21話 隔離ついでに使い魔達と楽しく食事……あとは勉強だってよ。マジかー


 密林部屋の中央に集まり小動物達が飯を楽しそうに飯を食い、ぴいぴい、きーきーと語りあっている。


 それをれんが壁を背に座り込み、手に持った干し肉のようなものを食みながら和むように見ている。


 分体だそうだが、子供サイズの竜のぬいぐるみのような感じで本体より丸っこい。脚を投げ出し座る姿はまさに子供のようだ。


 しかし分体って何やねん。


 食事は部屋の中にも結構隠してあったらしく、あきらかにれんの持って来たもの以外も食べている。使い魔達は酒もないのに楽しそうだ。


 使い魔達のノリを見るに知能は四歳くらいなんかなぁな感じなんかなぁ。


 ちょこちょことリスのような使い魔がプリカの元に走って来て、木の実を渡す。可愛い。


『感謝』


 プリカは受け取るために膝を付いて座り込むと、木の実を手のひらに載せたままおいらを見上げる。


 食べてよいんじゃねとの動きをおいらがしたが、どうやら待つことに決めたようだ。


 まぁ数個の木の実では腹の足しにもならないよな。


 リス使い魔はカーナにはおっかなびっくりな感じで渡してる。

 闘気は今出してないけどやっぱなんか強者の匂いみたいなもんがあるんだろう。びびってる。


 カーナは通信してるのか耳に手を当て誰かと話しているようだが、使い魔に礼を言い、空いてる片手で撫でている。顔がにやけている。可愛いんだろう。


 撫でられてる使い魔はガチガチになって固まっている。肉食獣に舐められてる感じなのだろうなー。


 おいらの所にも、イタチと猫の中間の感じの姿をした小動物がやって来て木の実を渡してくる。


「おいらにもくれるのか。ありがとさん」


 言葉は通じないが礼を言うと使い魔は嬉しそうに鳴く。

 おいらも片膝をついて床に座るうけとり、齧ろうとするとカーナに止められた。


『食べる食事』『決まってる』『医者』『指示』


 まじかよ。と思い木の実をプリカに渡す。使い魔が悲しそうな感じなのが罪悪感。


『食事』『来たな』


 カーナが言うと立ち上がり、部屋の外へ出ると、白い羊羹のようなものを三つと水筒らしきもの三つが乗ったトレイを持ち帰り床に置くと、それらをおいらとプリカに渡す。


 おいらには更に焼いた菓子みたいなのが一つ。昔の映画で食事はチューブ入りってのがあったがアレの魔法世界版かよ。


 怪訝な顔で白い羊羹を見るおいらにプリカが言う。


『美味しいよ』


 プリカは少し舌を出し指先を舌に向け魔法を使った……のかな。

 そしてそのままがぶりと食べ始めた。空腹に染み渡るのか美味しいーみたいな動作と顔になっている。


「そっかー、旨いのか、ではいただきます」


 おいらもかぶりつく……おっおう。なんかこう微妙な味が口の中を満たす。

 栄養はありそうだけども……


 カーナは済まなそうな顔で


『君には不味い』『謝罪する』


 れんはこちらを指差して笑っている。高位種族らしいが、いちいち小娘っぽい。


 プリカが不思議そうな顔の後、何かに気がついたのか、


『舌』『出す』


 おいらが素直に出すと先ほど自分にしたように魔法を掛けてるようだ。


『食べる』


 魔法で味変わるんかなと期待して、思いっきり齧ってみた……


 おっおう。微妙なのはかわらんな。


 おいらの視線での訴えにプリカは怪訝な表情。


 カーナがプリカとおいらに理由を説明する。検査はプリカ見てないんだなそういえば。


『彼は魔方陣』『無い』


 えっという表情でプリカがおいらに舌をもう一度出すように仕草をする。

 おいらが舌を出すと覗き込んでくる。近い近い。あ、胸の谷間が微妙に見え……


 プリカが真っ赤になると胸元を隠しおいらから離れる。カーナは苦笑い。れんは大笑いだ。竜も普通に笑うんだな。


 胸元を隠しつつプリカが


『舌に魔方陣』『無い』


 結構な驚きの感情とともに言ってくる。


「舌に魔方陣ってどういうこと」


『こういう事』


 カーナがそう言うとおいらに近づき舌を出す。プリカもなんか気づいたらしく、近づくと舌を出す。

 おおう、いい匂い……じゃなくて! 


 二人の舌を見ると、魔方陣らしきものが幾つも描かれているのが薄っすら見える。


 気づいたおいらを確認したカーナ。


 カーナが集中すると説明と翻訳が来る。今回はかなり細かい映像付きだ。


『君』『魔方陣』『一切無い』


「いや、あるわけ無いじゃんよ」


『我々』『基本ある』


 脳内に流れてくる映像には、脳や皮膚の下や骨、果ては細胞内にまである魔方陣の数々がある。

 これで身体能力の底上げをしてるらしい。常用されてるものから、魔力流して起動するものまで様々だ。


 星の海に乗り出した魔法世界の技術凄ぇな。あり得ない場所にまで魔方陣描き込まれてやがる。


「よく判らんけど、凄いのはわかる」


 プリカは当たり前のことを凄いと言われて怪訝な表情だが、カーナは頷くと自分の舌に指先を向け魔力を流してると思われる動き。


『軍食』『魔法』『味付けする』


 おいらの白い羊羹のような軍食を指差し。


『味付け無し』『不味い』


『通常の飯』『拒否反応』『可能性』


 そしてトレイの上の焼き菓子のようなものをおいらに渡す。


 あ、大体理解した。


「食事によっては大事になりかねないから、栄養素が確定されてる軍食与えつつ。食べるもの増やす感じなんか」


 大体の意味は伝わったらしく、カーナが頷き、プリカは納得の表情。

 れんは旨そうに果物を食い、おいらに見せ付ける。あの竜、まさに小娘である。


 と、れんが窓から外を見る。窓を超え、居住区画を守る薄ぼんやり輝く障壁の向こう、宇宙のの中に巨大な円盤状の構造物の残骸が見える。

中央が大きく抉れ、周りを残骸が漂っている。


 カーナが呟く。


『スーナ』『生存者』『二十八名だけ』


 スーナと言う花の名の基幹軌道上施設らしい。流れて来る映像の欠片から見るに小さな街の如くな場所で艦隊が使っていた母港だったようだ。何万人も暮らしてたようだ。

 公園から眺める翡翠の姿がカーナのお気に入りだったようだ。


 樹と鉄骨で作られた乱雑な感じの巨大構築物。戦闘時に同時に攻撃されたらしく今はもう見る影もない。


 プリカが呟く。


『スーナ』


 お気に入りだった食事所も今は無い。優しかったおばちゃんも塵と化した。


使い魔達は理解出来るほどの知性は無いらしいが、祈るおいら達を見ておとなしくなっている。


 カーナとプリカは額に拳を当てると祈るように目を瞑る。おいらも哀悼の意を捧げ真似をして同じく目を瞑り冥福を祈る。この世界で、死んだ魂が何処に行くかは知らんけど、天国みたいなものはあるだろう。


 ……兄貴のことを思い出し掛けたが気合で捻じ伏せる。


 おいらは祈りが終わるまで待ち、


「にしてもこれほどの攻撃仕掛けて来た奴ら何者なんだ?」


 と問うてみた。


 カーナが首を振り


『謎』『調べてる』『そのうち判る』


 れんも破壊された軌道上施設を怒りの表情で見ている……が、その視線には憂いも感じる何故だろうか。


 外を良くみると魔女達が敵のものらしき残骸を持ち帰ってるのが見えた。

 銀色で共通規格っぽい甲板の造りが、手作りが基本のような魔法文明とは明らかに違う。



 湿っぽい雰囲気をカーナが手を叩き、哀悼の時間は終了と告げる。


 大声を上げ、



『隔離、暇、時間、学習!』


 カーナは本棚から鼻歌歌いながら、本を幾つも抜き出し山のように机に積み上げている。それはもうこんもりと。カーナさん切り替え早いのね。


 仁王立ちになったカーナが音を立て本を叩く。


 おいらは、びくんと動くのを止めて本の山を見る。

 もしかして隔離十日間、勉強すんのか……まじかよ。


 おいらは揉み手でカーナに聞く。


「学習水晶とかないですかね」


 カーナが首を振り残念そうに言う。


『意識深部』『我々の文化刷り込み』『可能性』『避ける』


学習水晶はあるけど、おいらは不可らしい。きつい十日間になりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る