四章 穏和の付喪神

一話 その異変は

前書き

いつも自作をお読み下さりあありがとうございます。

山中一博でございます。本日から四章の公開を開始します。

本章は六話まで公開予定ですが毎日12時に更新しますが、本日のみ13時にも二話を公開します。楽しんでいただければ幸いです。






「ふざけやがって!」



 彼は乱暴に携帯を鞄に放り込んだ。ネットがうまく繋がらないのだ。電波障害だろうか。しかし、完全に繋がらないわけではない。反応が鈍く、途切れるのだ。速度制限ではない。



 アプリはどうだ。通信を必要とするアプリが動きにくいのは当然として……やはり、おかしい。設定アプリが落ちる。通話は? 発信ボタンで繋がりはする。



「もしもし?」

「どした?」

「携帯の調子がめっちゃ悪いんだけど?」

「俺もだわ」



 なるほど。どうやら友人も同様らしい。



「マジか。わかった」

「すぐ良くなるでしょ。そういえば俊平と飲みに行くけど来る?」

「行く。一回携帯ショップ行ってくるわ」



 大学の講義もバイトの予定もない。念のためショップで携帯を見てもらう。そんなことを考えていると電源が落ちた。充電は八割ほど残っていたはずだ。



「マジかよ。なんだよ、これ」



 この調子では日常生活に支障を来す。昨日までは普通に使えていたのに。そもそも、こないだ買い換えたばかりだ。



「マジでダルい」



 しかし、対処しないわけいもいかない。携帯がないと不便すぎる。治らないということはないはずだ。修理か交換か、最悪の場合は時間が解決するだろう。彼は溜息を零した。




 彼は知らなかった。その異常事態が特定地域に集中して発生していることを。知りえなかった。その原因が物理法則によるものではない、ということを。

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