23話 食事会。出て来たお肉は口の中で動くよ!動くよ!
「さぁ食べましょうかー」
部屋の中央にある小さめのテーブルの椅子は二つなのでおいら達は立食。
ファナ艦長と、
立食を希望。座ってるのは
カーナ達は額に二本指を当て、軽く何かに祈ると食べ始めた。
おいらも食うか……まずはこの二本の軍食を食べねばな。
「では頂きます」
異邦人がこの世界の食事をとるのはやはり関心を集めるらしく、カーナやプリカもおいらが食べるのを注視する。ちと食べづらいぜ。
「お、なかなか」
緑の軍食は結構旨かった……がさすがに量が多い。
「後で食べるのもありだけどー。こういうのもあるよー」
ファナ艦長が綺麗な指先をおいらに向けると魔力を放つ。
食えと促す艦長においらは軍食を食う。
「うおっ。これはスパイシーな味に」
プリカは驚きの表情。体に描き込んだ魔方陣なしの味覚変化はカーナもプリカも出来なかったから、その技量の高さは桁違いなんだろうか。
横に座る
そういえばおいら、いつの間にか魔力の動きもわかるようになってんだよな。
「ぎぃあっ」
おいらの口の中の軍食が激辛化する。
笑う竜。
「いたずらは駄目よー。
「ぎゃふっ」
ファナ艦長が魔力を放ち、
「面白そうだな、私も混ぜてくれ」
カーナも参戦しておいらに魔法掛けてるみたいだが、不発。
プリカはあわあわしている。
「はいー、お遊びは終わりー」
艦長が仕切る仕切る。
「なんかみんなの母親のようっすね」
「はは、そうかも」
同意したカーナはファナ艦長に軽く電撃を受けてのけぞる。
ちなみに、プリカも
なんとか軍食二本食い終わると取り分けられた料理にとりかかる。
二等辺三角形みたいな形のフォークとナイフ、その他食事に使うためのものらしい代物がおいらの前に置いてある。 マナーとか全然知らんけど、まぁ適当に使えば間違ったら教えて貰えるだろう。
「旨そうだなぁ」
小さな目玉のついた薩摩芋のような焼いた肉の塊に、赤、青、黄色の野菜を何かで巻いたもの。パンのようなものにスープだ。
カーナが片目を瞑り、自分の皿から薩摩芋のような肉を妙な形のフォークで突き刺すと齧り取る。
プリカは野菜を巻いた何かを両手で持って可愛らしく食べ、ファナ艦長は上品にスープをスプーンらしき代物で上品に飲んでいる。
「食べる順番とかはないんすね?」
「無いなぁ、猿の居たところではあるのか?」
「無いっすね」
カーナが何故聞いたみたいな顔をするが、こういう中世っぽい世界で規則煩そうで……まぁどちらかといえば規則やしきたりにゆるゆるな感じもするけど、用心はしとくべきやん。
そういえば、カーナ、プリカもここ数日でおいらの事を、『お前』呼びから『猿』や『猿さん』呼びに変化した。仲間に呼ばれてた名前でここでも呼ばれるのはなんか嬉しい。
「しかしこれは……」
小さな目玉が沢山ついた肉をおいらはフォークでつんつんする。
立食ながらも、すらりと立ち、上品にスープを飲んでいたファナ艦長の手が一瞬止まる……あ、なんか怖い!
ファナ艦長の方を軽く見て、固まって、つつくのを止めたおいらをカーナが笑いながら見ている。
プリカがフォークを取って肉をつつく動作をして小さく×を繰り返して、礼儀違反を教えてくれる。フォークで食材つんつんは礼儀が良くないらしい。
……
礼儀は竜は別枠なのね。おいらの視線に
いや、別に肉くれって訳じゃないっすよ。
「この肉は好き嫌いが結構ある食材だけど、私は好物なんだ。だから持ってきた」
「カーナの好物……」
そう言われたら美味いと思う意外は許されない。おいらの三下魂が唸る。
良く見ると、プリカとファナ艦長の小皿の上にはこれは取り分けられていない!
わくわく顔のカーナに注目され、おいらは目玉付きの肉を食う。
……ぬめっとした食感に目玉の潰れるプチプチとした食感。あ、口の中で肉が動いた。少し酸味もある……食べたことの無い味と食感だが意外と食える!
少し涙目になりながらもおいらは肉を完食。
カーナは大喜び、プリカとファナ艦長は小さく手を叩きおいらを称えてくれる。
「これは、クーラと呼ばれる粘性生物を生きたまま、発酵させたものなんだ」
カーナの説明を聞き、まじかよと思いつつ、
「微妙に行ける。美味しいっす!」
「だろ、美味いだろ!」
大喜びのカーナ。
「本当かなー」
「クーラ肉は翡翠の人達以外は厳しいと思ってました」
ちょと疑問気味のファナ艦長とプリカ。
慣れれば美味いと感じるようになるかもしれない! そんな味だった。胃の中で肉がちょと動いてるけど!
翻訳魔法を切ってる状態なので、おいらの感じた微妙感は伝わらなかったようで、カーナは満足そうに笑う。
「船内で養殖されてるのを、今朝締めた新鮮な奴だからな」
「味は美味しいんですよ。粘性生物を世代重ねて、ゴボラ牛のような味にしたものなんです。軍食にも結構入ってますよ……ただ生の踊り喰いは割りと躊躇する人多いです」
ちなみに
「……本体の方は何食ってるんだろう?」
おいらが
「『神力』と太陽光、あとは重力とか。神力は翡翠さまが乗艦しておられるから食べ放題だな」
「
「食い溜めできますからね。竜が羨ましいですー」
おいらは驚く。まぁ発動機積んでる訳ないもんな。が、聞きなれない言葉が。
「太陽光と重力はわかるけど、神力とはなんぞ」
カーナは説明してなかったっけな表情でおいらに説明する。プリカはあ、忘れてたな表情。
「神力は『神格』の翡翠さまから漏れ出る力…かな。昔は魔力とも呼ばれてたらしいぞ。あとで翻訳魔法で詳しく話そうか」
「あ、それは助かるっす」
翻訳魔法は危険性もあるので、ある程度の意思疎通が可能な今は使用は控えてるけど、理解がほぼ完璧になるのでありがたい。
「あ、それは禁止でー。許可するのは念話までかな」
まさかのファナ艦長の制止。
「今でも使いすぎだからねー。万が一召還者が現れた場合、価値観が我々と完全に一緒になるのは避けるべきという、大昔に決められた答申があるの」
「へぇ、じゃあ仕方ないっすね」
「価値観の同一化を避けるためですかね……確かに必要かも」
カーナの言葉を聴きつつ、プリカもファナ艦長の言葉を聴いて、その意味の思索に耽っている。
「硬い話は後でー。今は食べなさい」
ファナ艦長の仕切りにおいらは従う。
野菜巻きにスープ、どちらも美味かった。異国での食事が合わないと大変らしいがそこは助かった。
それから雑談しながら食事。
飯は旨かったが、米が欲しい。まじで!
「さて、食事も済みましたし、軽く運動でもしましょうか」
ファナ艦長は体をほぐすように動かしている。
いきなりな提案においらは驚く。
カーナが艦長に問う。プリカも。
「「隔離は?」」
「検査結果でも問題なしです。大昔に召還されたという存在も普通にこちらで生活してたという話ですしね。これはジンブルムも了承済みですー」
ジンブルムって誰だっけと思いプリカを見る。
「検査で立ち会った士官の方ですよ」
「ジンブルムっ……あのおっさん軍人か」
「あいつは固いからちゃんと、ジンブルム『艦長』と呼ぶんだぞ」
「
彼女は
戦場に居たなぁ濃い目の緑色に赤色の線の入った、尻尾と首が細長く全体的に幼い感じの竜。おっさんの首に尻尾巻きつけて乗っていたのはその分体って所か。
巻きつけようとする尻尾と格闘するおいら。
しかし、カーナの言葉の不足分を的確に解説してくれるプリカは優秀だなやっぱ。
にしても、あのおっさん、割りとお偉いさんだったらしい。偉そうなんで想定内ではあるんだけども。
「あの子もおっさん呼ばわりされる歳なんですねぇー」
あの子って、ファナ艦長一体何歳なんだよ。
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