8話 惑星壊滅!……荒れ狂う地殻津波!

 反応は数刻後に来た。


 竜の巨大な体がびくんと震えたように見える。岩塊の大きさの竜の頭がゆっくりとこちらを向く。


 はぁ? という感じに口を開けた竜。竜でもあんな顔出来るのだなと妙な所で関心するおいら。


 あれがあーなってこうなる感じに想像を激しくすると、竜は目を見開き電撃の来る予兆のちいさな青白い光が見えた。


『ざぁーこ、ざぁーこ、何考えてんの』


 みたいな電撃の連打がおいらを襲う。先ほどより痺れる絶妙の手加減と連打。

 膝上の女の子は巻き込まれることも無く、小さな電撃を頭の左右に打たれ左右に頭を揺らすおいらを不思議そうに見上げている。



 これが人と暮らす竜の手加減の妙かと感動は置いといて、おいらは

『危険!危険!遠く!遠く!』と念じながら、あの巨艦と更に向こうの物凄く嫌な

 感じのものを見て、感じ、脳内にその映像を強く浮かべる


 兎竜の感じからみるに、この警告程度の意味は送れるはず。


 電撃の連打が最後の一発は強烈だった。おいらを意識を覗いて驚いて操作を誤ったっぽい。


『ごめん』という感じの謝意の意識を竜から感じる。


 竜が首を動かし、おいらの見てる方向を見る。


 勝利の喧騒に溢れる通信に竜の吼え声が入り、急に皆が静まる。

 通信に指揮官の者らしい慌てた声が錯綜し、カーナの一喝が聞こえてくる。


 のんびりした声の人がきびきびした台詞で何かを指示し、

 その後、厳しい声のカーナの指示のもと魔女隊や飛竜は竜の前方から退避している。


 通信から重々しい声が聞こえて来た。

 通信内の色々な声が消えその声だけが響いてくる

 かなり上の指揮官か政治家か何かかそんな感じだ。演説っぽい感じで話が終わらない


 膝の上の女の子が息を飲んで手で口を覆い眼下の惑星を見る。


 辺りを飛ぶ魔女達や飛竜の搭乗者達も眼下に広がる惑星の一点を見つめている。


 おいらもその方向をみる。見て絶句した。


「え!?」


 大陸の沿岸部、緑の植物に溢れた円状の豊かそうな大地の中央の山脈から何かが首をもたげるように動いている。いや……山脈ごと何かが立ち上がってる感じだ。


 兎竜の優れた感覚に頼らずともそれは確認できた。


 軌道上から惑星上で動くものが確認できるとか。巨大にも程がある。

 緑の大地の外郭に見える都市状のものと互角の大きさだ。

 流れる雲を掻き分けそれは立ち上がっていく。


 惑星の大気の中緩やかにそれは鎌首をもたげる。

 緩やかに見えても物凄い速度で動いているはずだが、その大質量が重力に負けることなく星空へ立ち上がっていく。


 おいらは目をこらすとその威容が見えてきた。流れ込む兎竜の感覚が有り難い。


「山脈なんかじゃねぇ、ありゃあ竜だ!」


 雲を纏う山脈は樹々を乗せ雪を被りながらも、それは間違いなく鱗を纏う竜の体

 だが体の色合いや感じが竜というか樹に近い雰囲気だ。


 鱗だが樹木のようにも見えるそれからは樹の枝や蔓の森が見え、繁茂し体全体を

 覆っている。


「まるで竜の形の大森林が起き上がっているみたいだ」


 そのとてつもなく大きな翼の先端は大地と繋がり離れないのか、雲の上に姿を現す事はなく丘陵の如くゆるやかな坂を描いている。


 曲がった人智を超えた巨大さの樹の如く見える首は、土や自らに生えた樹を遥か下の大地に振り落としつつゆっくりと天を向いた。


 巨大な体と斜め上にそそり立つ尖塔のようなその首は軌道上からも見え、

 立ち上がりで掻き回された大気のせいで雲が渦を巻きながら大樹のような巨竜を包んいる。


数分間、眼下の光景に意識を取られていたが物凄い速度で近づいてくるあれは嫌な感じは更に膨れ上っている。


「! 速すぎるんじゃねぇか、あれ」


 違う惑星の軌道上にあったそれは、遥か遠方に居た敵巨大艦を超え、すぐそばに迫っている。そしてその先には……眼下に浮かぶ惑星があった。


 大樹の巨竜の廻りに雷雲が立ち込め、更に巨大な雷が多数、竜の口元へ流れるように集まっていく。

 大樹の巨竜の口が開き、青白い雷炎がその口元に集まり巨大な雷の玉と化し惑星上の大地を明るく照らし始める


 兎竜の感覚から判るのかおいらにはそれが半端ないエネルギーの塊だと理解できる。


 通信に息を飲むような呟きが溢れる。この世界の住人にとっても驚愕の事態らしい。 膝上の女の子の体が強張り震えてさえ居る。


 物凄い速度で近づく何かの、禍々しい感じがどんどん増大していく。

そしてそれの到達する場所はこの惑星と思える。

おいらの背を冷たい汗がしたたり落ちる。


 惑星間を数分で移動とか光の速度なければ無理なはず。そしてその質量は途轍もないエネルギー量になると何かで見た記憶が蘇る。


 極限まで光速に近い速度へ加速し、洒落にならない運動エネルギー量と超質量と化した小惑星は墜とす事も進路を逸らすことも不可能。

 光速近くまで加速した小惑星は単純ながらも究極の物理兵器と紹介されていた


「亜光速弾……まじかよ」


 敵の艦隊の攻撃もその直前の噴射炎もこいつの接近を隠すためのものだったのか

 とおいらは気づく。


 それは光に限りなく近い速度で惑星に近づく。

 質量が目視できるならば、それは巨大な惑星のような大きさに見えただろう。


 それが一直線に眼下の惑星に向かって流れて行く……


 おいらや気づいた飛竜搭乗者や魔女達は絶望の視線でそれを見る。


 眼下の惑星雲海の上に聳え立つ大樹の巨竜はそれを墜す気のようだ。

 地上に降りた恒星のごとく、口元に青白く輝く雷炎を更に増大させる。


「あれならば墜せるかもしれねぇ」


 縋るように見つめるおいら達の視界の中、大樹の巨竜が野太い咆哮とともに、その巨大な顎から凄まじい電炎を放った!


 超巨大な雷柱のごとく、雷を伴いながら超絶の雷炎が星の海に放たれる。


 巨竜の姿が青白い光に強く照らされ、影の部分が闇の如く暗く見え、衝撃波に

 纏っていた雲が巨竜から円状に捲くれるように離れていく。


 おいらの周りに居る竜や飛竜、魔女達も閃光に包まれ白と黒だけに染まる。


「がっ!」


 おいらの視野が一瞬で白に染まり、瞬時に障壁が黒くなりそれを遮光する。

 それでさえ漏れでて来る白い光。


 少し遅れて来た衝撃波に兎竜が木の葉のように揺れ、警告音なのか怪鳥の叫びが座席内に響く。


「やったか!」


 極太の雷炎の柱が亜光速で飛翔する小惑星に激突するのを感じる。

 亜光速で莫大な質量と化した小惑星はその衝撃にも速度を減することはない。


 駄目だ、あの雷炎が全てを溶かし破壊する前に衝突する!。


 遮光が消える。


 おいらの目に飛び込んで来たのは惑星に激突する小惑星の姿だった。

 超質量は大樹の巨竜を一瞬で砕き惑星に到達。


 衝撃に雲は惑星の半分を超えて円状に押し広げられ、粉砕された大地の一部は大気圏を越え宇宙へ飛び散っていくのがみえる。


 大地は超巨大な質量エネルギーにより一瞬で溶岩の海と化し、衝撃波が地殻を揺らし、持ち上げ大地が、大陸を構成する大地が同心円状に波打って行く。


「……地殻津波」


 昔、科学想定映像って奴で見たことがある。

 凄まじい衝撃で持ち上がった大地が津波のように盛り上がり起こるというやつだ。


 おいらは絶句する、あの大陸、いや惑星にあった構造物で無事なものは一切無いだろう。おそらく生物でさえも……


 兎竜が先ほど樹のような巨竜の竜撃ドラゴンブレスの時よりも遥かに強い衝撃波にふっ飛ばされ、揉みくちゃに揺れる。小惑星が落ちた衝撃波が来たのだ。


 兎竜は惑星を砕くほどの威力に翻弄され、沢山の数の怪鳥の警告音がけたたましく鳴り響く。


 女の子が悲鳴を上げ強く抱きついて来るが役得と喜ぶことよりも死を意識してしまう。

 そんな感じのふっとばし衝撃波だ。


 吹っ飛ばされながらも惑星を見ると大樹の巨竜が居た場所は廻りの緑の大地を含め、大陸の半分以上を吹き飛ばされ、衝撃の莫大なエネルギーで溶けた溶岩が見える。


 大樹の巨竜が居た辺りは文字通り赤く赤熱する溶岩の海だ。


 科学映像の想定が当たっているならあの付近の地上は数万度の温度となり、一瞬で溶けた大地は岩石蒸気となり惑星の大気を文字通りの獄炎で焼き尽していく。


 文字通りの地獄と化した地上には生存出来る生物は存在しないだろう……



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