4話 でかい、でかいよ竜。 性格が小悪魔な竜と出合ったっす。性格は可愛いと思うよ、性格は!


「落ち着け、落ち着け」


 深呼吸するおいら。

 星の海にいるからといって何も問題はななな……おいら泳げないぞ

 いや宇宙だから関係ないか。


 どういう方法か判らないが通信めいた声が聞こえる。

 上下左右あちこちから聞こえて来るのは通信相手の方向を感覚的に理解させるためなのか声の方向を見ると箒の魔女や飛竜がいる。


 星の海の中ということに混乱しつつおいらはそれらを眺める。


 淡く輝く膜みたいなのはやはり防護障壁なものらしく、箒の魔女や飛竜に乗った連中は宇宙でも何でもないようだ。ただし、この世界の星の海がおいら達の世界と法則が変わらない前提ではあるけども。宇宙でも空気ある的な奴かもしれんし。


 飛竜は数が少なく前方に展開し、箒の魔女達は10人単位ぐらいの集団でその後方に布陣している。


 ようやく落ち着いて飛び始めた兎竜。加速が終わるとふわりと体が軽くなる感覚がある。だが無重力ってほどでもない。汗や唾などの水分が地味に無重力では危険と聞いたことがあるがそれ対策だろうか。まぁwiki知識だけども。


 何でも知っていて損なことは無いと兄貴の言葉に触発され色々入れた知識の賜物だ。


 だいぶ向こうに大地の上を飛ぶ箒魔女達や飛竜が見える。


 大地? いや小惑星か。平たい左右に長い手裏剣型小惑星。

 あそこの明るい細長いドームみたいなところがおいらが出てきた場所か

 真空に森があって、その中に住居とか魔法のある世界は何でもありやな。


 妙な形の小惑星だ。鱗っぽい模様と淡く光る魔方陣めいた模様も見える。


 鱗? 


 ?がおいらの頭の中を駆け巡る。


 兎竜が旋回して小惑星の上を斜めに飛ぶ。山のようにも見えるそれは、前後が細い手裏剣型に星空を切り取って姿を浮かべている。


 遥か先に見えるそれは蝙蝠の翼っぽく動いていた。ゆっくりとゆっくりと羽ばたく感じで、体全体にある魔方陣っぽい文様はうっすらと全体を覆い装飾のようにも見え美しい。


 柔らかくきらめくように明滅しそれがなにかしらの働きをしているのを感じさせる。


 兎竜がかなり離れたからかある程度全容が見えた。


「えっ。もしかして竜なのかコレ!冗談だろ、でかすぎるだろーー!」


 大地のように見えたのは満天の星空、強い光を浴び輝くようにみえる赤っぽい濃緑の竜だった。とんでもなくでかい。少なくとも出てきた樹の建物っぽい奴の内部は校庭含めた学校より遥かにでかかった


 あの広さの場所が竜の背面首の付け根に瘤のように見える。全体から見れば十分の一も無いのではなかろーか。


 兎竜が巨竜に近づきの前方に廻るように動く


 頭部部分も巨大である。頭部というより巨大な高層建築か岩塊を連想する

 恒星の光を浴び、鈍く光る鱗が頑健な装甲如く覆っている。


「ひええーー」


 巨竜の緑の虹彩がおいらを睨んだ気がして悲鳴をあげてしまう。

 眼球でさえ下手な家より遥かに大きい。

 兎竜の影が眼球の上を横切っていくのもみえる。


 横切る時に少し竜の目が動くと主人公の名前の後頭部に小さな魔方陣が光った。

 主人公の名前は気づくはずもなく、更に思索にふける。


 腕があるというか四脚あるから竜だよな?

 巨大な躯体に巨大な翼をかかげ、星空を占めるようにゆうゆうと飛んでいる星の海の覇者。まさにそんな言葉が浮かぶ威容である。


 とてつもなくでかい。


 破壊の権化のような巨躯。全体的に優美で柔らかい感じもあり女性的でもあるのを感じる。鈍く光る鱗は妙に色っぽいと言えなくもない。


「雌なんかなコレ」


 竜の方から軽く放電めいた青白い一撃が障壁を超えおいらを叩く


「痛っ、なんやコレ」


 青白い放電めいた何かは視界に入ってはいたので竜が何かしたのかとは思う。

 まさかここで呟いてることが聞こえるのか、いや通信がどうなってるかわからんし、そっちの関係か。


「雌って言ったのがまずかったのか。雄だったのか」


 先ほどより強めの青白い一撃が数発入る。

 女の子につっこみ入れられてる気分である。


「女の子って言えばよいのか。んじゃ超美少女。綺麗な鱗に美しい翼に華麗な尻尾つき」


 美少女かどうかはともかく、他は嘘は言ってない。多分通じるはず。いや通じて欲しい。

 弱めの軽い一撃が入るとともに竜は首を動かす。なんか色っぽい

 竜はこちらを観ていて口元を小さく開ける。


 笑ってるのかね。小悪魔娘っぽい。くそでかい竜だけども。



 おいらは左右半透明の球に入っている操縦桿を前後左右に動かしてみる。

 そうすると兎竜もその通りに動く。電子遊戯とほぼ感覚は同じようだ。


 前後左右の味方の位置関係も棒の間にある手ほどの大きさの球状の立体映像っぽい奴に表示されているので把握は容易だ。体に流れ込んだ何かを通じても距離や位置がなんとなく判る。


 無視できるほどにはウザくなく、脳内になんとなく存在する情報。

 魔法って奴なのかこれ。視覚情報はないけど兎竜の電探かなんかの情報だよなコレ。地味に凄い。


 体を廻し後方を見ると砲弾型の鉄と木を張り合わせてごちゃごちゃくっ付けたような船も十隻近く居る。竜と比べれば遥かに小さい。噴射炎が無いのは魔法で謎駆動してるのだろうか。


 もう一頭、一人と言うべきなのかわからんが小さめの竜もいる

 子悪魔巨竜と比べると十分の一くらいだろうか

 落ち着いた感じの緑色に赤色の線の入った、尻尾と首が細長く全体的に幼い感じだ。幼体なのだろうか。


 綺麗な可愛い感じの竜だ。あれでさえかなり大きいから可愛いとかちと違うかもしれんけど。


 前方の銀色の船団の布陣を見る。カーナ達の慌てっぷり見る限り敵のようだ。少なくとも味方ではないのは確かだ。

 恐ろしいほどの数だ。数千は居るのかなぁアレ。


 兎竜からの感覚では遥か遠くに居る。

 新規の到着はなく、隊列を組み臨戦態勢にみえる。


 耳元で通信する声が聞こえる。あの眠そうな人の声だろうか。警告というかそんな感じのをしてるっぽい。緊張している状況下のんびりした感じでの警告は大物なのか、いかれてるのか判別しずらい。地味に怖い人な感じやな。


 何度か同じ警告を繰り返す。言葉が通じてないんじゃね的な疑問もあるが儀礼的なものだろうか。

 とにかく警告を繰り返したという事実が重要なんだろう。


 おいらは相手船団をよく見ようと目をこらす。


 電探状況が向上したのか立体映像と脳内の状況把握が鮮明になる。形や距離まで感覚的にかなり正確に把握できる。まじ凄いなほんま。


 兎竜がびくんと震え動揺した感でこちらを見るがわけわからん。そんな些事は放っておいて、銀色の集団を観察する。

 こちらの小型の竜と同じくらいの大型艦だけでも千隻は居るだろうか。

 さすがに子悪魔娘竜の大きさは居ない。が、数が多い。戦闘力でこちらが圧倒してない限りすり潰されるだろう。


 形もまちまちでなんとなく掻き集めたような艦のような大型艦が半分、前方に壁のように布陣。


その後方に鋭いやじり型の精鋭っぽい集団。


さらに後方に中央にエンジンに骨組みを直接組みつけ、更に小さな粒を沢山付けたような細長い葡萄のような形態の大型艦がそれぞれ半々居る。

粒みたいなのは小型艇か。


 警告の通信は依然無視してるようだ。


 艦の形態がこちらと向こうでは全く違う。ていうか魔法文明だよなこちらは

 こちらは真空を飛ぶ竜達に箒の魔女達だもんなぁ。


 向こうは見覚えがあるというか、普通の科学技術の延長の設計にみえる。竜は強そうだけども箒の魔女達は綺麗に掃除されてしまうじゃねぇかなぁ。


 少し体が震えるおいら。また死ぬのは怖い……あれ、おいら死んだんだっけ……記憶がはっきりしない。ま、思い出すのは後回しだ。


 逃げるという選択肢は無いし、あったとしても関係ねぇ。危機的状況下で戦力として求められたんだ。闘うさ。兄貴ならそうする。死が近いところにあると理解して、脚が震える、手が震える。


「おっしゃあ。なんとかなるさ! うらうらうらぁ」


 とりあえず大声出して恐怖を追い払う。情け無いなおいら。


  とその時、おいらの感覚に何かひっかかった。

遥か遠い場所になにか黒い巨大な影のようなものを感じるがすぐに消えた。

地上の感覚に直すと遥か海の向こうに何かがいる感覚といえばよいのだろうか。


訳判らん感覚になど放置するしかない。おいらはそれを頭から追いやった。


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