連中はお互いを指差し大笑いだが、褒めてないから。
「確かに戦用戦具や戦器の攻撃は魔力依存な部分もありますし、猿さん戦具装備すれば強いかもですね」
プリカが分析と言う名の煽りを入れてくる。やめてけれ。
陸戦隊の連中が全員手合わせしてぇぇぇな顔になってる。
……待てよ。カーナの部下になりたいおいらは、つまり軍属になるって事だよな。
「……ちょいと聞きたいんだけど、カーナの部下になるにはどうしたらよいんだ?」
陸戦隊の連中は顔を見合わせると大笑い。
「え、おいらなんか変なこと言った?」
「いや、そういう訳じゃねぇけどよ」
ごま塩頭が頭を掻く。
「竜騎士連中は相当な化け物揃いだぞ。そもそも飛竜に空きがあって尚且つ
気に入られなければなれないからそちらの面でも厳しいって話よ」
「おう、そゆことか」
落ち込むおいら。それを見てかプリカが少し考えると
「でも猿さん、
「お、お前あの
ごま塩頭が言うと、陸戦隊の連中も頷く。
「飛竜は魔力高い乗り手を選ぶから、戦力増やすのがなかなか大変でよ。
現状かなり飛竜の戦力不足だったんで、確か移民前に売りつけられた卵子があったと羽化させたらしいんだが……」
ごま塩頭は手を広げおどけるように言葉を続ける。
「飛竜より扱い易いが売りだったらしいが、逆でよ。乗り手は選ぶし性格は扱いづらいしでほぼお蔵入り。但し、短距離なら飛竜より速いから使いではありそうだったんだが……そうか使えるのか」
「魔女隊と飛竜隊の中間辺りの戦力を期待されてたらしいです。まさか飛竜以上に乗り手を選ぶとは想定外と聞きました」
おいらも戦闘を思い出して同意する。言う事聞かない場合もあるし、飛竜ほど攻撃力もない。
「能力的には確かにそんなところかな」
……けど結構男気がある性格はおいらは好きだぜ。
「軍属になるなら陸戦隊にしろよ。甲冑……
テルルが腕を振り回しながら言ってくる。
「
「
気の短いテルルを怒らせないように気を使いながらおいらは断りを入れる。
「そうかぁ。
落ち込むテルル。とりあえず理屈は通じるらしい。意外だ。
「はっはっは!振られたなテルル!」
陸戦隊の連中大笑い。
「そんなんじゃねぇよ!」
赤くなってごま塩頭に吼えるテルルを仲間が囃し立てる。
やめろ、こういう気の短い娘はからかうと何しでかすか判らんと昔、仲間に聞いたことがある。動揺して後ろへ下がるおいらの気を読んでか読まずかごま塩頭が違う話を振って来た。
「そういえば、工房の爺が渡したい物があるって言ってたぞ」
「え、なんすかそれ?」
おいらはその話題に飛びつく。
「ついてからのお楽しみって奴よ」
陸戦隊の他の奴も工房へ付いて来たそうだったが、訓練中でもあり、残念そうにしていた。テルルは何故かついて来ているがお咎め無しだ。
「あたいは陸戦隊の指揮官の一人だし、召還された謎の存在(おいらの事)の観察も仕事のうちさ」
「いや、さぼりたいだけだろ?」
「ああん?喧嘩売ってんのか」
喧嘩腰になるテルルにプリカがあわあわしている。
「遊んでねぇで行くぞ」
ごま塩頭にどつかれテルルが前のめり。
「荒っぽいなぁ」
「良いだろ?」
「どうだろ?」
プリカもおいらと目を見合わせ疑問系な表情。
おいら無意識回避しちゃうからな。肩を叩いたりどついたりして来るこういうノリと地味に合わない。
兄貴や仲間達は余りやらなかったな。そういえば。
……加減失敗するとやばいからかもしれんけど。
登ってきた上下移動区画を降り甲板へ出る。
「ぐるぐる艦内廻る、環状の左右移動区画もあるけどよ、急ぎの用でもないからな」
「あれ、楽だけど、だべって移動出来ないしな」
なんやかんやと話ながら甲板は久しぶりに出るが、やはりでかい。校庭ぐらいの奥行きが延々艦首方向まで続いている。
「工廠、向こうにあるからよ。ちょと歩くぜ」
結構な向こうの方に黒鉄と樹枠で出来た壁がある。淡い輝きがあるから一応障壁で区切られてるようだ。壁に乱雑な感じで頑丈な小屋のようなものがあちこちに見えるのが竜の船内では異質。
竜の船内は樹をくり抜いたような感じの部屋が多く、人工的な感じが余りないんだよな。
甲板上では飛竜達がのんびり寝ており、蠢く噴水というような仕掛けで水浴びしてたりしている。竜騎士達が細かく魔法や器機を使って更に飛竜達を洗っている。
魔女達は箒で鬼ごっこ的な遊びや、天井からぶら下がる樹々の枝の間をすり抜ける競争のような遊びもしていたりする。
「甲板というよりは公園の方が正解な感じもなくはない」
「海の船になぞらえて船や甲板と呼んでるだけとは良く言われてるけどよ」
感想は別の世界の人間も同じなんだなと、ごま塩頭が大笑いする。
「作業でも使うじゃん」
「使ってますよね」
と、テルルが顎で、プリカが指で小さく示す方向に示破壊された敵艦の破片が山積みになっている。
大きいものは大型トラックくらいの大きさ。
沢山の大小様々な大きさの長方形の箱状に展開された障壁魔法の中に大きな破片やその他色々詰め込まれている。
おっさんとおいらもそちらの方向を見る。
「工房で調べ切れない敵の破片溢れてんだよ。よく判らん敵だったから、とにかく集められるだけ集めてるらしいがよ」
「ちょと見てきて良いですか? 私も隔離だったので調べるのに参加できなかったんです」
返事を聞く間のなくプリカがわくわく顔でおいら達を見ると走り出した。
あっと言う間に、校庭の向こう側くらいの距離を走り抜くと興味深そうに観察している。魔法使ったのか物凄い速度だ。
観察はじめたプリカはすぐに夢中になり、作業をしている工房の服っぽい黄土色のぶかぶかの服を着た人は少し迷惑顔。
優等生っぽい素行のプリカが餌に喰らい付くサバの如く動くのは
ある意味新鮮だ。
……プリカは学者肌だなぁと実感したおいらだった。
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