魔道星戦-星間戦争にパシリ三下が召喚されて勇者とか呼ばれてもマジ困るんよ。でも超強美少女に可愛い魔女、小悪魔性格の竜に囲まれちょい嬉しい
26話 手合わせ中に歴史の講義とブチ切れファナ艦長。ひぃぃぃ! 魔王ってもしかして……
26話 手合わせ中に歴史の講義とブチ切れファナ艦長。ひぃぃぃ! 魔王ってもしかして……
『さて、少し講義をしますねー』
念話でファナ艦長が話しかけてくる
「講義って……では、手合わせ止めましょうっす」
おいらの提案にファナ艦長はにこやかに笑うが、戦いの構えを解かない。
手合わせは止める気はないようだ。ゆらりと立っているが隙はない。
おいらの軍服の念話機能はカーナとプリカとも繋げられているので彼女達にも会話は聞こえてるはずだが……
カーナもプリカも興味深げに聞き耳を立ててるようだ。
ちなみにおいらはまだ念話機能は上手く扱えないんだよなぁ。練習しとけばよかった。
胸の高さに上げたファナ艦長の一指し指から青白い炎の刃が燃え立つ。
周りでりで観客化している陸戦隊から驚きの声が聞こえて来る。
まじかよ、連中が驚くような魔法なんか。
『遥か三万五千年前、人は竜に滅ぼされる寸前でした』
すらりとした立ち姿からの、遠距離からの炎を纏った抜き手。
炎の刃が如意棒の如く伸び、おいらを貫くべくおいらの体に伸びる。が、おいらはそれを回避。
続く横なぎの攻撃も回避。陸戦隊から驚きの声。
うん。おいらも自分が凄いと思う。なんかこちらへ来てから体が軽い。
『人が大陸全土に広がり、竜の生息域にまで進出。不老長寿の妙薬として竜の体を求めたのですー』
ファナ艦長の両手を広げると両の指先から炎の刃をだす。
それがうねるように蠢き始める。
両の手を素早く動かすと、今度は鞭のようにしなり、おいらを襲う。
手合わせの最中に講義はじめんでもと思いつつ、嵐のような攻撃をおいらは前後左右に避ける。
『竜が負けることは万が一くらいのことでしかなく、竜達も直接戦いに来るならばさほど気にも止めてませんでした……』
『人は聡く、狡猾でもあります』
『直接対決を避け、竜の巣から卵を盗み出す人が出て来たのですー』
ファナ艦長の全ての攻撃を避け切ったおいらに陸戦隊の連中は驚きの声。
カーナも見直したような感じの表情だ。この組み手、おいらがカーナ部下になる為の売り込みに使えるかも。
ファナ艦長は一旦攻撃を止め、何かに祈るような姿勢。
身の廻りには障壁だろう淡い輝きが展開されている。
『盗み出した者はとてつもない富を得たと聞きます。その噂は大陸を駆け巡りー、竜の卵を狙う者が続出したのです』
『当時の竜は数十年に一度くらいしか卵を産みません』
呪文らしきものを詠唱しながら念話での講義はやめない。二重思考してるのか。凄いぜ。この人。
しかし、この状況、どうやってこの手合わせ終わるんだ。艦長に問うのもあれなので、呪文詠唱の隙にカーナの方に目線で問うてみるが、頑張れと言いたげな笑い。
プリカは手を胸の辺りで握って応援の体勢。小声で応援してくれてる感。
二人とも念話は出来るはずだけど、手合わせの最中なので遠慮してるようだ。
遠慮しなくてもよいのよ。助言欲しい。
この指が刃だったら終わりですよの、必殺つんつん攻撃決めれば終わりにしてくれるかなぁ。
多分それで終わるかな。
しかし、手合わせの最中にいきなりの歴史の講義とおいらにどんな関係があるんだろう。
手合わせっても、もっと軽いもんだと思ってたんだけどなぁ。喰らったら大怪我確定、痛いの確定。
回復魔法があるから問題ないという脳筋事態は想定してなかった。痛いの嫌なんよ。
とりあえず、艦長につんつんするという目標ができたので、おいらは艦長の廻りをするすると廻る。
狙うとすれば攻撃する直前の隙に突っ込む感じかなぁ。
罵詈雑言で隙つくるのは、お偉いさん相手には無理だよね。
喧嘩ではおいらの得意技でもあったんだけども。
ファナ艦長の詠唱が終わった。
『盗まれた卵を取り返しに行こうにもどこへ行けば良いやら、巣の周りの人の街や村を焼き尽くすしかありませんでした』
『多くの国や街が滅ぼされ、人はそれを竜災と呼び、反撃に出ます。まぁ逆切れですね』
両手を広げるファナ艦長。
『本格的に各国が国を挙げて大陸中の竜と闘争に入ったのです。ですが当然大人の竜には正攻法では太刀打できない事を人は思い知ります。ならば、成長する前に屠ればよいと卵を狙ったのです』
ファナ艦長の目がおいらを捕らえる。なんか目印でも付けられたような魔力の流れを感じる。
『竜達は激怒しました』
『ほぼ全ての竜が人の国を、村を襲い炎で焼き尽くしました。それはもう徹底的に』
ファナ艦長が広げた両手を掴むような動きをすると、腕に炎が巻くように出現。
手を振ると極太の炎柱が六つほど艦長の廻りに立ち上がる。
炎に赤く染められたファナ艦長の姿が美しい。蠢きまるで生きているような炎の柱。
「魔具無しで、精霊召還!」
陸戦隊の中に居たテルルの大声が聞こえて来た。なんか凄いことっぽい。
『地下や森へ逃げ延びた人は国を村を滅ぼされた怨嗟の念で執拗に竜の卵を狙い、竜達の更なる激怒を誘い、逃げる人を焼き尽くさんとする竜達により、森や大地は炎に呑まれ、荒れ果てました』
ファナ艦長の指が優雅においらを指すと、おいらにすべるように六体の炎の柱が襲い掛かかってくる。
少し遠い間合いでも物凄い熱を感じるおいら。死の危険さえも感じる。
「容赦なしかよ!」
半分涙目で回復魔法がある軍隊の訓練とかこうなるのかーと真っ白になりつつ、おいらはファナ艦長から離れ逃げ出すように走る。あんなでかい炎の柱とか小手先では回避しきれねー。
ファナ艦長は指揮者の如く腕を振り、炎の柱を操る。おいらは全力疾走で回避に専念。
『我らが母星、『楽園』の大地全てにおわす大樹神は荒れ果てる大地と飢える生き物達を憂い人に召還の魔方陣を授けました』
『特異点とも勇者とも言われる召還者。流れを変える者。それを召還する魔方陣と言い授けたといわれています』
『地下に落ち延び数世代。竜への憎しみしかない人間達』
『召喚された勇者は、竜との融和を提案します。当時の人からは全くもって考えられない思考。相当苦しい目にあったと伝承にあります』
「おいらに、記憶水晶を使わせない理由がそれなんか。異世界の価値観の温存っ」
逃げながら叫ぶおいらにファナ艦長は満足の笑み。
ついでに指揮者の如く指を、腕を振り炎の柱を操作。
おいらは逃げる、逃げる。つんつん攻撃なんか無理無理ぃ……だがさすがに疲れて来た……な。
『が、勇者は次第に仲間を増やし、その協力を得て遥か遠く、険峻な山脈にある竜の巣へ地下から到達することに成功します』
物凄い速度で迫る六本の炎柱を避けきれず、おいらはそのうちの一本に飲まれる。
「うあっちい!」
燃え盛る炎の中で、軽く拘束された感もあるが、即開放。軍服の自動防護機能が無かったら丸焼きじゃね。
多分これ勝負あったよな。
だがファナ艦長は指を口に当て、頭をかしげる。
『古代の召還者は竜の吐息さえも耐える、炎への耐性があったらしいと聞きました……けどー』
「へ、へぇーそりゃ凄い」
『ええ、凄いことですー』
炎の柱に追い回さ、取り込まれて少し燃やされて膝を付きそうなおいらを見て更に言葉をつむぐ。
『百日の間、眠りもせず動き続けられる強靭な持久力……も無いようですね……』
「無いわ、んなもん!」
どうやら手合わせの終わりらしい感も出て来た……か。
と、視界の中、広場を囲むようにある上階の通路かに、おっさん士官、ジンブルム艦長だっけ……が目に入る。
部下になにかしら指示しながらも、己は何もせず踏ん反り返って立っている。
「指揮官はいいね、兵隊の後ろで椅子に座ってるだけの楽な商売だ」
おいらは荒い息をつきながらジンブルムを横目で見ると独り言。
だが、少し大きめの独り言になってしまった。
『あ、それ駄目!』
沈黙を保っていたカーナの念話がおいらに来る。
何が駄目なん? と思い廻りを見ると
ファナ艦長が固まり、おいらを冷たーい目で見ている。それはもう極寒の……
先ほどのジンブルム艦長に向けた独り言が聞こえたのか!
この状況だとファナ艦長が自分のこと言われたと思う状況だよね!……これ。
おいらは体が脚が震える。回復魔法必要な事態になる……のか!
『確かにー。指揮官はー、戦闘中椅子に座ってるだけの商売ですー』
声が完全に平板になっている。これ理知的な人が激怒してる場合の定番じゃん。
今回の戦闘で複数名の死者が出ている。驚くべき少なさではあるが、死は死だ。
ファナ艦長は指揮してたし、その責を感じているのだろう。
たらればで言うならば、最初から警告無しの
まぁ無理だろうけど。
艦隊はともかく亜光速弾は樹の巨竜の
ゆらりと立つファナ艦長。こ、怖い、
おいらは震える手でジンブルム艦長がいる方向を指差す。
「じ、じんびゅるむに」
し、しまった! 噛んだ。
時遅く、怒りのファナ艦長は両手を挙げ莫大な魔力の放出を始める。
観戦してた甲冑兵達のざわつきが聞こえる。そりゃそうだよねコリャ凄い。
「魔、魔王ってこんな感じなんかなー」
震える声で独白するおいら。闘気というか魔力が体から溢れ、暴風の如しである。
『猿君はまだ本気出してないよねー。甲冑兵と喧嘩になった時、その時の魔力放出は結構なものだったと報告がありましたー』
『本気で来なさい!』
ファナ艦長が念話で叫ぶ。
土下座!、いや、そんな事したら攻撃もろに喰らって大怪我確定!
『私も本気を出すっ!』
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