2話 戦場!?宇宙?……召喚されたおいらの眼前にはヤバそうな宇宙艦群!



 ここは……どこだ……


 肩膝を付いた姿勢で居るがこの体勢になった記憶もない

 視界も霧がかかったような。


 異国語……? のざわめきが聞こえる。

 叫び声まで聞こえる。


 僕…いや、おいらは寝て…記憶が曖昧やな…


 ふと見た自分の体は……いつもの濃紺の学ラン風ブレザー制服を着た状態だが

 薄ぼんやりと透けつつも、何かが凝縮して形をとり始めてるような感じで……


「なんじゃこりゃぁ…!!!」


 透けた自分の体をみておいらは叫ぶ。

 叫ぶ少しの間に体と服もいつも通りの感じになった。

 いやまじで何これ?


 動揺しつつ辺りを見す。


 奇妙なことが起きて居るのは間違いねぇ。


 外人が居る。


 軍旗っぽい感じの旗が立ち並ぶうねうねした樹の幹のような壁面。その中央にある祭壇のようなものの上にちょこんと豪華な服をまとい、座って居る幼い少女を中心に扇型に外人が並んで立っている。


中世な荒々しい感じの服を着た軍人風のごつい奴らに神官っぽい緑の服を着た

 男女が慌てた感じでおいらの方を見ている。見た事も無い服装や。なんぞこれ。


 中央の祭壇らしき上に豪華な服を着た人形のような幼い少女が座っているのが奇妙。


 並び立つ奴らは髪の色も緑に赤に金とさまざまだ。


 目に入る風景が変だ。


 大きな木というか柱というか、葉の少し生えた太い樹木が壁の如く生え、

 絡み合い天蓋の如く覆っている。


 太い枝の絡み合いさながら格子の如くあるそれらの隙間から見たこともないような美しい満天の星空が見える。


 大きなざわめきに後ろを見ると、樹木の天蓋の広場の下に数百人は居るだろう異国風の大勢の人間が少し下がった位置に頑丈そうな服を着て整列して立っている。


 魔法使いっぽい帽子を被った黒っぽい服の女の子達の姿が目立つ。


「式典でもやってんのかぁ、でもなんでおいらこんな場所に」


 と、その時


 目の前の神官や軍人っぽい連中の中に居た少女が一歩踏み出し大声がざわめく場を一喝する。


 びりびりするような声に何人かは尻餅すらついている。神官っぽい連中は全員だ

 可憐さの中に苛烈さを帯びた覇気の塊のような大声に皆静まりかえる。


 銀から桃色へ変化する長髪がうねるように風も無いのになびき、中肉中背だが、獣のような肉体から怒涛の如き威圧を噴出している。


 覇気が形になり、見えてるようだ。いや見えてる。


 少女の周りの空間が歪んでいる。


 周りの人間は慄いている。


 威嚇はおいらに向けて放たれたようだが、むしろ心地よい。

獣の如き覇気に懐かさを感じ、おいらは一歩一歩、彼女に近づいていく。


 曖昧だった記憶が蘇る。おいらの頬を涙が流れる。

 おいらには空間を歪める覇気しか見えていない。


 ……


「ああああ、兄貴……兄貴! 生きてたんスかぁぁぁ」


 脱兎の如くおいらは飛び出す。兄貴に抱きつくために。


「あだだだだっ」


 抱きつく前に頭を片手で掴まれ、足も地面についてない。足をじたばたさせながらも腕を掴み首吊り状態をこらえる。


 猿と呼ばれ、素早さでは定評のあるおいらの突進に即反応して頭掴みとか

 さすが兄貴! 


 ついでに言えば掴まれた頭骸骨からミシミシという音が聞こえる。


「兄貴! 死ぬ、しぬぅ」


 頭を掴んだ手が少し緩まる。

 その手を持って首吊り状態をこらえているが、腕が妙に細くて柔らかい。


違和感に歪んだ闘気の中に居るひとを見る


 おいらは我にかえる。


「兄貴じゃない!」


 おいらが落ち着いて動かなくなった事に安心したのか少女の闘気が気えていく

 目の前に居るのは女豹のような体格のくりっとした緑目の異国風の顔の美少女だ。


 白い毛皮の襟が豪華な軍服っぽい濃い茶色の皮の服に、闘気でうねるように蠢いていた銀桃の長髪も緩やかに舞い降りる。髪先が少しうねるように巻いた感じが綺麗だ。


 彼女は猫でも持つように、おいらを片手で頭を持ち吊り下げながら、にかっと笑い自分を親指で指して


「カーナ、○×△カーナ」


 そう可愛い声で言った。名前だろうか。名乗り返すべきだよな。


 名前……か、本名はあるがあれはどうでもいい……か。


 見たことの無い異国風の服装。


風景にガキの頃観た異世界へ飛ばされる映画を思い出し、あり得ないと思いつつ、実在感が桁違いすぎて冗談にしても手が込みすぎていて異世界へ飛ばされた状況以外考えられないとおいらは考える。


「猿。三下猿。それがおいらの名さ」


 仲間うちで呼ばれていたあだ名。

 今ではそれで呼ばれることのほうがしっくりくる。本名と言っても良いくらや。


 兄貴の一番の子分だったと自負している。


 三下だけども兄貴には可愛がって貰ったし相談を受けることも段々増えてた。

 もう参謀じゃねと仲間に言われたこともあるが、おいらは兄貴の三下という自負は揺るがねぇ。


 と、その時、怪鳥の鳴き声のような警告音? が響きわたる。


 異国風の連中が一斉にこめかみに指を当てつつ上を向く。

 大騒ぎである。蜂の巣をつついたような騒乱状態だ。


 天蓋の上部に球状の映像が浮かびあがっている。


 雲ひとつ無い綺麗な星空の中を銀色の鋭い菱形をした物体が続々と到着しているような映像だ。


 カーナもこめかみに指に当てつつ、それを驚いたような顔で見ると大声で指示を出し始めた。覇気が復活している。


 動揺していた下段の広場の連中はその一喝と覇気に気を取り戻し慌てたように蜘蛛の子を散らすように動き始める。


 飛んでる奴も結構居る。マジか。


 カーナは指示を出し終わると、おいらを片手で吊り下げたまま、耳が長く上に尖り偉そうな模様山盛りの緑黄と黒の軍服を着た、クッソ眠そうな目をした金髪金目のめっちゃ綺麗な長身の女と話し始めている。


 長耳さんは異国語だが眠そうな話し方なのはわかる。皆が動揺している状況下での動じない感は凄い。


 話がついたらしくカーナがおいらに何か言いニカッと笑う。


 ……可愛い。


 覇気をばら撒くのは指示するときだけらしい。威嚇のときは闘気。空間の歪み方

 が違い、なんとなく判る。兄貴と似てるなぁ……兄貴を思い出し泣きそうになる。


カーナ……だっけ、が袖から少し輝く糸のようなものをおいらの腰に廻し縛り上げ、荷物のように抱えあげる。


 嫌な予感。


 カーナが何か言うと、おいらを片手に洒落にならない速度で走り始めた。


 舌噛むなよとか言ったのかな。


 急いで走り廻る軍人やその他の人間達を風の如くかわしながら追い抜いていく。

 木をくりぬいたようなうねるような廊下を半分飛ぶように駆け抜ける。


 対立高校の奴らにボコられ攫われ、車に縛られて運搬された時を思い出したが

 それより速い気がする。


 ちらりとカーナがこちらに目を向けると狭い通路に飛び込むように入り、駆ける速度を落とすとカーナが何かを叫ぶ。


 そうすると樹の壁から出てきた淡い人型の光が素早くおいらの周りを巡る。


 紐を緩めるとカーナがおいらを放りなげる。


 こんどは壁から何か布のようなものが飛び出して来ておいらの体に巻きつく。

 一瞬でカーナ達が着ているような服が装着される。


 なんやコレ。便利過ぎる


 放りなげたおいらをカーナは受け止めると横長の広いテラスのような場所に踊り出た。


「おおっ。なんだこりゃ」


 樹をくり抜いたような廊下を抜けると巨木の幹と枝で格子状の壁に覆われたアーチ型の巨大な空間に出る。その隙間からは綺麗な星空が見えるのは先ほどの広場と同じだな。


しかし、マジでかい。校庭付き校舎の五個分くらいの広さがあるのではなかろうか。ちらりと見えた感じ、天井までもくそ高い。


 沢山の、沢山の獣の咆哮が空間を満たしている。


 荷物のように片手で運ばれているので苦労しながら咆哮の方を見上げると、こちら側の樹木交わる壁側から黒い大きな翼を影がいくつも飛び出していくのが見える


 背中には先ほどの広場に居た頑丈そうな服を着た男達が騎乗している。



「……竜!いや、飛竜か?まじかよ」


 映画だと騎乗してるのは飛竜とか分類してた記憶


 しかしでかい。大型トレーラーよりでかいんじゃねぇか、あの飛竜達は。昔見た空軍の戦闘機くらいあるのではなかろうか。


 枝の隙間は淡く光りなにかしらの障壁があるっぽい。そのむこうに満天の星空が見える。そこを飛竜達は通り抜け星空の中へ続々と飛翔していく。


 先ほど広間に居た魔女っぽい格好をした女の子たちも、壁というか一面の樹々の中から結構な長さのあるごつい箒に乗って続々とその星空の中へ凄まじい速さで飛び立っていく……あれ箒だよな


 まるで鳥が樹々から飛び立って行くが如くである。


 箒には両脇に頑丈そうな箱が付き、投射兵器っぽいのも括りつけられている。

 ハンドル状の物がついており、乗り方も米利堅(アメリカ合衆国)なバイクな感じでワイルドだ。


 魔法使い帽に皮製の体にぴったり合った感じのごつめの服は共通だが、外套も付けてる奴と居ない奴が居たり、趣味の小物っぽいのをじゃらじゃら身につけていたりと結構自由だ。



 彼女達は体と箒に淡く光る薄い膜のようなものが掛かっている。猛烈な速度にも関わらず帽子や外套が揺れていないから、なんらかの保護壁みたいなものがあるっぽい。


 ……外套ははためいているな。あれか、おしゃれというか、月面の旗みたいなものだったりするのだろうか。


 カーナが何か言うとテラスから飛びだした。

 横に階段があるが多分そういうの気にしないひとなんだろう……


「なぁぁぁぁぁーー」


 おいらの悲鳴とともに数十メートルは落下しただろうそこにソイツは居た。


 剣呑な目とともに。

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