6話 大乱戦……と箒に乗った可憐な魔女プリカとの出会い。可愛いって思ったのは秘密だ。


 正面相対した両軍はお互いに突入し乱戦に入る。


「数では圧倒的に劣るが個体戦闘力は多分こちらが上だなぁ」


 敵味方入り乱れた乱戦の中カーナだろう大きめの飛竜は圧倒的な火力と速度で敵の中を縦横無尽に駆け巡り、破壊を撒き散らしおいらの目を引く。乱戦の中、仲間が後ろへ付かれるとすばやく援護に廻りそれを落とすのも凄い。


「目が幾つもついてるが如しだなっと」


 おいらも後方から来た敵小型艦の攻撃を回避し、くっそキツイGを耐え旋回して後方へ廻り込みそれを兎竜の雷撃で粉砕する。結構なれてきた。


 兎竜と繋がっているためか、敵味方の位置も脳内で感覚的に把握されるので乱戦でも混乱することもない。


 通信からは軽快な気合の声があちこちから入り味方の優勢を感じる。


 だが敵の数が多い。闘わず一直線に防空をすり抜けた敵小型艦多数が大型の噴進弾を竜に向け切り離し発射する。

 さながら雨の如く降り注ぐ大型噴進弾を、おそらくは竜のものではない蠢く暗い何かや、赤い炎、緑色の光る何かが敵噴進弾に向け放たれ迎撃破壊する。多分防空隊が居るのだろう。


 だが噴進弾の数が多く多数着弾。大きな爆発をこれでもかと竜に纏わせる

 通信に魔女のだろう悲鳴が混じる。


「!」


 沈められた!? おいらは横目に竜を視界に収めながら息をのむが爆炎をが晴れると竜が姿を現す。傷ひとつない。おいらは竜は最強生物を確信する


 と、大きめ鋭い声の通信が入る。言葉は判らないが兎竜が急速回避行動にはいる

 魔女達や飛竜達も回避行動をしているのが遠めに見える


「何だぁ」


 回避Gに押し潰されながらも横を見ると横を精鋭っぽい逆鏃型大型艦が過ぎ去っていく。

 竜の馬鹿げた大きさほどでは無いがでかい。一キロメートル以上はあるだろう艦が

 目の下を通り過ぎて行った


 光学および電子迷彩があるのか星に溶け込んで判りづらい感じになっており、目くらましの小型艦による飽和攻撃に気をとられ迎撃していたおいら達は、砲撃もせず急速に加速突撃して来た大型艦に気づけなかったようだ。


 遠距離での砲撃が利かなかったから捨て身の接近戦を挑む気なのか

 更にいえば、あの樹で編まれたような居住区画にでもカミカゼされたら洒落にならん。おいらの顔の上を冷や汗が落ちる。


 突然現れた数十隻の銀色の逆鏃型大型艦は友軍の小型艦も空域に存在するのにも構わず竜の右側面前方から接近しつつ上下の装甲の間にある砲列から艦砲射撃のつるべ撃ちを行う。

 結構な数の敵小型艦がその巻き添えを喰らい轟沈する。魔女達は素早く回避と錬度の高さを見せ付ける。


仲間いても気にせず撃つとはマジかよ。


 数十隻大型艦の文字通りの至近弾である光学、実体弾、多種の飽和攻撃だ。

 何も知らなければ綺麗かつ勇壮な花火にも見えるだろうな。


 竜の障壁はそれらを全て弾く。障壁が衝撃であちこちで輝くが貫くことは出来ていない。


 猛烈な艦砲射撃をしながらも、逆鏃型大型艦は小型艦とは比較にならない威力の防空砲を乱射し箒の魔女達が大混乱になっている。


 通信が悲鳴で満ちる。何人かの魔女に機銃砲弾が命中し爆散。その体を宇宙に散らす。魔女帽についていた飾り羽がおいらの目に焼きつく。

 後方に居た戦闘に参加していない魔女達が高速で墜とされた場所に行き何かを拾っているようだが何かはわからない。


「洒落になんねぇーー」


 おいらは焦りの声もだすがどうにもならない。

 反転し逆鏃型大型艦を撃つが威力が足りず落とすのは無理だ。

 飛竜ならなんとかなるかもだが乱戦の中そう簡単には来られないようだ。


 おいらは箒魔女達の援護に専念するが敵も慣れて来たのか数機で魔女を攻撃し始め次第に落とされる魔女が出て来た。通信に落とされた魔女の悲鳴が木霊する。


「くそがくそがくそがぁ」


 おいらは半泣きで、魔女を狙う敵小型艦を落とし捲くる。

 通信は大混乱の魔女達の声で溢れている。


 視界に三隻の小型艦に纏わり付かれている魔女が入る。

 必死で回避運動をするものの振り切れない。


 後ろを取られ被弾し防護障壁で守られてるものの、衝撃で木の葉の如くくるくる廻りまだ意識こそ失っていないが、泣きそうな顔が見えた。

 かなりの怪我も負ったのかわき腹を押さえ苦しそうだ。


 兎竜からの感覚に近くの敵小型艦が二隻こちらに転進したのを感じる。


「落とせる奴は徹底的にってやつかよ」


 二隻も発砲、計五隻での集中砲火。


「やらせるかよ! 兎竜耐えろよ!」


 おいらは操縦桿を握り締め敵の射線の中に入る。

 怪我したわき腹を押さえ、泣きそうな魔女の顔がこちらを見ている。


 彼女が何かを言っている。悲鳴ではない。通信は来るなと言ってる感じだった。が、停まる気はない。


 被弾、衝撃


 数発喰らい激しく振動する兎竜。至近距離での射撃は障壁でも防ぎきれなかったのか兎竜の悲鳴が聞こえる、そういやこいつ戦闘機というか機械じゃないんだな。

 すまん……


 繋がりから兎竜の苦痛と闘志を感じる。


「やれるか」


 おいらの問いかけにグンと加速すると反転、雷撃で敵の一隻を潰す。

 が、加速が、旋回が目に見えて遅くなっている。

 天を見回すと更に数隻こちらへ向かって来るのが見える。


 敵がこちらに標的を変えたのか群がって来る。


 集中砲火を兎竜も上下左右に機動し的を定めさせないが、傷で速度が落ちてるせいか回避しきれず次第に被弾数が上がる。障壁がもたねぇ。


「がぁっ」


 座席付近に着弾した弾が炸裂し、障壁を抜けおいらの体を貫く。


「万事休すか。せめてもう少し道連れに」


 命を大事にしないやつは許さなねぇと言った兄貴の姿が脳裏をよぎる。

すまねぇ兄貴、おいら兄貴のもとへ行くみてぇだ……


 が、そのとき、 目の前を黒い影が横切る。カーナだ。


おいらを囲んでいた敵小型艦が火球に直撃され次々に爆散。

複数の敵艦はあっという間に飛竜の火球の餌食になり宇宙の塵と化す。


 通信から叱咤するようなカーナの怒号が聞こえて来た。

 多分、兄貴と同じようなことを言ってるんだろうな。

 竜の上に見えるカーナは、軽く額に拳を当てて離すと、攻撃されてた魔女を助けとけ的に指差すと次の獲物を喰らいに去って行った。


「か、かっこええー」


 おいらは兄貴とカーナを重ねる。兄貴と重なりすぎてこれは、天の兄貴の計らいにも感じる。いやそうに違いない。と感動に震えるおいら。


 この怪我だとすぐにでもカーナとはお別れになりそうだけども……


 兎竜に指示をだしカーナが指差した方向に漂っている魔女を救出にいく。


 箒は折れ、ぼろぼろだ。小柄な少女だ。体にぴったり合う黒っぽい魔女服が綺麗な体の線を浮かびあらわす。あんな状況でも脱げない魔女帽がすごい。


 意識はあるようだ。結構な怪我のようだが無理に浮かべてるっぽい笑顔が凄い。

 胆力あるなぁ。


 兎竜が素早く近づき、壊れた箒とそれにすがり付くように、なんとか搭乗している魔女のゆるやかな回転を抑え搭乗席を彼女に向ける。


「おいらが助けろって事だな」


 お互い言葉は判らないがなんとなく兎竜と意思が通じるのは何か良い。

 血がおいらの服の中の障壁に満ちていくが、おいらがあぼんしても、あの子は兎竜に乗せればあいつは勝手に帰還して医療班に渡すだろう。



 椅子のようになってる兎竜の毛の一部が腰に巻きつく。

 おいらを押し出すように兎竜の毛で出来た椅子が動き、しずくが落ちるように

 おいらは兎竜の障壁を抜け、宇宙へ泳ぎ出す。


 星の海がおいらを包む。川のように流れる星の群れ。吸い込まれるような漆黒の闇にひとは恐怖に混乱すると聞いたこともあるがおいらには無縁のようだ。


 交戦している光がきらめく花火のように見える。数十メートルは移動しただろうか。

 恒星の光を浴び、明暗くっきりした黒服の魔女は怪我で気絶寸前のようだ。


 彼女の腰に手を伸ばし捕まえる。女の子の腰を抱くとか生まれて初めてだ

 柔らかい。


 抱くような感じで捕まえると、兎竜がおいら達を座席へ引き戻す。体毛のような何かで出来た座席を多少広げる。こいつ本当に器用だな。


 座席にお姫様抱っこ的な感じで座る。

 おいら怪我しててよかった。痛みで柔らかい体に反応することも無いぜ。


 おいらは体を貫いた怪我の苦痛に呻く。まぁ一応役得をもらって天に逝く訳だから神様にお礼言うべきかなぁ。


 戦争ってイテェよなぁ。


 彼女が抑えるわき腹から血が染みだしている。苦しそうだ。


 彼女がこちらを見る。色白の目のくりっとしたちいさな鼻筋が可愛い女の子だ。

根元が緑がかった金髪。おさげ風巻き毛が顔の両側から胸へ流れている。


 真面目そうで委員長タイプ……ってほど硬そうでもない感じ。かなり可愛い。


 目が合った。女の子に不安与えるわけにはいかねぇ……って兄貴言ってたなぁ。


「安心しろ。竜まで無事に戻す」


 言葉は通じないけど意味は判るだろ多分。


 苦しそうな彼女においらは自分の怪我を無視し無理やり笑顔を作って笑いかた。

 彼女の頬が少し赤くなった気もするが気のせいだろうな。いや絶対気のせいだ。

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