誰かの記憶1
昔話
僕は、ふと思い出した。
誰から聞いたのか……そうだ、「おかあさん」が話してくれた昔話だ。
なぜ?
よく分からない。
おなかが痛い。
時々襲いかかってくる、体を内側から割られるようなひどい痛みに耐えながら、わずかな隙々に「おかあさん」が話していたその……ごく短い昔話を思い出す。
『記憶の本』の中の文字を、指でなぞるようにして。
「昔々。
世界がまだなにもない、まっさらな平面だったころ。
一柱のカミサマがいました。
カミサマは、ある時自分が一人きりだと知りました。
寂しくなったカミサマは、誰かとお話しがしたいと思いました。
そこで、まっさらな平面にフッと息を吹きかけました。
すると、なにもなかったまっさらな平面に波が起き、その波の中からさまざまな物が生まれました。
空が生まれ、星ができ、太陽ができ、地面ができました。
風が吹き、火は燃え、水は流れました。
そうしてすっかり世界ができあがると、カミサマは白い大地に降り立って言いました。
「さあおいで、たくさんの命たち。
わたしとたくさん話しをしよう。
わたしはずっと待っているよ」
こうして世界が生まれました。
──そうね、○○。あなたも世界の子どもなのよ」
そう言って「おかあさん」が笑って、僕も笑った。
ねえ、「おかあさん」。
僕、頑張ったよ。
“これ”だってたくさん集めたよ。
僕は約束、果たせたかな。
僕はこの痛みに、耐えることができるのかな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます