雪の下には
春野訪花
雪の下には
雪の下には妖精が眠っている。
そう言ったのは、果たして誰だったか。
雪を眺めながら思った。
溶け始めの雪はキラキラと輝いている。これから来る春を喜ぶように。同時に、冬が終わる物悲しさを覆い隠すように。
さくり、と踏みしめられた雪が鳴る。じっと見下ろす雪の下。果たして妖精は眠っているのだろうか。
雪どけの季節。子どもの頃にはいつも、今目の前で輝いている雪に負けないくらい目を輝かせていたような気がする。妖精に会うんだ!なんて。
つま先で雪を弾く。雑に掘ったそこはまだ雪だった。
どこまで掘ればいるんだろう。土の上?
つま先で雪を叩く。
「おーい」
なんて呼びかけてみた。すると雪がもぞもぞと動いて、その下からすぽんと小さな男の子が顔を出した。
思わず何度も瞬きをしたけど、男の子は視界から消えなかった。
小さな男の子は軽やかに私の目の前まで飛んできた。
背中に半透明な羽が生えている。透き通るような白い肌に、淡いクリーム色の髪。それらが太陽の光を受けて輝いていた。
――あ、思い出した。
「雪の下には妖精が眠っているんだよ。忘れちゃったの?」
そう言った小さな男の子は、『あの日』と同じ大人びた笑顔を浮かべた。
雪の下には 春野訪花 @harunohouka
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