第17話 花も恥じらう

 僕たちのいる場所から25メートル程向こうに翼竜とそこに縛り上げられた野盗2人がいた。

 その周りを保守隊がぐるりと取り囲んでわいわいやっている。アーニーさんの姿も見える。

 そのうち、野盗2人は腰縄を付けられて連行されていった。

 

 僕たちも保安隊の駐屯地に行くことになっている。


「ご協力感謝します。よろしくお願いいたします」


 保安隊の人がこっちに1人やってきて、敬礼した。

 カガリさんは立ち上がって簡単に挨拶を返し、それから僕たちに向き返る。


「さて、私たちも行こうか」


 カガリさんはテカダさんだった女性に手を貸す。

 彼女はカガリさんの手を取り、多少ふらつきながらではあったけれど立ち上がった。


「大丈夫ですか?」

「ええ、もう大丈夫」


 おそらくまだ18歳にはなっていないと思しき彼女は、カガリさんの手を離して少しうつむく。

 頬をほんのり赤く染め、きゅっと目を瞑った。


 カガリさん。こんな若い女性じゃ、さっきのはちょっとばかり刺激が強いです。

 胸に抱いて介抱するなんて。


 思わず視線で抗議してはみるものの、カガリさんは涼しい顔をしている。


 おそらく、婦女子に刺激的だとか、まったくそんなことは気にしていないみたいな彼は、彼女の様子を心配するそぶりを見せつつそばにいた保安隊の男性になにか話した。

 女性が調子が良くないことを伝えていたんだろう。


 そばにいた別の隊員が向こうで待機していた馬車に向かって走って行き、それからしばらくすると馬車がこちらに近付いてきた。

 保安隊の女性隊員がやってきて、ふらつく彼女を支えながら馬車に連れて行く。


 僕らも他の隊員に付き添われて馬車に乗り込んだ。



 その後、保安隊の頓所で軽く質問などを受けた僕らは程なく解放された。


 やはりあの2人は最近この周辺を荒らし回っている野盗のメンバーだった。

 魔法を使ってきてたらしい男は、能力のためか団内では結構上位だったそうだ。

 今回の一件で野盗は5人が捕まってて、そのうちの誰かが洗いざらいぶちまけたらしく、いま保安隊のほうはてんやわんやらしい。


 そのうちに、連中はみんな捕まっちゃうんだろう。



 保安隊頓所を出た僕らは、リオジの町中にいた。


 ようやく調子がよくなった女性は、頓所で服を着替えてきたそうで、すっかり普通のお嬢さんに戻っていた。

 聞けば、リオジの町外れにある保安隊頓所から歩いて数分のところに目的地はあるらしい。僕たちは彼女を真ん中に、警戒をしながら町を歩いている。


 賑やかとまでは行かないにしろ、大きな町の中心地はそれなりに人も多くて活気がある。さすがにここまで来れば野盗だのケモノだのには会わないとは思うんだけど、そこは最期まで手を抜かないカガリさんのこと、警戒の網は解いていない。歩くたびにチリンチリンと銀鈴が鳴った。

 一応、僕だって緊張はしている。あんなことがあったばかりだから、また空間系の何かで襲撃されたらたまらない。


 そんなときだ。


「あれ? 君ー!」


 すれ違いざまに突然声を掛けられ、驚いた僕は飛び上がった。

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