第24話 暗転

 ひどい熱。

 もたれ掛かるように倒れ込んだカガリさんの身体が、有り得ないほど熱い。


「おい、冗談は……」

「ちょっと……?!」


 慌てて駆け寄るビコエさんとトズミさん。

 僕は驚いて固まったまま、彼の身体を抱き止めていた。


「か、……カガリ、さん……?」


 脚が震える。力が入らなくなってくる。

 耳許に、やっと聞こえるほどの彼の声。


「……ごめん、ね、……レギ……」


 その言葉に、フラッシュバックが起きる。

 記憶の奥底にあって普段は思い出すこともできない、古い記憶の欠片。


 カガリさんを抱きかかえたまま、ストンと座り込む。

 熱すぎる吐息。

 呼吸が荒く、苦しそうで。


 記憶が現実に重なる。

 

 記憶の中の、ゆっくりと光を失っていく眼差し。

 カガリさんとよく似た声。




 ──ごめんね、セロ……




「……い……や……」




 置いてかないで

 僕をひとりにしないで




「い、や……、……です……」


 暗闇に突き落とされるような感覚。


 それまで辛うじて僕の肩をつかんでいたカガリさんの腕が、落ちた。


「カガリさん……?」


 反応が、ない。



「……──いやだ、……やだよ……。ぼくを……おいていかないで……っ!!」


 視界の中に、ビコエさんが必死に何か言ってる姿が映る。

 トズミさんが後ろに向かって叫んでる。

 知らない人たちが見えた気がする。


 けど。

 

 目の前が真っ白だ。


 もうなにも、わかんない。

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