5話 銀色の艦隊の先制攻撃! 敵っぽいじゃなくて敵確定! 

 しばらく両陣営の睨み合いが続いていた。おいらの胃がぎりぎりと痛む


 と、竜の首の部分が赤熱した感じの輝きがうまれる。


 次第にその数が増えあちこちに赤熱した斑点が竜の体表上にうまれるが障壁を

 突破できないのか全て霧散する。

 霧散するときに竜の体表上の模様が綺麗に輝き、輝きが消えていくのが美しい。


 通信が騒がしくなり、大声で叫ぶ声があちこちから聞こえる。

 眠そうな人の声が聞こえ、カーナの指示らしき怒鳴り声が耳を満たす。


 兎竜から緊張と闘志が伝わってきた。


「攻撃して来やがったのか」


 おいらは武者奮いし、操縦桿を握る手が手汗でぬめる。

 富士山麓で東西不良が集まり大喧嘩したときのことを思い出す。いや兄貴あのとき格好良かったなぁ。


 兄貴の姿を脳裏に浮かべたからかおいらの精神は安定する。

 そしてすぐに兄貴が居ないと思い出す。悲しみの慟哭に心が切り裂かれるようだ。


 兎竜がそれに反応したのか激しく振動し無茶苦茶な飛行になり動揺したようこちらを見る。


「悪い、精神が繋がってるんだよな」


 涙が出そうになるが、それを振り払う。


「おいらの心が読めるなら良いものみせてやる」


 できる限り前を見ろ、そして進め。そう兄貴が言ってたでかい背中を頭の中に描き出す。

 本当にでかかった……本当に……


 おーし力が沸いてきたー。


 兎竜の魔法の文様も心なしか輝きが増したようにみえる。


「お前も兄貴の凄さがわかるのか。気に入ったぜ相棒!」


 兎竜の操縦、攻撃方法がいまいち判らんが、多分なんとかなる。

 カーナが教えなかったくらいだから相当単純なのだろう。兎竜自体人工知能機ともいえなくもない。

 意思決定はおいらだが色々自動なのかもしれない。


 竜を守るように飛竜を先頭に箒の魔女達が扇型に散開する。

 竜が加速し、全軍がそれに追随する。


 射程はこちらのが短いようだ。まだこちら側からの発砲はない。


 相手の発砲は竜に集中し、凄まじ数の赤熱した斑点と霧散する光で、前面が彩られてるが障壁を打ち抜くものは無い。


 敵は後退しつつ発砲、葡萄状の空母から小型艦を雲霞のごとく続々分離させ接近戦体制。

一千隻は居る大型砲艦の中央に、鋭い楔型の精鋭っぽい艦がいる、ぎりぎりまで砲艦で損傷を与えた後突撃する体制か。硬い竜に接近して砲撃加える気だろう多分


 カーナの鋭い声が通信から聞こえ竜に近い連中が慌てて離れる。

 兎竜も同様の行動をとる。賢い。


 竜の体表上の模様が淡い輝きから強くなると、電撃っぽいものが体に纏われる。

 物凄いエネルギーが空間に満ちるのを感じる。唸り音も聞こえて来る。


「ひいい。怖い」


 竜の纏う電撃めいた青白い輝きがおいらと兎竜を照らす。


 洒落にならんエネルギー量とわかるのは不思議だが、まじ半端ない。

 唸り音が竜の方向から聞こえるのは入る方向から通信音声が聞こえるのと同様、音で状況を理解させるための人為的ものだろう。宇宙なら音は聞こえないしな。


 青白い雷撃が竜の体表を暴れ廻り溢れんばかりにうねる。

 咆哮とともに幾つもの極太の雷撃が敵を滅せんと前方へ向かい放たれる。


「うおっ、眩しっ」


 ……と思ったがおいらの障壁が一瞬黒くなって目が潰れるのを防ぐ。魔法技術凄ぇ。


 極太の雷撃は真空を数秒疾駆し敵軍に到達。

 敵の艦隊の中を暴れ龍のごとく青白い電撃がうねる。一瞬で数十の敵艦を一撃で沈め艦隊に穴を開ける。

 沈まなかった艦も結構な数が半壊し漂流を始めている。

 あの威力なら雷撃受けて耐えた艦もおそらくは探知機能をやられ戦力半減だろう。



「一撃でコレか。」


 おいらはあっけにとられ、恒星間飛行を行う魔法文明の兵装の威力に体が震える

 ここまで圧倒的ならば距離を保って雷撃浴びせ続ければ勝利ゆるがないやん。


 そう考えてる間もなく敵は全艦が加速し、葡萄状の母艦からは雲霞の如く小型艦が発進してきた。


「敵さんも馬鹿じゃないと。乱戦に持ち込まれると雷撃は無理か。飛竜と箒の魔女達の出番だな」


 飛竜はともかく、箒の魔女達が恒星間を渡って喧嘩売ってくる相手に通用するとも思えない。

 飛竜には劣るだろうが多分兎竜は結構いけるはずとおいらは踏んでいる。


「兎竜、頼んだぜ」


 繋がってるから言葉はわからなくとも感覚は伝わる。

 兎竜は唸り声をあげる(これも認識音なんだろうなぁ)とおいらは思いつつ箒の護衛のために魔女達に近づく兎竜の利口さに感謝する。


 何らかの武器があるなら兎竜の自己判断かおいらの攻撃意思で発射するはず。

 すぐに乱戦になるからそれらもすぐに試せる。


 その状況はすぐに訪れた。


 逆鏃型の小型艦が雲霞の如く突っ込んで来る。速い!


 通信からカーナの号令らしき声に応える複数の声。


 小悪魔竜を守るように前方を飛んでいたカーナの飛竜を先頭に数十はいる飛竜達は翼を翻しこれまた高速で無作為に上下左右に動きつつ敵へ突っ込む。


 指揮官が先陣とか兄貴体質だな。


 女の子達だろう気合を入れるような声が通信を通して多数聞こえ

 三人ごとに分隊が組まれてる箒魔女隊も飛竜に続いて、これまた無作為に上下左右に 機動しつつ敵小型艦の群れへ突撃していく。


「え、まじか。小型艦とはいえ戦闘艦相手に箒の魔女とか無理だろ、脳筋すぎるわ! 行け兎竜、守るぞ!」


 兎竜が吼えると弾かれるように加速する。おいらの体は後ろへ押し付けられ潰れそう。 こいつ速度は飛竜以上だ。


 通信から焦るようなカーナの声が聞こえる。止まれってことだよな。

 だが兎竜は速度を落とさない……え? 停まれよ。


 飛竜も魔女達も抜きさる兎竜。単騎で先行突撃である。数十秒は先行しただろうか、味方はもうかなり後ろだ。


 眼前に雲霞の如くいた逆鏃型の小型艦の群れに突入する。前後左右的ばかり。


「嫌ぁぁぁ」


 流石にこれは無い。無いわー。

 目前に沢山の小型艦が迫る。大きさは飛竜達より少し小さいくらいか。恒星の光を浴びた部分の銀色が眩しい。


「腹をくくるしかねぇ! 撃て! 何か武器はあるんだろぅ!」


 攻撃の意図を汲んだ兎竜が吼え一本角が唸りをあげ光り、物凄い雷撃を放つ

 雷撃が着弾すると、質量があるかの如く敵小型艦を貫き粉砕する。


「やるな。次行くぞ! 敵の真っ只中だやりたい放題だぜ」


 勇ましい台詞の割りには恐怖で声が震えてる気がするがもらさなかっただけでも

 褒めて欲しい。


 兎竜は無茶苦茶な機動で敵陣の中を縦横無尽に駆け巡る。


 操縦桿での指示だけでなく目視し、移動の思考と攻撃の思考が兎竜に伝わり一体となって敵を攻撃するおいら達は稲妻の如く敵小型艦を蹂躙する。


 ……が何か変だ。


「喧嘩だと突っ込まれて仲間がやられれば動揺するんだが……こいつら全く意に介してないな」


 敵小型艦は隊列も崩さずに直進すると一斉発砲した。


「!」


 飛竜はともかく箒魔女達はやばい。そうおいらは判断すると反転し魔女達の方を見る。


 飛竜達も百以上の数がいる箒の魔女達も敵弾を全て回避。

 突っ込んで来る。半端なく早い。そして錬度が高い。



 敵はこちら側より射程距離が長いのは小型艦でも同じようだ。


 敵の射撃の数秒後、飛竜の口から炎のようなものが見えたと思うと超濃縮された青白い火球のようなものを吐き出す。飛竜の姿が火球の青白い光に淡く染まりそれから吐き出された炎は物凄い速度で敵に到達、着弾貫通し後方の数隻もまとめて爆沈させる。


 更に少しあと、射程に入ったのか号令とともに魔女達の箒の先が光ると発砲する。

 通信から入る女の子達の気合の声が心地よい。


 箒からの攻撃は飛竜の火球には数段劣るが凄まじい威力っぽいエネルギーのうねりを感じる

 赤い火球に直進する炎、雷撃、様々なのが飛竜と違うがそれぞれが敵に着弾、粉砕、もしくは行動不能に陥らせている。


 みずからの数倍はある大きさの小型艦と交差すると互いに、後ろを取り合い速度で劣るのもの旋回力で上回る箒魔女達は相手の上を取るとまず確実に仕留める。

 後ろをとられれば木の葉のように舞い射線を定めさせずに回避し、数発くらいの被弾ならば魔女の防護障壁は貫けない。


 互角以上に闘えてる。正直魔女舐めてた


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