神人の落とし穴隠し

渋谷かな

第1話 落とし穴

俺の名前は佐藤築。

18才の普通の高校生。

俺はとある出来事で死んでしまった。(とある出来事とは、妹の右フックであった。)

だが死んでみるのも良いもので、俺の隠された実力が開花する。

俺は神人になった。そう、俺は神になったのだ。


俺の妹は佐藤ポー。(自称、ポーちゃん。)

7才の小学一年生だ。

一見普通の小学生に見える俺のカワイイ妹の正体は、ポー騎士団の団長である。

といっても俺が神となって作ったカードゲーム「ゴットカード」の中の話である。

退屈な日常では味わえないスリルをゲームの世界で体験することによって、俺と妹の本当の意味での物語が始まる。


俺たち兄弟の母親は父親を殺し、家を出て逃走した。風の便りで母親が魔王になり世界征服を狙っていると聞いた。俺の妹は母親を探して倒すために冒険の旅に出る。本当は小学生という立場を隠し騎士団長として強く生きていく妹の雄姿を見てやってくれ。


クエスト3

渋谷の塔の敵を殲滅せよ。


「ポー!」

 基本、俺の妹は「ポー!」という掛け声しかかけない。なぜなら俺が通訳するからだ。

「ポー!」

 そして俺の妹の騎士団の掟として、団員も「ポー!」しか公には喋ってはいけない。

(おい!? 団長は何と言っているんだ?)

(知るか!? ポー! しか言わないんだから俺たちに分かる訳がないだろうが!?)

(やめろ!? 団長に聞こえたら殺されるぞ!?)

 これが妹の騎士団員たちの本音であった。一言言っておくが、私語を話したからって俺の妹は団員を処刑にはしない。

「ポー!」

 俺の妹は「渋谷の塔を手に入れるぞ!」と言っている。

「ポー! ポー! ポー!」

 妹の団員たちは「エイ! エイ! オー!」と掛け声で気合を入れる。


その頃、天界の俺。

「師匠、渋谷の塔なんていつできたんですか?」

「塔は高層ビルかタワーマンションが元だ。渋谷の塔スクランブルスクエアだ。」

 俺の師匠エルエル。天使の天人だ。俺が妹に殺された時にやって来て、俺を神人にしてくれた。命の恩人ではあるが自堕落で美味しい所だけを持っていこうとする弟子使いの荒い師匠である。

「バカ弟子よ。そんなことより細かい設定を説明しないとクエスト3からでは一般大衆が分からないのではないか?」

「いいんです。知りたい人は「神人の師匠」を読んでもらいましょう。」

 ドンドン! ピュウピュウ! パフパフ!

「さあ! 俺の妹の騎士団が渋谷の塔に突撃するぞ!」

 俺はワクワクしながら妹を見守る。


渋谷の塔。

モンスターなのか他の領主の兵士に占拠された塔。そこを制圧するために俺の妹は騎士団を率いて乗り込む。

「ポー!」

 ちなみに俺の妹の本日のレベルは111。渋谷の塔の推奨レベルは3だ。

「ポー!」

 俺の妹の騎士団員たちが塔の中のスライムや魔法使いと激しい戦いを繰り広げない。

「ポー!」

 圧倒していくのだ。弱い少数の敵に111人の騎士団員が数的優位を利用して余裕で1階1階クリアして上に登っていく。

「ポー!」

 スライムや歩兵に対し、俺の妹の団員たちは1匹に対し10人で取り囲みリンチしていく。

「ポー!」

 お化けやコウモリに対し、俺の妹の団員たちは1匹に対し弓兵、魔法使いが全員で弓や魔法を撃ちまくる。

「ポー!」

 団員たちは「推奨パーティー数3の所に111人で乗り込むんだ。勝てない訳がない。」

 俺の作ったカードゲームはログインするとレベルが1上がる。1回無料でガチャも回せる。だから毎日ログインした者が1番強いのだ。小学生の俺の妹は4月から夏休みまでログインだけしていたのでストーリーを進める時に戦力が整いすぎているのであった。

「ポー!」

「ポー!」

 だから余裕のある俺の妹は塔の外でおままごとをして、塔の制圧の連絡を待っている。

「ポー!」

 俺の妹は「あなた浮気したのね!? 酷いわ!? しかも私が妊娠している時だなんて!?」と言っている。

「ポー!?」

 そこに団員が慌てた様子で俺の妹の元に駆けつけてくる。

「ポ?」

「ポー!?」

「ポー!」

 伝令の団員の報告を聞いて立ち上がる俺の妹。団員は「屋上に魔物がいて我々では倒せません! どうか団員たちを助けてください!」と言っている。

「ポー!」

 俺の妹は「分かりました! 騎士団長の名にかけて、私が魔物を倒してみせます!」と言っている。

「ポー!」

 団員たちが確保した通路。高速エレベーターに乗り込み俺の妹は屋上に数秒でたどり着く。

「ポー!」

 俺の妹は屋上にたどり着いた。

「ガオー!」

 そこで見たものはドラゴンだった。本当は弱い鳥くらいなのだが、俺の妹が強すぎて急遽ドラゴンを投入した。さすがに団員たちでは敵わないはずである。

「ポー!」

 俺の妹は「後は私に任せなさい! これ以上! 私の団員たちを傷つけさせない!」と力強く言っている。

「ポー!」

「ポー!」

「ポー!」

 団員たちは「団長が来てくれたぞ!」「俺たちは助かったんだ!」「団長! ありがとう!」と俺の妹の登場を心強く思っている。

「ポー!」

 俺の妹は「任せなさい!」と言っている。

「ポー!」

 俺の妹は「見せてあげるわ! 騎士団長の実力を!」と言っている。

「ガオー!」

 ドラゴンは「小さな子供に何ができる! 笑わせるな!」と炎を吐く。

「ポー!」

 俺の妹は「いくぞ! 我が剣に誓っておまえを倒す!」と言いドラゴンに突撃する。

「ガオー!?」

 ドラゴンは「なに!? 剣を捨てただと!?」と突撃しながら剣を頬り投げた俺の妹の行動に意表を突かれる。

「ポー!」

 俺の妹は「くらえ! ドラゴン! これが私の伝説の右フックだ!」

「ドカーン!」

 俺の妹の暗殺拳がドラゴンを吹き飛ばす。ちなみに俺の妹はステータスポイントを全て攻撃力に振り分けている。おまけに妹思いの俺は全世界で1番攻撃力が高い妹にボーナスとして攻撃力を10倍のサービスをしている。

「ポー!」

 能ある鷹は爪を隠すならぬ、能ある妹は中指と人差し指の間に親指の爪を隠すのであった。秘拳! 親指隠し! これで攻撃力が100倍にもなる。恐ろしくカワイイ俺の妹。

「ポー!」

 俺の妹は「正義は勝つ!」と堂々としていた。

「ポー!」

 団員たちは「さすが! 団長だ!」

「ポー! ポー! ポー!」

 勝ち名乗りをあげるポー騎士団であった。 

「ポー!」

 俺の妹は渋谷の塔を制圧した。これで領土の外が高い所から良く見える。


その頃、天界の俺。

「さすが俺の妹だ! カワイイ!」

「この兄バカめ!」

 俺と師匠は展開から優しく頑張っている妹を応援している。

「でも師匠。こんな破天荒な展開でいいんでしょうかね?」

「いいんじゃないの。個性豊かなキャラクターが求められてるわけだし。ポーちゃんは十分個性豊かだよ。あとワクワクだとか、胸が熱くなる展開を求められているから、困っている人を助けるとか、ピンチを助けるとかだね。」

「さすが師匠!」

「それほどでも。アハッ! ドンドン! ピュウピュウ! パフパフ!」

 褒められて嬉しい師匠。

「何かを考えるだけ無駄だな。さっさと東京23区を制圧させよう。」

「はい! 師匠!」

 こうして信長の野望、三国志、キングダムならぬ国盗り物語が始まる。


クエスト4

東京地下迷宮B1を進め。


「ポー!」

 団員が地下迷宮の入り口を見つけたという。ただの東京メトロの入れ口の階段という説もある。

「ポー!」

 俺の妹は「面白そうだから行ってみよう!」と言っている。

「ポー!」

 俺の妹は渋谷の地下にたどり着いた。

「ポー!」

 渋谷の地下は入り組んでいて、まるで迷宮のようだった。

「ポー!」

 団員は「色々なところに繋がっていますね。」と言っている。それもそのはず地下街からの地下鉄の線路に電車を走らなければ立派な地下迷宮になる。半蔵門線なら都心に二子玉川の方へ。銀座線なら王都銀座に行ける。東急東横線なら横浜まで行けてしまうのだ。

「ポー!」

 俺の妹は「移動できるところが増えてワクワクするね!」と喜んでいる。

「ポー!」

 俺の妹は「どんな冒険が待っているんだろう!」と胸が熱くなっている。

「ポー!」

 団員が「どうやら、この洞窟は地下一階までの様ですね。地下二階に続く扉に鍵がかかっています。」と言っている。

「ポー・・・・・・。」

 俺の妹が落ち込んでいる。

「そこの迷える子羊よ!」

 そこに神人である俺が神として降臨する。

「ポー!」

 俺の妹は「お兄ちゃん!」と喜んでいる。

「違う!? 私はポーちゃんのお兄ちゃんじゃない!? 俺は神人だ! 俺は神なのだ!」

 本当はポーの兄です。

「ポー!」

 俺の妹は「お兄ちゃん!」だと言っている。

「ポーちゃん、この地下迷宮は1つの領土を手に入れる度に1階ずつ地下深くに行くことができます。だから東京23区を魔王から解放してね。」

 今できた。地下迷宮の謎の解き方。

「ポー!」

 俺の妹は「お兄ちゃん、遊ぼう。」と言って俺の話を聞いていない。

「ポー!」

 しかし団員達には「ポー!」しか聞こえないので、「やりましょう! 団長! 我々が東京を魔王の手から救い出しましょう!」と盛り上がっている。

「じゃあね。ポーちゃん。」

 俺はそよそよしく天国に帰って行った。

「ポー!」

 俺の妹は「まさか殺したはずのお兄ちゃんが神になっていたとは!?」と驚いている。

「ポー! ポー! ポー!」

 そうとは知らずに盛り上がる団員の皆さんたち。

「ポー!」

 俺の妹は「今度こそ神にすらなれないように殺すと言っている。」そのことを団員たちは知らない。


クエスト5

隣の区を制圧せよ。


「ポー!」

 俺の妹は「この世の全ては私のものだ!」と言っている。

「ポー!」

 しかし団員たちは「俺たちポー騎士団が魔王から世界を救うんだ!」だの「ポーちゃん団長! どこまでもついていきます!」だの「俺の命はあんたのものだ!」と忠誠を誓っている。

「ポー!」

 俺の妹は「どこから攻めようかな?」と品定めしている。

「こんにちわ。」

 そこに俺の師匠の天使の天人エルエルが現れる。

「ポ?」

 俺の妹は「なんだこいつは? お兄ちゃんの回し者か?」と警戒している。

「私はお兄ちゃんの展開の師匠だよ。」

「ポー!」

 俺の妹は「やはりお兄ちゃんの手の者か。」と余裕で受け止めている。

「どうだろう? 私からの提案なんだが、ポーちゃんは兵士の数も多いし、一度に複数の領地に攻めこんでみてはどうでしょうか?」

 師匠は複数の国に対して同時に攻め込もうと提案してきた。

「ポー!」

 俺の妹は「ほ~、私の兵力を分散させて、私の力を弱くするつもりだな。」と疑っている。

「ポー! ポー! ポー!」

 しかし団員たちは「そうしましょう!」「一気に領土が広がるぞ!」「ポーちゃん団長! 万歳!」と盛大に盛り上がる。

「ポー!」

 俺の妹は「やられた!? 私が「ポー!」しか言わないのをいいことにしてやられたわ!」自分が子供であることを恨んだ。

「じゃあね。後はよろしく。」

 マイペースな師匠は空を飛んで去って行った。全く憎めない人であった。

「ポー!」

 こうして前代未聞の同時多発侵攻作戦が始まるのであった。

「これでも少しサボっていられるぞ。アハッ!」

 圧倒的な戦力の師匠は働きたくないので自分の存在感を隠しサボりまくるつもりだった。これが自ら隠れる、奥義!師匠隠し! である。

「ほんまかいな!?」

 俺は師匠に絶句する。ドンドン! ピュウピュウ! パフパフ!


「ポー!」

 俺の妹は「これより同時多発侵攻作戦を開始します!」と作戦会議を始める。

「ポー!」

 団員たちの代表が作戦会議に参加している。

「ポー!」

 俺の妹は「目黒、世田谷、杉並、中野、新宿、港区がターゲットだ。どうする?」と言っている。

「ポー!」

 団員は「各一つの区に歩兵隊なら歩兵隊、魔法使い隊なら魔法使い隊を送って競わしてはどうですか?」

「ポー!」

 他の団員は「それなら各ジャンルから均等に歩兵や騎士、僧侶とパーティーを編成した方が良いのではありませんか?」

「ポー!」

 俺の妹は「私に考えがある。今回は私の作戦に従ってもらおうか。一瞬にして6つの区を手に入れてやろう。ワッハッハー!」

「ポー! ポー! ポー!」

 団員たちは俺の妹に絶対の信頼をしている。


「ポー!」

 俺の妹は「進撃開始!」と団員に号令をかける。

「ポー!」

 ポーちゃん騎士団が動き出した。その総数は112人。これはログインを112日続けてレベルを112に上げ、無料ガチャ1日1回を繰り返した結果である。能ある小学生は努力を隠す。

「ポー!」

 総勢100名(渋谷領の護衛に12人だけ残した。)が小さな目黒区に攻め込む。

「なんだ!? おまえたちは!?」

 目黒を支配する魔王の手下の領主サンマ。いきなりの強襲に驚いている。

「ポー!」

 一度に30本の弓矢が降り注ぎ、10発の大砲が打ち込まれる。20人の魔法使いが火の魔法や氷の魔法を打ち込む。

「ギャアアアアアアー!」

 不意を突かれたサンマは焼きサンマに変わる。

「ポー!」

 団員たちは「全軍突撃!」とボスのサンマを倒した後に雑兵と戦う。

「ポー! ポー! ポー!」

 団員たちは目黒領を手に入れた。

「ポー!」

 その勢いのままに次の世田谷領に侵攻する。10名だけ目黒領の護衛のために残る。


「ポー!」

 団員たちは世田谷領に攻め込んだ。

「なんなんだ!? おまえたちは!?」

「敵襲!? 聞いてないよ!?」

 世田谷領主のエッグ兄弟は大軍勢の侵攻に殻がひび割れそうだった。

「ポー!」

「どこの軍隊だ!?」

「ポー!」

「ポー! ポー! うるさいんだよ!?」

 ポー騎士団の鉄の掟。それは掛け声が「ポー!」ということ。いつしか「ポー!」は悪魔の叫び声と言われるようになる。

「ポー!」

 全団員の総攻撃が始まる。弓、魔法、大砲を打ち込む。

「ポー!」

 次に歩兵、騎馬兵、重装兵、槍兵たちが世田谷城に攻め込む。ポー騎士団が世田谷城に攻め込んだ時には、エッグ兄弟は目玉焼きになっていて無惨な最後を迎えたという。

「ポー! ポー! ポー!」

 恐るべしポー騎士団の進撃は続く。

「ポー!」

 団員たちは「次は杉並領だ!」と勢いを増している。


「ポー!」

 団員たちが杉並城にたどり着いた時、杉並城は跡形もなく滅び去っていた。

「ポー!」

 なぜか杉並城にいた俺の妹は「遅かったな。もう4つの領土を私は手に入れたぞ。」と言っている。

「ポー!?」

 団員たちは驚く。カラクリはこうだ。団員たちは目黒から時計回りに、俺の妹は港領から新宿領、中野領、杉並領と圧倒的な攻撃力で制圧していったのである。

「ポー!」

 俺の妹は「さあ、次はどこの領土を手に入れようか?」と余裕な眼差しで団員たちを出迎える。

「ポー! ポー! ポー!」

 団員たちは頼もしい団長に狂喜乱舞する。

「ポー!」

 団員たちは「ポーちゃん! 最高! ポーちゃん! 万歳!」と大喜びである。

「ポー!」

 俺の妹は「私はこのまま一人で北方の練馬領を殲滅してくるから、みんなで敵と隣接している領土の防衛をよろしくね。」と言っている。もしかしたら俺の妹は短期決戦を狙っているのかもしれない。


「ポー!」

 俺の妹は練馬領の領主カマボコを倒し、魔王の悪政に苦しむ練馬民を救出する。規格外の攻撃力を見せる俺の妹に敵はいなかった。

「ポー!」

 俺の妹は「次は板橋領だ!」と言っている。


その頃、天界の俺。

「無茶苦茶だな。俺の妹は。」

 俺は妹の活躍にゲッソリしていた。

「仕方がないだろ。スタート地点でログインだけ4カ月もする他のプレイヤーがいなかったんだから。」

 師匠も呆れている。

「確かに考え方によっては、レベルだけスタート地点で上げて、隊員が増えまくってから話を進めるのは理にかなっている。圧倒的な攻撃力で敵に隣接しない領土を作ってしまえば、そこに兵士を置く必要はありませんからね。」

 師匠も俺の妹に絶賛の嵐だ。

「まさか!? そこまで考えてスタート地点で待機していたというのか!? 俺の妹はまだ小学一年生だぞ!?」

 俺も妹には手を焼いている。能ある鷹は爪を隠すというが、俺の妹の本性は隠しきれないかもしれない。才能が溢れ過ぎているのだ。


「ポー!」

 俺の妹は「板橋! 獲ったぞ!」と叫んでいる。「この調子なら北領に攻め込んでも問題はないな。」と次々と先を考えている。

「ポー!」

 その時、「ポーちゃん騎士団長!」俺の妹の元に団員が必死に駆けよってくる。

「ポー!」

 俺の妹は「どうした? そんなに慌てて?」と言っている。

「ポー!」

 団員は「実は目黒領が奪われました!」と言う。

「ポー!」

 俺の妹は「何!? それは本当か!?」と尋ねる。

「ポー!」

 団員は「はい!」と答える。

「ポー!」

 俺の妹は「どこのどいつだ!? 私の領土に攻め込んできた奴は!?」

「ポー!」

 団員「品川領主の王子様ホテルが攻めてきました!」

「ポー!」

 俺の妹は「なんだと!? 許さんぞ! マザコン領主の分際で! よくも私の領地に手を出してくれたな!」と激怒している。

「ポー!」

 俺の妹は「おまえはここに残り板橋領を守れ! 私は豊島領に向かい南下して品川領主を滅ぼしてやる!」

「ポー!」

 団員は「行ってらっしゃい!」と俺の妹に手を振る。


クエスト6

品川領主をぶっ飛ばせ!


「ポー!」

 俺の妹は「ついでに豊島領を手に入れたぞ!」なんかついでに豊島領主フクロウをぶった切りにした。

「ポー!」

 そして新宿領からやって来た守備兵たちに北方の板橋領も守るように命令を下した。

「ポー!」

 俺の妹は「次は文京領だ!」とただでは南下しないようだ。この時点で約半分の領土は俺の妹のものだ。


その頃、俺。

「師匠、なんか面白くなくなってきましたね。」

「そうだな。ここらへんでミッションを発動させるか。ぽちっとな。」

 正に逃走中。

「ポーちゃんは強すぎるから、魔王に指名手配される。それを交わすために髪を切り男として生きるのだ。」

「さすが師匠! 面白そうですね!」

「おまえ喜ぶよりも自分の妹の心配をしろよな。」

 こうして性別隠しが実装される。俺と師匠は博士と助手か? ドンドン! ピュウピュウ! パフパフ!


「ポーちゃんを捕まえろ! 懸賞金1億だ!」

 魔王は俺の妹を賞金首にした。

「ポー!」

 その間も俺の妹の快進撃は続いていた。

「ポー!」

 迫りくる賞金稼ぎたちを秘拳・親指隠しで壊滅。

「ポー!」

 千代田領のボスちよちよネズミを倒し、千代田領を平定。

「ポー!」

 そのまま港領を突き進む。

「ポー!」

 奪われた目黒領を奪取に成功。

「ポー!」

 俺の妹は「私の縄張りに手を出した者は許さない! 血祭りにしてやる! 舐めたらいかんぜよ!」と品川領に攻め込み品川領主を撃退し品川領も手に入れる。

「ポー!」

 俺の妹は「後方の憂いを無くしておくか!」と太田領に侵攻。無差別殺人を繰り返し太田領主をちょちょいのちょいと倒して太田領を手に入れた。

「ポー!」

 こうして俺の妹は東京国の西半分を手に入れたのであった。


その頃、俺。

「あれ? 師匠。俺の妹が男装した件や命を狙われているという話がないんですが?」

「おまえの妹は強すぎて正体を隠す必要がなかったみたいなんだ。」

「なんですと!?」

 正に正体を隠す必要がないを隠す。つまり隠すことがないことを隠しているという文学的に難しい美学である。


クエスト7

残りの東京領を手に入れろ。


「ポー!」

 俺の妹は気づいた。「私ばっかり戦っているから疲れるんだ。」と。俺の妹は力を隠すことにした。「だってつまらないんだもん。」と。

「ポー!」

 そこで俺の妹は「自国の兵士キャラクターを育てよう。」と育成マネジメントに乗り出すことにした。といってもチートな俺の妹以外のゴットカードのプレイヤーたちは普通にやっている。俺の妹が強すぎるのだ。

「ポー!」

 まだ占領していない東京国の領土は、江戸川、葛飾、足立、江東、墨田、荒川、北、台東、中央の9つ。我が領土と接しているのが、北、台東、中央の3つ。そのうち我が3領土と接しているのが北領か。

「ポー!」

 俺の妹は「今からおまえたちに名前を授ける。」と言っている。ゲーム内では好きな名前に変更できるとしておこう。俺の妹は各隊の隊長を呼びつけた。

「ポー!」

 しかし俺の妹は「考えるのが面倒臭いから、まず最初は権利問題に引っかからない。歴史の偉人の名前でいいや。」と言っている。芸能人の名前も権利問題に訴えられればなるので使えない。まあ、訴える奴もいないのだが。

「ポー!」

 俺の妹は「歩兵隊長は織田信長。騎馬隊隊長は羽柴秀吉。鉄砲隊隊長は松平元康。魔法使い隊長は伊達政宗。重装兵隊長は毛利元就。大砲隊隊長は石川啄木。あれ? 石川啄木は権利問題で引っかかるのかな? 分からないから島津義久に変更っと。」

各隊の隊長の名前を決めた。

「ポー!」

 俺の妹は「全軍! 総攻撃だ!」と言っている。

「ポー! ポー! ポー!」

 こうして各隊員たちは怒涛の勢いで敵領地に侵攻を始めた。


その頃、俺。

「失敗だな。」

「何が失敗何です? 師匠。」

「おまえの妹をチートな偶然を装って強くし過ぎたためにゴットカードのゲーム自体が面白くなくなってしまった。」

「確かに強すぎて白熱したバトルになりませんもんね。」

 絶対に勝てない相手と戦っても面白くない。

「ここでおまえの妹を下げて、各隊に敵地を攻めさすようにレベルを下げてみた。これなら正常に戦闘が機能するか見ものだ。」

「あの師匠。俺の妹でゲームをテストするのやめてもらえませんか?」

「そういうなよ。私はおまえの師匠なんだからな。」

「ならもっと師匠らしくして下さい。」

「アハッ!」

 笑って誤魔化す師匠。ドンドン! ピュウピュウ! パフパフ!


「ポー!」

 まず魔王の北領。俺の妹は板橋、豊島、文京の三方向から兵を出し同時に攻撃した。

「ポー!」

 もちろん敵領土と隣接している文京領を守る為に千代田領から敵の台東領に攻撃をしかけた。

「ポー!」

 同じように千代田領を守る為に港領から魔王の中央領に攻め込んだ。

「ポー!」

 俺の妹は「完璧な作戦だ! ワッハッハー!」と笑いが止まらない。さすがに領土の半分も支配してしまうと、そんあ巨大な支配者に歯向かえる敵もいない。

「ポー!」

 こうして俺の妹は北、台東、中央の3つの領土を手に入れた。どんでん返しが隠されているとも知らずに。


「ポー!」

 次の作戦に取り掛かる俺の妹。

「ポー!」

 中央から江東へ、台東から墨田へ侵攻すると。北が足立と荒川の2領からの攻撃に備えなければいけない。

「ポー!」

 しかし俺の妹は「私は秘密兵器を隠しているのだよ。フォッフォッフォ!」バルタン星人のように笑った。


「ポー!」

 俺の妹は「作戦開始! 本物の奇策を見せてやろう。」自信満々だった。

「ポー!」

 兵士たちから「足立制圧完了!」「江東も占拠しました!」「墨田! 駆逐完了です!」「荒川にアザラシが出現です!」随時、勝利報告が上がってきた。

「ポー!」

 あっという間に作戦対象領土を手にいれた。いったい何があったのだろうか?

「ポー!」

 俺の妹は「江東には太田と品川、港から海路を通って攻撃しろ。ついでに江戸川も攻撃していいぞ。」なんと自国の領土から水軍を投入していたのであった。

「ポー!」

 俺の妹は敵に隣接していないない陸地にミサイル基地を建設し、大砲を放つ原理で長距離弾道ミサイルを放ち魔王領の足立、荒川、墨田に打ち込んだ。

「ギャアアアアアアー!」

 不意を突かれた魔王軍はあっという間に壊滅。

「ポー!」

 そこを俺の妹の陸軍に攻められて陥落したのだった。

「ポー!」

 おまけに水軍が江戸川領にも奇襲をして制圧に成功。

「ポー!」

 俺の妹は「チャックメイトだ。」と勝ち誇っている。残る魔王領は葛飾区だけになった。


「爪が甘いな。」


 その時、魔王の声がする。

「ポー!?」

 能ある魔王は恐るべき魔力を隠していた。

「魔王奥義! ちゃぶ台返し!」

 なんと魔王は一瞬で俺の妹の領土を魔王領に変えていく。

「ポー!」

 俺の妹の領土は初期の渋谷領だけになってしまった。

「見たか! これが魔王の実力だ! ワッハッハー!」

 こうして領土も兵士も失った俺の妹。

「ポー!」

 俺の妹は「やられた!? この私が!? まさか魔王に奥の手を隠し持っていたなんて!?」とショックを受けていた。

「ポー!」

 俺の妹は「クソッ!」と余裕をこいて対策を立てていなかった自分自身を攻めた。

「ポー!」

 俺の妹は「いいだろう。やってやろうじゃないか。もう一度。いや、何度でも。私が勝つまで終わることがないことを教えてやる!」と何も無い所から再スタートすることを受け入れた。


その時、俺。

「これで最初からやり直せるね。アハッ!」

「ポー! がんばれ! 俺のカワイイ妹よ!」

「こいつ師匠の話を聞いていないな。」

 俺の頭は妹のことでいっぱいだった。

「チートな強い状態のスタートが悪かった。最初は面白いのだが、直ぐに飽きてしまうので第2話から誰も見ないな。もしもチートを面白いと思っている奴がいたら、そいつは少しづつ強くなり目的を達成するという楽しさを知らない残念な奴ということになるな。」

 苦難を乗り越えるのが全ての物語の醍醐味である。

「ポー! がんばれ! お兄ちゃんが見守っているぞ!」

「こいつ、私の話を聞いていないな。」

 俺に呆れる師匠であった。


「いいだろう。魔王、おまえの挑戦を受けてやろう。ただし交換条件だ。私も自分の言葉でしゃべらせてもらうぞ。」

 遂に俺の妹のポーが人間の言葉を覚えて喋るようになった。

「ゴットカードとはよく言ったものだ。まさに神の気まぐれが隠されている。まさか振り出しに戻るとはな。」

 確かに全て俺と師匠のきまぐれである。

「チッ。レベルが1に下がってやがる。さらにログインレベルアップも停止。ステータスポイントも廃止。要するに戦ってレベルを上げてねってことか。チートを防ぐのに精いっぱいだな。」

 こうしてオリジナルの新システムを捨てて、恥を忍んで従来のあロールプレイングゲームの様なシステムになった。

「まあ、それでも私の勝ちには変わらないがな。ワッハッハー!」

 余裕の漂う俺の妹。


「一から作ってやろう。まずは一日一回の無料ガチャを引いてやろう。小学一年生の私に課金ガチャを回すお金はないからな。」

 妹はガチャを引いた。

「ほ~へい!」

 ポーは歩兵を手に入れた。

「ていうか、歩兵ってなんだ? 私はどこかの国の兵長でもない。ということはこいつは兵士じゃない。剣士見習いかゴロツキで十分だ。」

 歩兵は剣士見習いに格下げされた。

「そ、そんな!?」

「おまえに人権は無い。恨むんならこんなカードゲームを思いついた奴を恨むんだな。」

 それはあなたのお兄さんです。

「おまえの名前はホーさんだと私のポーちゃんと被るからダメ。おまえの名前はへーさんだ。」

「嫌です。おならみたいな名前。」

「じゃあ、どんな名前がいいの?」

「ラグナロク! エクスカリバー! アルティメット! ギルガメッシュ! シュナイダー!」

「却下! もう誰かが使用済みで使えません。」

 定かではないが俺の妹はそれを許可しなかった。

「おまえの名前は鈴木だ!」

「鈴木!?」

「情けで下の名前だけは考える権利を与えてやろう。ただし決定権はおまえにはない!」

 俺の妹はスパルタ方式だった。

「こんな隊長は嫌だー!」

 鈴木剣士見習いの不幸は始まった。ドンドン! ピュウピュウ! パフパフ!

「よう、一郎。」

「誰が一郎だ!? 僕の名前は輝だ!」

 輝くと書いてヒカル。歩兵は良い名前をチョイスした。

「それでは一郎。レベル上げに向かうぞ。」

「輝ですってば!?」

 俺の妹は記念すべきお友達1号の話は聞かない。


「レベル1の私たちには何ができるか? 私たちには武器もない。」

「それは隊長が武器屋に寄って武器を買わないからでしょうが!?」

「そうだっけ? アハッ!」

 笑って誤魔化す俺の妹。

「お金は節約しないとね。それよりレベルアップが先よ。この始まりの街でレベルを100まで上げてやる!」

 さすが元レベル110までスタート地点の渋谷にいた俺の妹だ。最初の街でレベルを上げることの大切さを知っている。

「おお!? 隊長が燃えている!?」

「ストップ! その隊長と言う呼び方はやめてもらえるかしら。」

「では何と呼べばいいんですか?」

「ポーちゃん。」

 俺の妹は名前の呼ばれ方にこだわりが強い。

「ポー、ポー、ポー、ハトポッポ!?」

「違う!? 誰が鳩だ!? ポー、ポー、ポー、ポーちゃんよ!」

 特に鳩の件に関心はなかった。

「ギャアアアアアアー! アベシ!」

 俺の妹の秘拳・右フック親指隠しが鈴木の顔面に命中する。

「殺しはしない。貴重な私のお友達だからな。」

「し、し、死ぬ・・・・・・や、や、や、薬草を・・・・・・。」

 鈴木はピヨピヨ体力1で命をつないでいた。

「さあ、うるさいのも黙らせたし、ソロプレイでレベルを上げまくるとするか。」

 レベル1の俺の妹は秘拳を隠し持っている。


俺の妹 VS スライム


「スラスラ。」

 スライムが現れた。

「あんな雑魚、私の秘拳を使うまでもない。えい。」

 俺の妹は石を拾って投げつけた。

「ギャアアアアアアー!」

 投石が命中してスライムを倒した。

「楽勝よね。」

 俺の妹の知能は高校生の俺よりも賢い。

「えい。えい。えい。」

 俺の妹は4匹くらいスライムを倒した。

「ピンポンパンポン! レベルが2に上がりました!」

 俺の妹はレベルが2になった。ステータスポイント制度がなくなったのでステータスを上げるためにはレベルをあげるしかない。

「チッ。死にぞこないの鈴木もレベルが2に上がっている。通りでレベルが上がるのが遅いはずだ。こいつをお友達にする前にレベル上げに来ていればよかった。」

 悔しがる俺の妹。

「zzz。」

 レベルが上がり体力がフル回復した鈴木は気持ちの良い昼寝に突入した。

「ほい。ほい。ほい。」

 俺の妹はスライムに石を投げ続けて倒し経験値を得てレベルを上げていく。

 ポーちゃんレベル3


俺の妹 VS ゴブリン


「ゴブゴブ。」

 ゴブリンが現れた。

「えい。」

 俺の妹は石を投げつけた。

「ギャアアアアアアー!」

 石が命中してゴブリンを倒した。

「こいつもこれで良しと。まだまだ私のレベルも低いからな。危険を冒して接近戦をする必要はない。」

 用心深い俺の妹。

「えい、えい、えい。」

 ポーちゃんのレベル4。


俺の妹 VS ウルフ


「ウルウル。」

 ウルフが現れた。

「えい。」

 俺の妹は石を投げつけた。

「なに!? かわされただと!?」

「ウルウル!」

 ウルフは石を避けて俺の妹に突進してくる。

「キャア!? やられる!?」

「ウルー!」

 ウルフが俺の妹に牙をむきだして飛び掛かる。

「アター!」

 俺の妹の秘拳・右フックの親指隠しが炸裂してウルフを吹き飛ばす。

「私の拳が火を吹くぜ。いや~拳が武器だと安上がりで助かるわ。」

 俺の妹はウルフを倒した。

「たたたたたたたたたたったたたたたたたたたたたたたたたたたたー!」

 俺の妹は迫りくるウルフの群れをどつきまくる。

「ぽー!」

 俺の妹は「ポーちゃん秘拳・親指隠し連打!」と言っている。

「ウルー!?」

 ウルフの群れは一瞬で消え去った。

「ポー!」

 俺の妹のレベルが5に上がった。


「まだまだね。最低でもレベルが10になってから動かないと。」

 俺の妹は慎重だった。 

「どこかにレベル上げがしやすい経験値をたくさん持っている敵はいないかしら?」

 俺の妹は周囲を見渡しても始まりの街、渋谷には強いモンスターはいなかった。

「ダメだ。いない。こうなったら片っ端から倒しまくるしかない。」

 俺の妹は無差別殺モンスターを始めた。

「たたたたったたたたたたたたたたたたたたったたたたたたったあたあったたー!」

 俺の秘拳が雑魚モンスターに炸裂しまくる。

「あなたたちはもう死んでいる。」

 殺人拳を会得した俺の妹は一度は言ってみたかったセリフだという。

「ギャアアアアアアー!」

 雑魚モンスターたちは一瞬で砕け散った。 

「ポー!」

 ポーちゃんのレベルが6に上がった。


「まだまだだ。どこかに強い敵はいないのか?」

 俺の妹は考えた。

「そうだ。渋谷なら聖獣ハチ公がいるはず。だが、あいつを倒してしまうと渋谷の街を解放してしまう。私はどうすればいいのだ?」

 俺の妹はさらに考えた。

「そうだ。渋谷領主の渋谷王と渋谷大臣を倒してしまおう。それは問題がないはずだ。へっへっへ。」

 俺の妹は領主を倒して経験値を得ることを思いついた。


渋谷城。

「王様、勇者がやって来ましたよ!?」

「なに!? また我々を殺しに来たというのか!? 警備兵! 直ちに勇者を迎え撃つのだ! 絶対にしろの中に入れるな!」

「ははあ!」

 王様と大臣は一度ポーちゃんに倒されているので、俺の妹に恐怖している。

「面白い。私の歩みを止めることができるかな? これで経験値を一度に稼げるぞ。」

 俺の妹は渋谷城の前にいる警備兵100人に喜びを感じている。

「かかれ!」

 警備兵が幼気な小学生の女の子1人に全員で襲い掛かってくる。

「たたたたたたたたたたったたたたたたたたたたたたたたたたたたー!」

 俺の妹は秘拳を打ち込みまくる。

「あなたたちはもう死んでいる。」

 何事も無かったように渋谷城に進んで行く俺の妹。

「ギャアアアアアアー! アベシ!」

 警備兵は全滅した。

「ポー!」

 俺の妹のレベルが7に上がった。


「王様、大臣、久しぶりだな。」

「ヒイイイイイイー!? 勇者!?」

 俺の妹は王様と大臣の元に現れた。

「どうか命だけはお助け下さい!」

「よく言うな。入り口で私を殺そうとしたくせに。それにおまえたちはもう死んでいる。」

「え?」

 王様と大臣が気づかない間に俺の妹は秘拳を何発も打ち込んでいたのだった。

「ギャアアアアアアー! アベシ!」

 俺の妹は王様と大臣を倒した。

「ポー!」

 ポーちゃんのレベルが7に上がった。


「私は新しく渋谷王になったポーちゃんだ。」

 俺の妹は領主を倒し自分が領主になった。渋谷領の人口は20万人。その領民から税金をむしり取り資金を確保し、資金を運用して食料を確保する。

「そうか。呑気に寝ている鈴木は武将で、領民の中から数人が兵士として戦闘してくれるのか。そうしよう。」

 まさに俺の妹である。

「では兵士も手に入れたし他領を攻めるか? 東京国の23領土といった感じか?」

 どんどん領土設定が完成していく。

「東京国23領の人口は約900万人。領土の大きさにもよるのだろうけど。」

 俺の妹は各領の人口のランキングを見る。


世田谷90万人。

練馬、太田、江戸川70万人。

足立60万人。

杉並、板橋、江東50万人。

葛飾、品川40万人。

北、新宿、中野30万人。

豊島、目黒、墨田、港、渋谷、文京、荒川、台東20万人。 

中央10万人。

千代田5万人。


「私の渋谷領は稀少価値は高い方だな。人口が多ければ税金が多く入るが領民を食べさせるだけの食料がいる。逆に人口が少なくても多額のお金が入ってくるなら領民の生活も安泰だ。」

 俺の妹は作戦を練る。

「中に攻め込んで四方八方から敵に囲まれるのは困る。今だって渋谷領は6つの敵領土と隣接しているからな。」

 渋谷の周りは敵だらけだった。どこかに攻め込めば空になった渋谷領に敵が押しかけてくるだろう。

「んん? まてよ!?」

 俺の妹は何かに気がついた。

「そうだ。別にこちらから攻め込む必要はない。相手が攻め込んで来たら罠に引っ掛けて倒せばいいんだ。」

 俺の妹は防衛を強化することにした。


「求む! 義勇兵!」

 俺の妹は領土の平民から兵士を募ることにした。

「月給30万円。」

 給料は領民の税金から払います。

「兵士になります!」

「俺もだ!」

「私も!」

 不景気で仕事もないのでたくさんの領民が応募してきた。

「zzz。」

 鈴木は未だに眠っていた。

「まったく、この忙しい時に。」

 戦力にならないので鈴木を放置する俺の妹。


「ありがとう! 義勇兵に参加してくれて嬉しく思う!」

 俺の妹の兵士は2万人になった。思ったよりも希望者が多かった。これも月給30万円の効果のおかげだろう。

「おお!」

 高給に義勇兵の士気も高い。

「それでは早速、軍事訓練を行う! みんな、落とし穴を掘れ。」

「え!? 落とし穴!?」

 俺の妹の命令は落とし穴を掘れという指示が出された。

「そうだ。人口の少ない我が領土では他国を攻めることはリスクが高い。だから自領が強くなるまでは防衛に力を入れる。そのための落とし穴だ。みんなで掘るぞ!」

「エッサ! ホイサ!」

 俺の妹と2万の渋谷領の兵士は土地に穴を掘り始めた。

「おお!」

 こうして渋谷領は落とし穴だらけになった。

「ポー!」

 特に戦闘はしていないが穴掘りで俺の妹のレベルが8に上がった。


「おかしいな? 誰も攻めてこない。」

 俺の妹の領土に誰も攻めてこなかった。

「そうか! どこの国も攻め込んで本国が空っぽになって他国に攻められるのが嫌なんだ。」

 自分が思うことは他人も思うものである。

「そうか、そうか。どこの領主も好戦的ではないのだな。それならこちらから攻め込むまでだ。」

 俺の妹は作戦を変えた。

「中はダメだから、杉並か世田谷だな。より近い世田谷にしよう。」

 俺の妹は第一目標を世田谷にした。

「鈴木、後は任せたぞ。」

「zzz。」

 しかし鈴木は眠ったままだった。

「全軍! 世田谷に突撃!」

「おお!」

 2万の渋谷軍が9万の世田谷領に攻め込んだ。


 世田谷城。

「なに!? 渋谷軍が攻めてきただと!? 正気か!? 本領土を空っぽにしたら敵に攻められるぞ!? それに兵力はうちの方が4倍以上多いんだぞ!? なぜうちに攻めて来るんだ!?」

 世田谷領主所ショージは不可解な渋谷軍の登場に驚いた。

「渋谷が空っぽだと!? チャンス! 渋谷領に攻め込め!」

 渋谷領に隣接する港、新宿、目黒、杉並、中野の5区が渋谷軍の世田谷侵攻を知り、空き家になった渋谷領に攻め込んだ。


その頃、俺。

「師匠、こんな展開でいいんですかね?」

 神人の俺は妹を心配した。

「おい、おまえの妹だろ。お兄ちゃんが信じてやらないでどうするんだ。」

「それはそうですが・・・・・・。」

 不安そうな俺。

「さあ、ラーメンも食べたし歯でも磨くか。」

 自堕落でマイペースな師匠であった。


「世田谷区といっても面積が広い。成城、下北沢、三軒茶屋、二子玉川など重要拠点が点在している。うちの渋谷区とは違って9万の兵士を1か所に集中させることはできない。だから他の兵士が援軍で来る前に手薄な世田谷城を殲滅するのさ!」

 正に桶狭間で織田信長が今川義元に行った奇襲作戦と同じである。

「かかれ! 行こう! バスティーユ!」

「おお!」

 俺の妹の作戦の説明に渋谷軍の士気が高まる。池尻大橋、三軒茶屋の世田谷兵を蹴散らせてあっという間に世田谷城を包囲した。

「まだか!? まだなのか!? 援軍は!?」

 世田谷領主は包囲されて焦っていた。

「表に出ろ。」

 世田谷城に俺の妹が乗り込んできた。

「何者だ!? おまえは!?」

「夢と希望の救世主! 佐藤ポーちゃんだ! おまえみたいな外道に明日はない!」

 さすが俺のカワイイ妹だ。

「何がポーちゃんだ!? 子供はお昼寝の時間だろうが!?」

「大丈夫。私はハイブリッド型のお子様です。」

 俺の妹は良く出来た妹なのだ。

「いいのか!? おまえが世田谷にいる間に渋谷領は他の領主に攻められるぞ!」

 確かに他の5つの隣国に攻められている俺の妹の領土。

「ご心配ご無用。備えあれば患いなしってね。」

 どこか俺の妹には余裕があった。


その頃、渋谷領。

「ギャアアアアアアー!」

 5つの軍勢は落とし穴に阻まれて渋谷城にたどり着くことができなかった。

「いったい誰だ!? スクランブル交差点に落とし穴を掘った奴は!?」

 港軍2万、新宿軍3万、中野軍3万、目黒軍2万、杉並軍5万が俺の妹が彫りまくった落とし穴に道を阻まれて進軍ができなかった。

「誰だ!? こんな所に落とし穴を隠していたのは!?」

 能ある俺の妹は落とし穴を隠す。


再び世田谷城。

「落とし穴だと!? ふざけるな!?」

「ふざけてないよ。本当だもの。私が世田谷に攻め込んだのも他の5領主を騙して渋谷領に攻め込んでもらうためだったのだ。」

 俺の妹は恐ろしい策士ならぬ詐欺師であった。

「Uターンして空になった5国をもらい受けるつもりだったが、守備が手薄だったので世田谷も手に入るとは私は運がついている。」

「そうやすやすと世世田谷が手に入ると思うなよ! やらせはせんぞ! やらせは!」

 俺の妹に立ち塞がる世田谷領主。

「あなたはもう死んでいる。」

「なんだと? ギャアアアアアアー! アベシ!?」

 世田谷領主は知らない間に俺の妹の秘拳・右フック親指隠しを食らっていたのだ。

「これで2つ目! 次の杉並領に向かうぞ!」

 俺の妹は世田谷領をてにれた。そして渋谷領を攻めに行き空っぽになっている杉並領に向かう。

「きゅ、救世主様だ!」

「俺たちは自由を手に入れたんだ!」

 世田谷領民は世田谷領主の悪政に苦しんでいたので俺の妹が領主を倒してくれて解放された。

「ポー!」

 ここにポーちゃん救世主伝説が始まる。

「ポー!」

 この時、俺の妹は落とし穴で敵を大量に倒したので一気にレベルが15まで上がっていた。


「ポー!」

 俺の妹は空っぽの杉並領に攻め込み制圧する。

「ポー!」

 俺の妹は空っぽの中野領に攻め込み制圧する。

「ポー!」

 俺の妹は空っぽの新宿領に攻め込み制圧する。

「ポー!」

 俺の妹は空っぽの港領に攻め込み制圧する。

「ポー!」

 俺の妹は空っぽの目黒領に攻め込み制圧する。

「これで領土は7領。私は人口170万の大領主だ。兵力も17万。もう天下は私の物じゃないか。ワッハッハー!」

 高々に笑う俺の妹。


その頃、俺。

「落とし穴!? なんちゅう戦い方をしているんだ!? 俺のカワイイ妹は天才だ!」

 自分の妹の活躍にうっとりする俺。

「でた!? 兄バカ!?」

 師匠は俺を気持ち悪そうな目で見るのであった。

「兄バカで流行語大賞が取れますかね?」

「そんなこと知るか。神のみぞ知るだ。」

「え!? 俺、神ですけど分かりません!?」

 そういえば最近出番が少なくなったが俺は神なのだ。


「さあ、次はどこの領土を手に入れようか?」

 不敵に笑う俺のカワイイ妹なのだ。既に7つの領土を手に入れて、痛くもかゆくもない優位性を手に入れている。

「特に他領と隣接している港と新宿は落とし穴を掘りまくらせよう。」

 防衛=落とし穴が美学な俺の妹。

「練馬領には杉並と中野の2領から兵を送ろう。7万と8万なら互角の戦いができるだろう。数的優位だ。」

 練馬兵7万と杉並兵5万と中野兵3万である。

「南部の太田領を世田谷と目黒の兵で叩くか? 嫌、そうなると品川が目黒を襲うかもしれない。どうしたものか?」

 少し考え込む俺の妹。

「そうだ! 目黒にも落とし穴を掘りまくって、それから太田領に世田谷と同時に攻め込ませよう。もし品川軍が目黒を手薄とみて攻めてくれば落とし穴に落とせる! 我ながら完璧な作戦だ! ワッハッハー!」

 自分の才能に酔いしれる俺の妹だった。

「ポー!」

「ポー! ポー! ポー!」

 こうして俺の妹の北伐と南部の侵略が始まった。

「ポー!」

 この頃にはポーちゃんのレベルは20まで上がっていた。


北部

「ポー!」

 相変わらず俺の妹の軍の掛け声は「ポー!」だった。

「ポー!」

 まず数的有利を生かし東京国練馬領を制圧。

「ポー!」

 その勢いのまま15万の兵で板橋領に攻め込み陥落。

「参りました。」

 豊島領の領主が無条件降伏で投降してきた。

「ポー!」

 俺の妹は労せず東京国の北西を支配した。


中部

「ポー!」

 中央では文京軍が攻め込んできた。

「ウワアアアアアー!? 落とし穴だ!?」

 しかし新宿領に堀に掘りまくった落とし穴に2万の兵士が落ちまくる。

「ポー!」

 そこに素直埋めて生き埋めの計が成功。

「ポー!」

 そして新宿領の兵士で文京領を制圧。

「ギャアアアアアアー!」

 領主を打ち首の計にした。

「ポ?」

 しかし隣接する千代田軍は攻め込んでは来なかった。千代田領は王族が蔓延っているだけの高貴な土地であり、兵力も5000しかいなかった。


南部

「ポー!」

 世田谷兵と目黒兵が太田領に攻め込んだ。

「目黒に攻め込め!」

 品川軍が目黒領に攻め込む。

「ギャアアアアアアー! 落とし穴だ!?」

 見事に目黒領に仕掛けてあった落とし穴に落ちていく品川軍。

「ポー!」

 千代田軍は怖くないので港領からも兵を出し、品川を攻略。

「ポー!」

 これで俺の妹は太田と品川の2つの領土を手にいれて東京国の西半分を制圧した。

「ポー!」

 俺の妹は13区を手中に収めたのだ。


その頃、俺。

「カワイイ! やっぱり俺の妹は最高だな。」

「そうか? 省略されるとログは「ポー」しか言っていないんだが。」

 俺の師匠は細かかった。

「師匠、そんなに細かいと男性にモテませんよ?」

「別にいいよ。だって私は死んでいるもの。アハッ!」

 天界にいる者はみんな死んでいる死人なのだ。

「それにしても、これでは展開や進行だけで心にグッとくるようなエピソードが入ってこないな?」

「キャラクター重視ではなく、制圧がメインですからね。」

 確かに史実的であり、共感的ではない。

「やはりここいらで方向転換か?」

「またですか!? 師匠!?」

「三国志重視ではなく、武将重視にしよう。」

 悲劇は繰り返される。

「おまえの妹も皇帝ではなく、水戸黄門にしよう。司令官という立場で王座に座っているだけでなく、水戸黄門のように23区を旅して悪代官を倒し、人々を解放するんだ。」

「王族の身分を隠すというやつですね。」

 定番の隠すである。

「オチは悪代官を落とし穴に落とし倒せばいいじゃないか。」

「さすが師匠! それでいきましょう。」

 ということらしい。


二日目の渋谷城

「起きろ! 鈴木! 朝だぞ!」

 俺の妹は一日寝ていた鈴木を起こす。

「フア~、よく寝た。はあ!? そいつは誰ですか!?」

 鈴木の目の前に見知らぬ男がいた。

「こいつは高橋だ。二日目の無料ガチャ一日1回で手に入れた武将だ。」

「よろしくお願いします。先輩。」

「おお!? こちらこそ!?」

 先輩面する鈴木。

「私のお兄ちゃんの方針で? いや、違った。神様の方針で、ここからはキャラクター重視でストーリーが展開されるらしい。」

「なんですか!? その適当な展開は!?」

「少しずつゲームの重み、内容を濃くしているのだ。文句を言うなら私の秘拳をお見舞いするぞ?」

「恐れ入りました。ポーちゃん様に従いますからお許しください。」

「分かればいい。分かれば。」

「ははあ!」

 俺の妹にひれ伏す鈴木。

「先輩って面白い人ですね。アハッ!」

 高橋は鈴木を見下していた。

「やはり私も領土も23区を当てはめたのに、領主が名前がないのはダメだろうとは感じていた。実装するためには大ナタを振るわなければいけないとは感じていたんだ。」

「さすがポーちゃん。我が軍の大将だ。」

「悪いが今の私は皇帝だ。女皇帝ポーちゃんだ。」

「ええ~!? いつの間にこんなに領土を制圧したんですじゃ!? あんた、ナポレオンか何かですか!?」

「おまえが寝ている間だよ。高橋、こんなサボりに敬語を使う必要はないぞ。おまえの方が後生まれだが先輩だ。」

「分かりました。ポーちゃん皇帝。」

 高橋は俺の妹には忠誠を誓い。

「おい、鈴木。今からおまえが後輩だ。」

「ええ~!?」

 鈴木は年功序列から実力主義で窓際に追いやれたリストラ対象の武将になった。

「いじめまくってやるぜ! ジュース買ってこい! ポテチを買ってこい! 牛丼もだ! 全ておまえの自腹だからな!」

「そ、そんな!?」

 高橋は鈴木をいじめまくった。

「高橋。」

「はい! ポーちゃん皇帝。」

「次はどこの領土を攻めればいいと思う?」

「全てはポーちゃん皇帝の思うままに。ハエハエ~。」

 高橋は俺の妹には表の笑った優しい顔をして、裏の顔で鈴木をいじめたり暴力を振るっていた。つまり高橋は最低な人間だった。俺の妹はまだ小学生なので人を見る目がなかった。

「クスン。」

 この時は突然だったので鈴木は泣くしかできなかった。


再び俺。

「師匠!? こんな高橋みたいなクズを登場させていいんですか? PTAから苦情が来ますよ!?」

「いいんだ。幼気な子供たちに悪い奴もいるんだよと教えてあげないといけないからな。」

「でも、そのまま悪に看過されて悪の道に進む子供が出てきちゃいますよ。」

「そうなの?」

「そうですよ。チャラければジャニースとか、ヤンキーならエクサイルとかに悪い子は憧れちゃいますよ。」

「おお! 悪の組織ができた。ラッキー!」

「それならAKBBとグッとナイト娘とかおワンコ倶楽部とか悪の組織ですね。」

「それも頂き。ワッハッハー!」

 今時のアイドルも悪の組織に変換する。これがハイブリッド型の転換物語である。

「こうやって考えると何でもできるな。」

「そうですね。こんど攻め込む領主の名前は田中にしましょう。名字ランキングがある限り名前には困りませんからね。」

「つまり、そういうこと。アハッ!」

 ドンドン! ピュウピュウ! パフパフ!


「私たちはお兄ちゃんの・・・・・・いや、神の手の平の上で踊らされているのか!?」

 俺の妹は感が良かった。まさにニュータイプ。

「まさか!? 最後の敵は魔王ではなく、神人になったお兄ちゃん!? 兄弟の運命的な再会からの真相を知り、兄と妹が命を削り合う最終決戦という訳ね!?」

「ポーちゃん皇帝!? 心の声が漏れてますよ。それからこれを。」

「これは何?」

 高橋は俺の妹に紙を1枚渡す。

「鈴木の脱退願いです。」

「なんですって!?」

「私は止めたんですが、国のおふくろさんが病気で介護するんだって去って行きました。」

(本当は俺が無理やり書かせたのさ。ワッハッハー!)

 高橋は悪い男であった。抵抗する鈴木を抑え込んで母音を押させたのである。

「やったー! これでただ飯食いがいなくなった! わ~い!」

 実は俺の妹も働かない鈴木は必要ないと思っていた。

(こんな小学生が皇帝だと? ふざけるな。ポーちゃん皇帝が23区を支配したら、後ろから刺殺して俺が東京国の国王になるのだ! ワッハッハー!)

 高橋は俺の妹を殺すつもりだった。

「そうはさせるか! 俺がおまえの正体を暴いてやる! ポーちゃんは俺が守る!」

 半死の状態で捨てられた鈴木は俺の妹を守ることを誓った。


再び俺。

「鈴木、いい奴だな! 私は感動したよ!」

 師匠は鈴木の忠誠心に感動していた。

「ええ~!? 俺の妹に手を出そうだなんて、鈴木も高橋も死罪ですよ! ロリコン反対! ロリコン! この世から消えろ!」

 俺は妹ラブだった。

「出た。兄バカ。」

 兄バカ。流行語大賞の候補にならんだろうか?

「それにしても展開やストーリー重視にするのと、キャラクター重視にするのと作品の内容が180度変わってきましたね。」

「そうだな。やはり洛陽を手に入れましたというだけでなく、洛陽を手に入れるためには物語がある。その物語を書けば登場人物もいて、読み手や視聴者が共感しやすい、分かりやすい人間の良し悪しの生き方というものが描かれる。そこで共感してもられば、面白ければ指示してもらえるだろう。」

「そうですね。編集者も隠しコネ出版以外は、そういうまともな作品を本やアニメにしたいはずですからね。」

「最近の日本のアニメもドラマも人を殺し過ぎだな。きっと編集者や政策監督の心が止んでいるんだろう。」

「お笑い芸人も本人は良くても、テレビに出て良いレベルかといえば強い芸能事務所の力が無ければ出ない方が子供たちの心が汚れなくてもいいですもんね。」

「だからテレビを見ない人間が増える。悪い者を見せるなと言いたい。」

 何だか朝まで生討論のようになってきたので終えよう。ドンドン! ピュウピュウ! パフパフ!


渋谷城。

「ポーちゃん皇帝。」

「なんだ?」

「千代田領の田中天皇から使者が参っております。」

「なに!? 田中天皇から!? 失礼のないようにお通しなさい。」

「はあ。」

 遂に朝廷の田中天皇から使者がきた。

「天皇のお言葉を伝えます。「私の家来になれ。」「余は天皇であるぞ。」と言っています。東京国の庶民は天皇に従ってもらいましょうか。ケッケッケ!」

 田中天皇の使者は悪魔みたいな偉そうな奴だった。

「分かりました。いいでしょう。それでは天皇様に下僕になると挨拶にお伺いしましょう。」

 俺の妹は幽閉同然に千代田領に連れていかれることになった。

「キャッハッハ! そうか! 渋谷領主が我が軍門に降ったか! 天皇の名前は偉大だな! 誰も天皇という立場には歯向かえないのだ! キャッハッハ!」

 千代田領の皇居では田中天皇がほくそ笑んでいた。


その頃、俺。

「つまらん!」

 師匠は飽きていた。

「天皇が悪いのか、領土を半分も平定してしまうと、もうライバルがいない。」

「それを解決したのが三国志ですよね。他にライバルを2国も作って最後の最後まで他の2国を滅ぼさせなかった。」

「ダラダラ続ける方法だな。一進一退の攻防戦ばかり。」

「あれはなんで最後終わったんですかね?」

「人だよ。人。有能な武将が歳には勝てずに次々と死んでいった。蜀も孔明が死んだら滅びた。平和ボケでもあるな。戦える人間がいなかった。」

「皮肉ですね。天下を統一したら築いた国が滅びるなんて。」

「物語は、それの繰り返しだ。」

「大切なのは最初から3国を作ることを考えていたかどうかだ。できるまでと、出来てからの睨みあいが全てだからな。潰れる時は早かった。」

 やはり、出来るまでが面白いのだ。この話で三国志にするのは既に無理がある。

「もう今回も無理ですね。」

「なぜだ?」

「え?」

「鈴木がいるじゃないか! 鈴木が!」

「鈴木!?」

「奴が1国を作ればいいのだよ。」

「そんな無茶苦茶な!?」

「それに高橋がいるじゃないか。高橋が!」

「ええ~!? 高橋!?」

「謀反を働いて野心ガンガンで、おまえの妹を殺そうとするんだ。」

「俺の妹を暗殺の危機に陥れないで下さい!」

「西東京、北東、南東で3つに分ければ三国の完成だ。アハッ!」

 なんと登場人物が3人で3人とも国を建国すれば、東京23区で三国志が成立する。

「ダメです! 俺のカワイイ妹を危険にさらすなんて! 却下です!」

「ええ~!? また最初からやり直すの?」

「はい! カワイイ妹のためなら!」

 俺は妹を隠すために、新たに三国志ならぬ東京23領というカードゲームを始める。え? 既にカードゲーム的要素が無い? それは俺も困っている。だが今回の収穫はキャラクター数を増やせば物語の幅が広がるということである。仮にアンパンマンでキャラクター違いで内容は同じ15分アニメもバカにはできない。あれはアニメクリエイターの技術ということにしておこう。


 神人秘技! 妹隠し!


「ポー!」

 こうして俺のカワイイ妹は3度目のスタート地点に立たされる。


再び俺。

「今回は23区にちなんで、23人の領主を登場させることにした。アハッ!」

「ええ~!? いきなり23にんですか!?」

「こら。ステーキみたいにいうな。ステーキみないに。」

「すいません。いきなりだったので。」

 いきなりな話は置いておいて。

「恐らく一人の領主について3000字書いただけでも今回の5万字は終わるぞ。」

「さすが師匠! めでたいですね。」

「お題があると書きやすいな。さっさと20万字を終えて、ゆっくり昼寝がしたい。」

「全くです。」

 神人と天人の願いなどくだらないものであった。


その頃、妹

「まず名前を決めてください。」

 コンピューターが声をかけてくる。

「ポーちゃん。」

 素直に俺のカワイイ妹は答える。

「次に領土を選択してください。」

「渋谷領。」

 これで初期設定は終了だ。

「それではゲームを開始します。」

「ポー!」

 こうして3度目のゴットカードゲームが始まった。


「ポ?」

 俺の妹は渋谷の大地に降り立った。

「ゴットカード3? 私の物語は竜クエ3か?」

 展開の速さに戸惑う俺の妹。

「今回の部隊は東京23区ですって、今までと同じじゃないか?」

 いえいえ違います。

「今回は初めて23区分の領主が実装されました!」

「なにー!? 今まで領主すらいなかったのか!? そういえば会ってない領主が多かったような?」

 俺の妹は大切な所に気がついた。名字が多い順ランキングで23人も使用したことがかつてあっただろうか? それだけでも壮大な物語である。23人分のエピソードを考えるのも大変である。

「それでは恒例の1日1回無料ガチャを引かせてもらおうか。」

 俺の妹はガチャを引く。

「剣士見習い。」

 兵士以下の剣士見習いがお友達になった。

「我が領主よ。何なりとお申し付けください。」

 剣士見習いは礼儀正しかった。

「いいだろう。それではおまえに私の初めての命令を命じる。」

 領主になった俺の妹が初命令を言う。

「ポーちゃん。」

「はい?」

「ポーちゃんと私のことは呼びなさい!」

 鮮烈に言い放つ小学生の俺のカッコイイ妹。

「しかし、領主のことをポーちゃんと呼ぶだなんて!?」

 呼び方に抵抗がある剣士見習い。

「呼ばないと死刑よ!」

 小学生とはいえ領主の命令は絶対であった。

「ポーちゃん。」

「はい! やればできるじゃない! アハッ!」

 俺の妹は剣士見習いを気に入った。

「そうだ。おまえに名前をやろう。」

「名前ですか? 私は剣士見習いに過ぎません。名前など勿体ない。」

「これから強くなれば問題ない。」

「な!? なんと!? 勿体ないお言葉。」

(懐の大きな領主様だ!?)

 剣士見習いは俺の妹に感服した。

「お前の名前は築だ。」

「築? 名前の由来は何ですか?」

「私の死んだ兄の名前だ。」

 そう神人になった俺は死んで神になったのだ。まあ、俺を殺したのも妹なのだが。

「おまえの忠義に期待しているぞ。」

「ははあ! この命に変えましてもりょう・・・・・・ポーちゃん様をお守りいたします!」

「気軽に命に変えてなど言うな。私はその言葉は嫌いだ。私のことを守るのであれば生きていなければな。ニコッ!」

 ここに新たな主従関係が生まれた。


その頃、俺。

「許さんぞ! あの女たらしめ! 俺の妹に手を出す奴は魔王だろうが冥王だろうが許さねえ! ギタギタのボコボコにしてやる! ウオオー!」

 俺は天界で暴れていた。

「でも良かったじゃないか。おまえの大好きな妹が死んだお兄ちゃんのことを思っていてくれて。」

「はい! 兄として嬉しです! しかし未成年の妹に近づく男は八つ裂きにしてやります! 兄として妹の貞操は守ってみせます!」

 俺は剣士見習いを神の力で殺そうと思っていた。

「おまえが剣士見習いの体をのっとって妹を助けてやればいいんじゃないか?」

「そうか! その手があったか! さすが師匠! ありがとうございます!」

 俺は水を得た魚のように燥ぐ。

「憎たらしいあいつの体を使って妹を助けるんだ! それでは行ってきます! 師匠!」

 俺は天界から剣士見習いの体目掛けて舞い降りる。

「せっかちな奴だ。ニコッ!」

 師匠は俺の背中を見て笑った。

「そうだ。明日の無料ガチャで私も人間界に行けばいいんだ。そうと決まったらおやつを買いに行かなくっちゃ。アハッ!」

 師匠はいつでも幸せな人だった。


「生き返ったど!」

 正確には俺は剣士見習いの体を拝借した。

「なんだ? 騒がしい奴だな。」

 俺の妹が現れた。

「おお! ポーちゃん! 久しぶり!」

「さっき会ったばかりなんだがな。」

「え? ああ~、そうでしたね。あははははっ。」

(久しぶりだな。俺のカワイイ妹よ!)

 俺は妹が大好きな兄バカであった。

「これよりレベルではなく、23領同時進行のリアルタイムバトルの作戦会議を行う。」

「はい! ポーちゃん!」

 レベルを上げて強くなるという概念が崩壊したとしておこう。リアルタイムで23領で戦うのだ。


「それでは作戦会議を行う。まずは自国の領土の確認からだ。」

「はい。渋谷領は役人口は20万人。兵士は一割の2万人。田んぼはないので自給自足は基本的に無理。どちらかというと観光・商業都市なので資金の方が集まりやすいです。そこから税金を領民から吸い取り、私腹を肥やすもよし、食料や武器を買うのも自由です。」

 ジッと妹が俺を見てくる。

「おまえ、さっきまでとキャラが変わったな?」

「ポーちゃんに合わせてるんですよ。だってポーちゃん可愛いから。アハッ!」

「私はロリコンは嫌いだ。」

「ええ~!? どうしてですか!? こんなにポーちゃんを愛しているのに!?」

「死んだ兄を思い出すんだ。」

 遠くを見つめる俺の妹。

「悲しくて辛くなるんですね。クスン。」

「違う。ロリコンで気持ち悪かったんだ。だから私が秘拳・右フック親指隠しで仕留めたんだ。死んでくれて清々するわ。」

(ガーン!? 俺はカワイイ妹に嫌われていたのか!?)

 俺は初めて自分の死の真相を知る。

「ポーちゃん! カワイイ!」

 それでも俺の妹ラブは収まることはなかった。

「兄バカだな~。ヤレヤレだぜ。」

 と天界の師匠が嘆いている声が聞こえてくる。ドンドン! ピュウピュウ! パフパフ!


「次に隣国の調査だ。我が渋谷領は6つの領地と接しているので不用意には動けない土地となっている。」

 渋谷領は新宿、港、目黒、中野、杉並、世田谷の6つの領地と接している。

「やはり大切なのは守りを固めて落とし穴を掘ることだ。それしかない。」

 戦略上手な俺の妹であった。

「では私が近隣の6つの区を偵察してきましょう。その間に2万の兵士で落とし穴を掘りまくってください。」

「いいのか? 偵察は命がけの任務だぞ。」

「ポーちゃんのためなら何でもやります! やらせてください!」

 俺の妹ラブは変わらない。

「それでは一番近くの目黒領から行ってきます。」

「頼んだぞ。」

 こうして俺は偵察のために目黒領に偵察にでかけた。

「ポーちゃんのためならエンヤコラサッサ!」

 神人である俺にとって偵察など造作もない。なんなら領土を破壊できるだけの神々しい攻撃力があるのだ。

 

その頃、目黒領。

「こんにちは! 領主の鈴木です! アハッ!」

 目黒領主の鈴木。目黒領は人口20万人。兵力も2万人と渋谷領と同じ。目黒領は渋谷、品川、太田、世田谷の4つの領土に隣接している。

「私のような弱小国には生きる道は同盟しかない! どこか同盟してくれそうな同じくらい弱い領土はないかな。」

 世田谷領90万、太田領70万、品川40万、渋谷20万人。

「対等同盟をしてくれそうなのは渋谷領だけか。だがそれでも同盟が成功すれば40万で品川領とも戦える。何とか渋谷領主と同盟の会談をせねば。」

 目黒領主の鈴木は渋谷領に友好的な感情を持っていた。


「俺のカワイイ妹と対等同盟だと!? 許さん! 許さんぞ! 目黒領主! 鈴木め! 神の怒りを知れ!」


 目黒領主の鈴木は俺の妹を軽んじた「カワイイ妹侮辱罪」を犯した。

「ゴット・サンダー!」

 俺の怒りは雷鳴を響かせ雷になり稲妻が目黒領に降り注ぐ。

「ギャアアアアアアー!」

 目黒領主の鈴木は真っ黒な焼き鈴木になる。

「俺の妹をバカにした罪だ。反省しろ。反省。」

 俺は神人なのでなんでもできるのだ。全て俺の思うがままだ。


 その後。

「それでは渋谷領と目黒領の同盟成立会見を行います。」

 天災に苛まれた目黒領には、世田谷、太田、品川の大国からも同盟要請があった。しかし実質的には目黒領ののっとりであった。

「私と同盟しませんか?」

 そんな鈴木が困っている時に救いの手を差し伸べたのが俺のカワイイ妹だった。

「いいんですか? うちは今、雷がたくさん降った天災の性で力が弱っているというのに!?」

「いいんです。私は細かいことは気にしませんから。アハッ!」

「ありがとうございます! このご恩は一生忘れません!」

 こうして俺の妹と鈴木はお友達になった。

「ポー!」

 俺の妹の領地は2領になった。俺のカワイイ妹が東京23領を支配するまで後21領。


で、問題はここからである。

リアルタイムである以上他の23領の領主にも1日目があるのだ。端からこなしていこう。


「何!? 目黒で天災!? チャンスだ! 直ぐに我が軍門に降るように脅迫しろ!」

 太田領は人口70万の兵力7万の裕福な国。

「領民からもっと税金を取れ! 空飛ぶ車を作るのだ!」

 しかし悪政を行う太田領主の高橋のために太田領民は苦しめられていた。


「何!? 目黒で天災!? 領土拡大の好機だ! 直ぐに目黒領主に傘下になるように書状を出せ!」

 品川領主の田中も大して変わらなかった。

「クソッ! どうして国の強さが人口なんだ!? もっと地価とか技術、都市力とかにしてくれ! なんで世田谷や足立に負けるんだよ!?」

 田中は現在のゴットカードのゲームが人口で雇える兵士数の上限があることに不満だった。


「目黒など踏み潰してくれるわ! ワッハッハー!」

 そして最強の領土、世田谷。

「どこも小粒だな。我が最強の9万の軍勢にかなう訳がない! 天下は私のものだ! ワッハッハー!」

 ゲーム開始時点で9万の兵力を有する世田谷領主の伊藤は天下人に一番近い存在だと言われていた。

「いけません! 我が世田谷は7万の太田と5万の杉並に隣接しているのです。本領の世田谷を空っぽにする訳にはいけません。」

 忠言する立派な家臣。

「なら3万だ。3万の兵で目黒を制圧してくれるわ。したくせよ!」

 世田谷は目黒領を手に入れるために軍事行動に入る。


「困りましたね。人口が強さの基準ですか? これは千代田領の皇居に居られる天皇様にお伺いを立ててみましょう。この世はお金が全て。戦ばかりが戦いではないということを教えてあげましょう。」

 港領主の渡辺は天皇に書状を送った。


「何!? 世田谷が戦の準備に入っているだと!? しかし我が杉並も北に練馬7万の兵を抱えている以上、迂闊には動けない!?」

 杉並領主の山本も身動きがとれなかった。


「う、動けない!? 弱小過ぎて!?」

 中野領主の中村もたかが3万の兵力で四方を囲まれて手も足も出なかった。


「なに? 港領からの手紙だと。ふむふむ。」

 千代田領の小林天皇が港領主からの手紙を読む。

「人口で強さが決まることの貴族の不満という奴だな。確かにたかが5000の兵しかいない余の千代田領など、直ぐに攻め滅ぼされよう。良いだろう。港領主の提案に賛同しよう。直ぐに周辺領主に文をおくれ。」

 何やら都心の天皇や貴族などのお金持ちの動きが胡散臭かった。


「いい天気だ! 晴れわたる空! アハッ!」

 練馬領主の加藤は呑気な奴だった。

「ミカンでも食べて、ゲームして、アニメ見て、引きこもるんだ! アハッ!」

 ここいらで領主のキャラクター作りに現代人が共感できそうな腐った引きこもり領主が現れる。何となくだが領主作りにも慣れてきたのだろう。


「おお! さすが小林天皇様だ! 実に素晴らしい!」

 新宿領主の吉田は千代田領主の小林天皇の文を読んだ。

「我が新宿領も参加させてもらおう! ケッケッケ!」

 これで港領主の渡辺の案に千代田領主小林天皇と新宿領主の吉田が合意した。


「俺って強領じゃん。・・・・・・板橋なのに!? 名物は痴漢電車の埼京線が通っているぐらい!? それなのに兵力5万もあっていいのか!?」

 板橋領主の山田は戸惑っていた。

「2万如きの池袋の豊島領を攻め滅ぼせるではないか!? キラーン!」

 意外に野心家の山田であった。


「西に練馬7万、北に板橋5万、東に北3万!? どれもうちよりも強いじゃないか!? なぜだ!? うちには池袋があるんだぞ!?」

 池袋領主の佐々木は大都会なのに弱国扱いに納得がいかなかった。

「新宿か文京と同盟を結ぶべきか?」

 佐々木の元には千代田領と隣接していないので、小林天皇からの文は届かなかった。


「板橋に負けた・・・・・・しかも野蛮民族足立領とも隣接している。こんな立地、天才ゲーマーくらいしか天下統一できないだろうが!?」

 北領主の山口は自暴自棄になっていた。


「フォッフォッフォ! さすが小林天皇様だ! 千代田領に隣接していて良かった! アハッ!」

 小林天皇からの文を読んだ文京領主の松本。

「もちろん参加しますよ! 東京国構想!」

 小林天皇の文の内容は千代田領の周辺領主による大規模同盟の東京国構想だった。

「天皇様に逆らう者は逆賊だ! 皆殺しにしてやるぞ! フォッフォッフォ!」

 領主に名前を入れるだけでキャラクター数が増えるので話がここまで広がった。恐るべし大義名分。


「誰が野蛮民族だ!? 足立領も立派な東京23領の一つだぞ!?」

 足立領主の井上は怒っていた。

「え? 治安の悪さだけなら埼玉国だろうがって? うるさい! ウッキー!」

 遂に出た! 埼玉の文字! 東京23領が統一されたら次は関東で他県? 他国との戦いになるだろう。最後は世界戦争からの宇宙戦争かな。アハッ!


「兵力2万の我が領土に何を求める!?」

 荒川領主の木村も既に白旗を上げていた。


「やったー! 大当たり! 千代田領に隣接していて良かった!」

 もちろん千代田領に隣接している台東領主の林は宝くじに当たった気分だった。

「東京大同盟の初期メンバーになれるぞ! これで台東領は永遠に不滅だ! キャッホー!」

 台東領主の林も千代田領主の小林天皇の提案に賛同する。


「全部で6領の大合併か。面白くない。同盟の調印式の場で他の領主を倒せば全ての領土が私のものになる。面白い。天皇と領主殺しの汚名を着てでも領土を広げてやる! 天かは私のものだ! ワッハッハー!」

 中央領主の斎藤は野心家だった。


「・・・・・・。」

 江東領主の清水はスマホばかり触って誰とも会話をしない。

SNSで文字をやり取りするのが現代人の寂しい会話だった。廃人である。こんな若者ばかりなので社会が良くなる訳もなかった。日本の若者より外国の留学生の方が全てではないがよく働くと言われるのが分かる気がする。


「ねずみランドに行きたいな。」

 江戸川領主の山崎。領土争いよりも遊園地に関心があった。


「領主になれました! アハッ!」

 墨田領主の森は領土がもらえただけで喜んでいた。


「セーフ! セーフ! 滑り込みセーフ!」

 葛飾領主の池田は23番目で登場することが出来た。


その頃、俺。

「俺のカワイイ妹よ! エヘエヘエへ!」

 俺は遠くから気持ち悪い顔でカワイイ妹を眺めていた。


その頃、師匠。

「最後は手抜き? そうだよ。だって23区23領主って、多すぎるじゃない。何も最初っからぶち込む必要はないんじゃないかな? バカ弟子とその妹が接している領土だけにすれば10か国だけで済むのに。ええ? それでは東京大同盟とかのアイデアがでない? 知るか! そんなもの!」

 師匠は逆ギレしていた。しかし師匠の言い分にも理があり。わざわざ1領ごと色々調べながら書いていると疲れる。執筆速度も遅くなる。良い子とはアイデアが出てくる意外にはないのだった。それでも2月5日で2万8000字。編集者の4つのお題を楽々クリアできるペースで20万字に驀進中である。アイデアも止まらないし順調である。こうして無事に全領土第1ターンを終えることが出来たのだ。


ゲーム開始2日目

「それでは恒例の1日1回の無料ガチャを回すとするか。今日のカードは何かな?」

 俺のカワイイ妹はガチャを回した。小学生の妹には課金するお金はないので1日1回の無料ガチャに絶対にガチャる意味がある。

「何か嫌な予感がする。」

 俺は妹が引くカードから殺気を感じる。

「ポーちゃん! 久しぶり! あたしだよ! エルエルだよ!」

「誰だっけ? 忘れちゃった。アハッ!」

 やはり現れたのは俺の師匠の天人のエルエルだった。

「出たな! 師匠! 俺のカワイイ妹は渡さないぞ!」

「いらんわい! この兄バカが!」

 俺と師匠は相変わらず仲がいい。恋仲にもならずに腐れ縁のような古い友達のような、結婚して異性ではなく空気になってしまったみたいである。

「おまえの名前はエルエルでいいのか?」

「はい。ポーちゃん! 久しぶり! アハッ!」

「だからエルエル。おまえのことは覚えていないと言っておろう。」

 あくまでも俺の妹は師匠のことを忘れている。

「作戦会議を行うぞ!」

「おお!」

 こうして渋谷領は同盟国の目黒も含めて2領で兵力が4万で、俺の師匠を加えて武将が3人になった。

「まず我が国の戦力だが、私が小学一年生、あと剣士見習いと頭にお花が咲いているエルエルと。」

「私って、頭にお花が咲いていたんだ!? 知らなかった! 蜂さん! 花の蜜をいっぱい取りに来てね! アハッ!」

「師匠の頭はお花畑だったのか。」

 師匠の頭に蜂がいっぱい寄ってくる。

「痛い!? 刺さないで!? 私が何か悪いことをしたっていうの!? やめて!? 許して!?」

 お約束通り鉢に刺されてしまう。

「うちにはろくな武将がいないな。」

 悲しむ俺の妹だが、俺は神人、師匠は天人。ほぼ最強カード2枚が隠されていた。まるで水戸黄門が印籠を隠している様なものだ。

「仕方がない。二人には隣接国の情報収集でもしてもらおうか。」

「はい! やります!」

「お花畑もがんばります!」

 カワイイ妹のためなら俺は何でもできる。


太田領。

「クソッ!? 目黒を渋谷に取られた!? こうなったら目黒領に攻め込んでやる! 戦闘準備だ!」

「はあ!」

 太田領主の高橋は横取りされた目黒領に攻め込むつもりである。


その様子を空から見ている俺と師匠。

「俺の妹の領土を押そうだと!? あの不届き者に神の怒りをお見舞いしてやる!」

「ストップ!」

 しかし師匠が俺を止める。

「なぜ止めるんですか!? 師匠! あいつは俺のカワイイ妹を襲おうとしているレイプ犯ですよ! 未遂や計画を立てただけでも許せません!」

「落ち着け。落ち着け。妹思いのお兄ちゃんというのがこの物語の一番の盛り上がりの面白い所というのは分かったが、神の恐ろしさを見せつけるのは、問題を解決してからだ。」

「問題?」

 新たな問題が俺たちの前に立ち塞がる。

「渋谷領のおまえの妹の元に何人武将がいる?」

「妹、俺、師匠の三人です。」

「ということは。23領あるということは、23かける1日1回無料ガチャを2日目で2回ガチャっているから23領の全ての領地に3人の武将がいることになる。つまり69人の武将がいることになるのだ!」

「なんだって!?」

 俺は師匠の言う難しいことは分かっていない。分かることは69人分の登場キャラクターを考えないといけないということだった。

「明日になれば92人分の登場キャラクターを考えなければいけないのか!? 何て膨大な数なんだ!?」

「まあ、逃げ道はあるが。」

「え? あるんですか逃げ道。」

「あるよ。私たちみたいなのはレア。超レア。他のガチャは外れで歩兵や騎馬兵などの兵士ばかり出たことにしておきましょう。そうすれば問題は解決です。」

 たまにレアで暗黒の魔王カードとかがどっかの領主に出ていたりして。物語を面白くしてくれます。

「さすが師匠! これで問題解決ですね! 待たせたな! 太田領主! 高橋! 我がカワイイ妹を襲おうとした罪を裁いてやろう!」

「おまえ本当に兄バカだな。」

 師匠に話を遮られている間に暗雲を呼び雷鳴を光らせて神の怒りを充電していた。準備万端という奴だ。


「俺のカワイイ妹を泣かせる奴は許さない! 例え相手が神であっても俺が倒す!」


 もっとも俺が神人なのだが。

「ドカーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 太田領に雷が降り注ぎ大陸の半分が海に沈んだ。そこに将来羽田空港を建設するのである。

「いくら妹のためとはいえ、ここまでやると神の暴挙だろ?」

「妹のためではありません! カワイイ妹のためです!」

「はいはい。兄バカです。」

 師匠も俺の妹ラブには呆れるしかできなかった。


「なに? 太田領に天災が? なんだか最近は自然災害が多いな。」

 少し疑問を持ち始めた俺の妹。

「ポーちゃん様、太田領に侵攻しますか?」

「いや。距離が遠い。本国を失う可能性もある。ここは静観しよう。エサ釣られて狸が動くかもしれん。」

 最悪、本領地の渋谷領を失い、太田領が本領地になると俺の妹は考えている。この場合自領に強いこだわりが無ければ、2万の渋谷領を捨てて、太田領7万を手に入れるのが正解ともいえる。

「なんだか頭脳戦も疲れてきたな。これなら23人の戦死を作って戦わせる格闘ゲーみたいな感じで陣取りゲーにすればいいのではなかろうか?」

 師匠は頭のデータ処理が疲れてきた。


「チャンス! 全軍! 弱っている太田領を奪いに行くぞ!」

「おお!」

 品川領主の田中は最悪4万の品川領を失ってでも7万の太田領を奪い取るつもりだった。


「クソッ! 目黒を渋谷に取られただと!?」

 世田谷領主の伊藤は怒り心頭だった。

「領主王様!」

 伊藤は1番強い領土力をかさに自ら領主王を名乗っていた。

「なんだ?」

「太田領で天災が起きました。」

「なんだと!? 直ぐに兵を送り太田領を手に入れろ!」

「ははあ!」

 世田谷領主の伊藤も太田領を目指して出兵した。


「それでは緊急記者会見を行います。」

 港領主の渡辺が会見を始める。

「今から千代田領、港領、新宿領、文京領、台東領、中央領の6つの領は合併し、東京領を名乗ります。」

 ここに人口5000、20、30、20、20、10万人を足して100万5000人の大領地が誕生した。

「東京領の領主は小林天皇。その他の元領主は大臣に任命されます・・・・・・ので、我が東京領に歯向かった者は天皇様に歯向かう逆賊とみなされ討伐令が出されます。」

 自分たち以外は天に弓なす逆賊扱いをするという。

「我が東京領に参加したい方はお待ちしております。ただし領土の無条件降伏。領主の身分は大臣以下の一般武将扱いです。それでも生き延びたいか、それとも命を粗末にするか。お好きな方をお選びください。」

 東京領の渡辺大臣は初期の参加領主は特別だが後から参加した領主は武将に格下げするというのだ。


それを見ていた俺と師匠。

「最低だな。サイコパスだ。」

「自己中な提案だな。要するに6つの領土が合併して兵力が10万を超えて一番多いから全ては自分たちの思い通りにするという考え方だな。最悪だな。こういう奴らを小賢しい奴らというんだな。」

 俺と師匠は胡散臭い同盟の強領主の誕生だと思っていた。

「歯向かったら逆賊か。天皇を盾に取るとは。」

「やっていることが曹操そのまんまですね。」

 三国志を思い出す俺たち。

「まあ、見ていろ。どうせ新しい戦いしか生み出さない。」

「それにあいつらが曹操ほどのカリスマ性が無ければ内部分裂して滅びるのがオチですね。」

 哀れな6つの同盟の最後を予感していた。


「世田谷が手薄になった!? 攻め込むぞ! 世田谷に! 活路を切り開く!」

 杉並領主の山本は覚悟を決めて世田谷に攻め込む。


「降伏します! 降伏! 東京領に隣接しているんだ! 我々に生き残る道はない! 降伏して恥を忍んで生き残るしかない!」

 中野領主の中村はビビっていた。たかが3万の中野領の兵力では東京領10万の兵士数には敵わないと諦め東京領に無条件降伏することにした。


「おお! 早速中野領主の中村が降伏してきたか! やはり数は力だな! ワッハッハー!」

 東京領になった小林天皇がクソ笑っていた。中野領30万の人口を加えて、兵力も13万5000人になったのだ。これで降格した第2位の人口を誇る世田谷9万の兵力と4万5000の差が開き人口の首位の座を固めつつある。

「この調子なら戦わずとも多くの領主が降伏してきそうだな! ワッハッハー!」

 戦をせずに天下統一ができるとうかれていた小林天皇。


「風が変わった。よし! 空っぽになった杉並領を攻撃するぞ! 決死の覚悟で挑むぞ!」

 呑気に暮らしていた練馬領主の加藤が本性を現した。空っぽであれば大勢の兵士を失わずに杉並領を手に入れられると戦を始める。


その頃、俺と師匠。

「ああ~。東京領の誕生で全領主が戦闘モードになっちゃった。」

「そうですね。平和が終わりましたね。」

 神人と天人の俺たちは戦いばかりで嫌になる。

「それにしても、いよいよ領地争いや領主が倒されて数が減っていきそうですが、まだ死んだ領主は高橋の一人だけですね。」

「おまえの兄バカが死因だがな。」

 俺はカワイイ妹のために神の怒りを思い知らしたのだ。

「領主は23領から妹が目黒領を手に入れて22領主。6つの領主が東京領を作ったので17領主になった訳か。」

「減りが遅いな。こっちは色んな所を見ないといけないから早く数が減ってほしい。若しくは今度、時を戻す神隠しをする時は全体把握はやめて、俺のカワイイ妹視点だけの物語でいい。いくら神人でも疲れちゃうよ。」

 相変わらず俺と師匠はグダグダしていた。愚痴が言える間は幸せだった。でも確かに視聴者も読者も複雑すぎて疲れちゃう。

「師匠。神の力を使ってもいいですか?」

「許す。一つ一つ確認しながら書くのに私も疲れた。」

「俺は神だ! 奥義! 神隠し!」

 こうして3度目の時を戻し、俺の妹は4度目の人生を歩むことになる。神ってなんて便利なんだろう。


「はあ!? ここはどこだ!? 私は誰だ!? 確か目黒領を手に入れていたはず!? 嫌!? これは時が戻っているのか!? 振り出しに戻ったというのか!?」

 俺のカワイイ妹は僅かに残っている記憶で時間が戻っていることに、さすがに4度目なので気づき始めている。

「いや、今は真偽より今自分にできることを考えよう。はて? 私は何のために23領の覇者になろうとしていたのやら?」

 大義名分。4度目のゲームスタートで初めてゲームの目的を考える俺のカワイイ妹。

「私は荒れ果てた東京23領を救うために戦う!」

 俺のカワイイ妹の世紀末救世主伝説。これで決まり。まあ、現実の東京23区も荒れ果てているからな。現在の東京23区は貧困などで人の心の優しさや人間らしさが無いからな。スマホばっかりや誰とも会話しないゴミや腐った人間ばかりだ。お金も無いから家に引きこもり。確かに交通費、お茶代、商品代、お土産代などお金がかかりまくるからな。それならネット通販で送料だけ払い宅配屋さんとだけあってハンコを押してさようならの方が安い。いや~、本当に世の中は終わっている。

「私が貧しい人々を救って見せる!」

 俺の妹は正義感で23領を統一しようとしているのだ。純粋な心が東京を支配すれば、きっと誰もが笑える素敵な東京になるだろう。

「ということで1日1回無料ガチャを引こう。」

 俺のカワイイ妹は4度目の無料ガチャを引く。

「ポーちゃん! 会いたかったよ!」

 もちろんガチャで引き当てたのは俺である。さすが俺カワイイ妹だ。

「ゲッ!? ロリコンお兄ちゃん!? バカな!? 確かに私が右フック・親指隠しで確実に殺したはずなのに!?」

 そう。俺は俺を嫌うカワイイ妹に殴り殺された。しかし神人になったので自由自在に行動ができる。生き返るのも朝飯前だ。アハッ!

「カワイイ妹のためなら例え火の中水の中! どこからでも現れるよ! ポーちゃん! 可愛い!」

「気持ち悪い! もう一度あの世に葬ってやる! くらえ! 秘拳! 右アッパー・親指隠し!」

「ギャアアアアアアー!」

 ということで、俺はカワイイ妹の手にかかって2度目の死人になった。

「また罪を犯してしまった。」

 俺の妹は2度の殺人を犯してしまった。

「まあ、いいっか。お兄ちゃんだし。アハッ!」

 何度殺されても俺はカワイイ妹は許せる。妹には代わりに兵士さんを1名送っておきます。


その頃、俺。

「復活! 本当に神人で良かった! フウ~!」

 俺は天界で神人として生き返った。

「おまえも懲りない兄バカだな。」

 そんな俺を師匠が出迎えてくれる。

「妹ラブですから。アハッ!」

 俺と師匠の物語も続いている。

「さあ、気持ちを切り替えてっと。一度プレイしたので全体像が分かりましたね。」

「そうだな。ゲームシステムの開発ばかりで大事なことを忘れていた。おまえの妹は何のために戦うのか? というこを。」

 これ1番大切。海賊王になるとか、財宝を探すとか、おじいちゃんの形見の7つのボールを探すとかね。

「東京23領を支配すると何でも願い事が叶うにしよう。」

「それでもって俺のカワイイ妹の願いは、殺してしまって後悔しているので俺を生き返らせることにしよう。」

「と思わせて、実はカワイイ熊さんのマグカップが欲しかっただけにしておこう。」

「やめて!? そんなオチ!?」

 細菌の小説も、アニメも、ドラマも、映画も少し物語を進めては笑いを取らなければいけない。面白くなければ飽きて視聴者が去ってしまうからだ。腐れ縁で見るを形成するためには最初だけ、1話だけ面白ければ視聴者はクソの習慣で見てくれるファンになってくれるというやつだ。


「領主として、大勢の兵士を率いて戦うのもいいが、登場キャラクターに魅力が無ければいけない。」

「顔だけイケメンにして人気声優をつければ、それだけでファンはついてくるでしょう。楽勝ですね。」

 実際の所、アニメでもゲームでも内容は他の作品と同じでくだらないので声優さんの人気で客を集めているというのは事実である。それでなければ見ない、遊ばないレベルの面白くない作品ばかりだから。

「ということで、23領なら23領主、23ジョブがあるだろう。」

 まあ、被ってもいいのだが。

「俺のカワイイ妹は、まだ小学一年生。剣士や戦士で戦うには無理があると思うのだが?」

 逆にそれも面白いかもしれない。子供パーティー。子供チャレンジ。

「東京23領を統一したのは、子供だった。」

 伝説の勇者は小学一年生。ウケるは、ロリコンに。

「お兄ちゃんをボコボコにしているので。アハッ!」

 俺のカワイイ妹は強い理由だ。

「できるかもしれん。子供勇者。」

 一般大衆向けにアニメにできるかもしれない!? なぜなら大人は子供とペットには弱いからだ。

「それをサポートする神人の俺。」

 ケンシロウの小学生バージョンみたいなハードボイルド路線でいいのか?

「おまえは何者だ!?」

「ポーちゃん!」

「え? ポーちゃん? こいつ! ふざけやがって! やっちまえ!」

 と野党と戦いになるが、俺のカワイイ妹は次々と野盗を倒していく。

「あなたはもう死んでいる。」

「なんだと!? ギャアアアアアアー! ヒデブ! アベシ!」

 に対抗してケバブとか? ところてん? みたいな。いや、無理な冒険はやめよう。もう少し構想を練る必要があるな。

「救世主は小学生!」

 これが主軸だな。


「もっとルールやスキルなど設定の形を決めよう。」

 領地戦で兵士数で全て決めるのもいいが、やはり孔明のような軍師。関羽などの猛将は必要である。結局は秀でた個性の良し悪しがあるキャラクターしか魅力が無い。

「剣士から考えてみよう。まず剣士見習い、剣士、騎士、聖騎士。進化や出世はこんなものだろうか。」

「剣の攻撃といえば、斬るか突く。投げる。剣技も力任せ? 早さ? 空? 全て? を斬る。」

「それに魔法を剣に宿す。最後は聖剣か?」

 俺のカワイイ妹は最後は何になるんだろうか?

「何をどうすれば面白いのだろう?」

 分からん。分からんから書き続けるしかない。


 好きな領地から始めてください。

「渋谷領。」


 名前を決めてください。

「ポーちゃん。」


 職業を決めてください。

「勇者。」


 23領を統一したら叶えたい夢はなんですか?

「カワイイ熊さんのマグカップ。」


その頃、俺。

「初期設定はこんなもんで。」

「そうだな。数が多すぎるとアンインストールされちゃうからな。」

 一般大衆にも分かりやすい単純な設定でなければいけない。

「もう勇者スタートでいいや。剣士見習いから始めているとキリがない。」

「どうせオチは神人のおまえが神の怒りで稲妻を落として終わりだもんな。」

「師匠!? 俺は水戸黄門の印籠ですか?」

「その通り。後は名探偵の小学生みたいにポーちゃんは可愛くしていればいいのだ。」

「ピンチになったらタキシード仮面みたいに俺が兄としてカワイイ妹を助けるというパターンですね。」

「それで1クール12話の話は出来上がっているから完璧すぎて書く前から飽きるわ。」

「やはり剣士見習いからですか?」

「それは後にしよう。とても疲れるから。もう領主と領主の直接対決だけでいいや。後はエピソードだけ入れてしまえばいい。どうせ30分アニメの戦闘シーンなんて5分くらいだ。毎回のエピソードも面白くないので誰もアニメを見ないというオチ。」

「もうエピソードも作品が違うだけで同じだからな。ゲームになっても声優さんの声を聞く以外はスキップ。ゲームも戦闘ゲームにしかならない。」

 ここで何か新しく面白いものが思いつけばいいのだが、思いつかないのが悲しい。


「ポーちゃんは勇者なの。」

 俺のカワイイ妹は俺を生き返らせるために・・・・・・ではなく、カワイイ熊さんのマグカップを手に入れるために勇者になり他の領主と戦い、東京23領を手に入れて願い事を叶えるのだ。

「エピソード? やったよ。まず自分の領地である渋谷領でまず悪いロリコンのお兄ちゃんをやっつけたの。」

 俺のカワイイ妹は渋谷領のエピソードをクリアしていた。こうして勇者ポーちゃんは誕生した。

「次はどこの領地に攻め込もうかな?」

 今回は兵力ではなく、領主の戦闘力が物を言う設定になっている。

「決めた! 世田谷領に攻め込もう!」

 俺のカワイイ妹は世田谷領に攻め込んだ。


「なに!? 渋谷領主が攻め込んできただと!? なんで世田谷なんか田舎に攻め込んでくるんだよ!?」

 世田谷領主の鈴木。職業は剣士。夢は・・・・・・平和に暮らすこと。基本情報も完結にしよう。

「ええ~い! 我が剣の錆にしてくれる!」

 こうして俺のカワイイ妹と鈴木は戦うことになった。


「しょ、小学生!?」

 誰もが俺の妹を見て驚くのはお約束。

「なんで小学生が渋谷領主なんだ!? おかしいだろ!? まあ、いい。我が剣の錆にしてくれる!」

 鈴木が剣を振り上げて俺の妹に襲い掛かる。

「ウエーン!」

 怖かったのか俺のカワイイ妹は泣き始めた。


「俺のカワイイ妹を泣かせる奴は許さねえ! 神の怒りを知るがいい! ゴット・サンダー!」


 神人である俺の怒りが地上に降り注ぐ。

「ギャアアアアアアー!」

 落雷が当たった鈴木は真っ黒焦げになり息絶えた。

「やったー! 勝った! アハッ!」

 おお喜ぶだが俺の妹は何もしていない。だが俺はカワイイ妹のためなら神の力を行使するのであった。俺の妹は世田谷領を手に入れて、2つの領地の領主になった。

「次はどこにしようかな?」

 この緩いパターンの話が手直しされながら続く。


その頃、俺。

「どうですか? 師匠。こんな感じの物語で。」

「いいんじゃないか。戦う相手も領地を2つ3つもっていれば12話で終わることができるだろう。」

 師匠も及第点の設定にご満悦である。

「ここから手直しができることといえばエピソードだけだな。」

「例えば領主に領民がいじめられていて、そこを俺のカワイイ妹が助けるために戦うというゴールデンストーリーにしましょう。俺の妹は世紀末ヒロイン救世主です! アハッ!」

「相変わらず兄バカだな。」

「はい。妹ラブです!」

 妹のことを可愛く思える俺は幸せ者です。


「決めた! 目黒領に攻め込もう!」

 俺の妹は2ターン目で隣接している目黒領に攻め込んだ。


「なに!? 渋谷領主が攻めてきただと!?」

 目黒領主の高橋は太田領主を倒し目黒と太田の2領を持っていた。

「私とて太田領主を倒して2国持っているんだ! そうやすやすと敗れはせんぞ! かかってこい! 渋谷領主め!」

 目黒領主の高橋。職業は僧侶。夢はたくさんどら焼きを食べること。


「実は領主にどら焼きを奪われて子供たがおやつを食べれなくて困っているんです。助けてください。」

 太田領民の切実な願いである。

「分かりました。私が太田領主を倒して、みんながどら焼きを食べられるようにしましょう。」

 俺のカワイイ妹は苦しめられている太田領民と約束を交わした。

「ありがとうございます! 救世主様!」

 太田領民たちは俺のカワイイ妹に感謝した。


「ゲゲゲッ!? 小学生!?」

 高橋は俺の妹を初めて見て渋谷領主が小学生に驚くお約束。

「あなたはもう死んでいる。」

 決めゼリフをぶちかます俺のカワイイ妹。

「私をただの僧侶だと思うなよ! これでも私は破戒僧ならぬ、破壊僧侶だ!」

 子供を脅しにかかる高橋。

「ウエーン!」

 怖かったので俺の妹は泣きまくった。


「俺のカワイイ妹を泣かせる奴は許さねえ! 神の怒りを知るがいい! ゴット・サンダー!」


 地上に雷が降り注ぐ。

「ギャアアアアアアー!」

 高橋は真っ黒焦げになる。見たか! 神の力を!

「やったー! 勝った! わーい!」

 勝利に喜ぶ俺のカワイイ妹。


「はい。どら焼き。」

 太田領民にどら焼きを差し出し約束を守った俺のカワイイ妹。

「ありがとうございます! 救世主様!」

 感激してお礼を述べる太田領民。

「あの、あなた様のお名前は?」

「ポーちゃん。」

「おお! 救世主! ポーちゃん様! ははあー!」

 太田領民は俺のカワイイ妹を救世主と崇めるのであった。

「次はどこに攻め込もうかな。」

 俺の妹は渋谷、世田谷、目黒、太田の4つの領地を手に入れた。このパターンで組み合わせでいくと残る領主は6人。そこから3人。となっていくのだろう。


「よし! 品川領に攻め込むの!」

 俺のカワイイ妹は品川領に攻め込んだ。


「なに!? 渋谷領主が攻めてきただと!? なめやがって! 返り討ちにしてやる!」

 品川領主の田中。職業は魔法使い。夢はお金持ち。品川領主は品川、港、千代田、中央の4つの領地を有している。

「勝って私が渋谷領を手に入れてやる!」

 戦うことでしか分かり合えない人間の悲しいサガである。


「助けてください。品川領主にお金を取られて、食べていくのがやっとなんです。」

 品川領民の悲痛な叫びである。

「安心してください! 私が悪い品川領主を倒します!」

 強く言い切る俺のカワイイ妹。

「ありがとうございます! あなたは救世主様だ!」

 感動する品川領民たち。

「違います! 私はポーちゃんです!」

 まだ小学生の俺のカワイイ妹は少し天然ボケが入っている。


「ゲゲゲ!? 小学生!?」

 品川領主が俺のカワイイ妹を初めて見て小さな小学生だったので驚くのはお約束。

「あなたはもう死んでいる。」

「何を生意気な!? 私の魔法で死ぬがいい!」

 悪い魔法使いの領主の品川領主の田中は魔法で俺のカワイイ妹に襲い掛かる。

「ウエーン!」

 そして、俺のカワイイ妹は泣いた。


「俺のカワイイ妹を泣かせる奴は許さねえ! 神の怒りを知るがいい! ゴット・サンダー!」


 地上に雷が降り注ぐ。

「ギャアアアアアアー!」

 田中は真っ黒焦げになる。見たか! 神の力を!

「やったー! 勝った! わーい!」

 勝利に喜ぶ俺のカワイイ妹。


「皆さんがんばって生きてくださいね。」

「ありがとうございます。救世主様。」

「違う!? ポーちゃん!」

「そうでした。ワッハッハー!」

 こうして品川領は俺のカワイイ妹の渋谷領になった。渋谷領民になった品川領民たちも笑顔で幸せそうだった。

「次はどこに攻め込もうかな?」

 俺の妹の戦いは続く。


「なに!? 品川領主と渋谷領主の戦いでは渋谷領主が勝っただと!?」

 北東京を支配した練馬領主の伊藤。東京8領を持っている。


「面白い。練馬領主と品川領主に戦って潰し合ってもらいましょう。その後に私が戦いを仕掛けて東京23領を頂きましょう。」

 西東京を支配している江戸川領主の渡辺。東京領を7領を統治している。


その頃、俺。

「いや~、他国が倒した敵は名字をつけなくていいのが楽ですね。アハッ!」

「そうだな。あと決めゼリフとか変更が無いから同じで構わない。それでいくとアンパンの顔の男や月に変わってお仕置き娘とか、小説にすると毎回同じ文章の繰り返しになるんだろうな。アニメもそうだし。眼鏡のガキンちょもそうだ。」

「ということは、それが悪いことではないということでしょう。」

「それでいいんなら製作サイドはスゴイ楽だな。」

「そうですよ。それで長寿アニメや人気漫画はできているんですから。」

「ありがたや。」

 クリエイター会議をする俺と師匠。

「ん? 神に祈っても、神って俺だった。アハッ!」

 こんな神様がいてもいいだろう。


「練馬領に攻め込もう! ここが天王山だ! 関ヶ原だ!」

 俺のカワイイ妹は8領同士の対決を挑む。

「領主様。助けてください。練馬領主が変態スケベでカワイイ娘を差し出せと言ってきて困っているんです。」

 練馬領民は娘がキャバクラ・風俗に売られてしまうので練馬領民は困っていた。

「分かりました。私がみなさんを助けます!」

 心優しい俺のカワイイ妹。

「ありがとうございます! 救世主様!」

「違う!? 私はポーちゃん!」

 呼ばれ方に強いこだわりを持つ俺の妹は練馬領主に戦いを挑む。


「ゲゲゲ!? 小学生!? 参加者に年齢制限をつけろよ!?」

 練馬領主の伊藤が俺のカワイイ妹を初めて見て小さな小学生だったので驚くのはお約束。

「あなたはもう死んでいる。」

「はあ!? 小学生が死んでいるとか不吉な言葉を使うな! 親の顔が見てみたいわ!」

 そういえば俺と妹の親はどこに行ったんだろうか? 忘れた気がする。

「俺は猛獣使いだ!」

 練馬領主は猛獣使い。アニマルマイスターだった。

「くらえ! チワワのカワイイ瞳攻撃!」

 猛獣使いの練馬領主の伊藤はペットのチワワを登場させ俺のカワイイ妹を見つめさせ敵の戦意を失くすのだ。この卑怯な方法で東京8領も手に入れたのだ。

「ウエーン!」

 そして、俺のカワイイ妹は泣いた。


「俺のカワイイ妹を泣かせる奴は許さねえ! 神の怒りを知るがいい! ゴット・サンダー!」


 地上に雷が降り注ぐ。

「ギャアアアアアアー!」

 伊藤は真っ黒焦げになる。見たか! 神の力を!

「やったー! 勝った! わーい!」

 勝利に喜ぶ俺のカワイイ妹。


「皆さんがんばって生きてくださいね。」

「ありがとうございます。救世主様。」

「違う!? ポーちゃん!」

「そうでした。ワッハッハー!」

 こうして練馬領は俺のカワイイ妹の渋谷領になった。渋谷領民になった練馬領民たちも笑顔で幸せそうだった。

「次はどこに攻め込もうかな?」

 次はサバイバルを生き残った江戸川領主の渡辺との最終決戦しかない。俺の妹の戦いは続く。


「参った!」

 早々に白旗を上げて降参する江戸川領主の渡辺。

「ポー?」

 俺の妹は戸惑っている。

「どうして降参するかって? それはそうでしょう。私は7領。あなたは18領。この2国で争っても戦力差があるのですから、我が領民のことも考えれば戦わないで降伏した方が負傷者が出なくていい。みんな幸せですよ。」

 意外に江戸川領主の渡辺はいい奴だった。

「やったー! これで私は東京23区を手に入れたんだ! わ~い!」

 俺のカワイイ妹は東京23区を支配した。


「願い事を言ってみなさい。」

 俺は神人として東京23領を手に入れた妹の願いを聞いてみる。

「ポーちゃん、カワイイ熊さんの・・・・・・。」

 妹が願い事を言っている時だった。

「俺を23領の支配者にしてくれ!」

 その時だった。善人ぶっていた渡辺が手のひらを返して、自分の願い事を割り込んで行ってきた。

「ウエーン!」

 そして、俺のカワイイ妹は泣いた。


「てめえ! 俺のカワイイ妹を泣かせてるんじゃねえぞ! 神の裁きを思い知らせてやる! ゴット・サンダー!」


 地上に雷が降り注ぐ。

「ギャアアアアアアー!」

 渡辺は真っ黒焦げになる。見たか! 神の力を!

「やったー! 勝った! わーい!」

 勝利に喜ぶ俺のカワイイ妹。


「カワイイ! 熊さんのマグカップ! アハッ!」

 大喜びの俺のカワイイ妹。

「ポーちゃんの願い事はお兄ちゃんを生き返らせることじゃなかったのね。クスン。」

 悲しむ俺。それでも熊さんのマグカップを手に入れて喜ぶ妹を見ていて俺は幸せだった。

「めでたし、めでたしだな。」

 師匠も無事に東京23領が終わって一息つくのであった。


「しまった!?」

「どうしたんですか? 師匠。」

「5万字から参加可能なのに、まだ約1万字も執筆しないといけないんだ!?」

「オーマイゴッド!」

 落とし穴に気づく俺と師匠。

「これも全て渡辺の呪いだ!? 想に違いない!?」

「ああ~! くわばら! くわばら!」

 俺と師匠にハッピーエンドは来ない。

「ということで次を考えよう。」

「次は東京都戦ですか? それとも1都3県編。はたまた関東1都8県編。おまけに東日本編。日本全国編ですかね。」

「なんなら世界編で世界中がバトル・マップでもいいぞ。」

「世界は広すぎて、逆に後1万字で終わらない・・・・・・。」

 不幸の連鎖である。


「そもそも、カードゲームを目指していたんだよな?」

 どこで領地戦略ゲーになったんだか分からない。

「でも週間漫画の飛ぶで一番商業的に成功したのが、7つのボールでも海賊王でもなく、もちろん毀滅でもなく、カードゲーム王が1番売れたのが不思議だ。」

 連載が終わっても今もカードは売れ続け、アニメも放送されている。カードダスで一番成功したといっていいのだろう。便乗品のカードゲームは多いだろう。

「やってやろうじゃないか! 人生、全てを¥カードで蹴りつけてやる!」

 少し創作意欲が湧いてきた。


「この世の全てはカードが決める。」

 これがテーマ。

「プレイヤー名がポーちゃん。職業はピカピカの小学一年生。願い事はカワイイ熊さんのぬいぐるみを手に入れること。」

 俺のカワイイ妹の基本設定。

「東京23領を手に入れると何でも願い事が叶うらしい言い伝えがある。」

 それで人間は冒険の旅に出るのだが・・・・・・。


「ふあ~あ。よく寝た。」

 俺の妹のポーが目が覚めた処から物語が始まる。

「トイレに行きたいな。」

 俺の妹は尿意を感じた。

「カードを引かなくっちゃ。」

 俺の妹はカードを引く。

「もう一度寝る。」

 カードはもう一度寝るだった。

「やったー! 二度寝できる! ラッキー!」

 大喜びで布団に入る俺の妹。

「・・・・・・。」

 布団に入り寝た妹が固まる。

「違う! 私はトイレに行きたいんだ!」

 お漏らし寸前の妹。

「もう一度カードを引こう!」

 日常のカードは何回でも引くことができることにしよう。

「カーテンを開ける!」

「パジャマを着替える!」

「口を磨く!」

 妹の行動の全てはカードが決めるのだ。

「トイレ! やっと出た! トイレカード! 漏れる!」

 俺の妹はトイレに猛ダッシュ。

「ふう~、スッキリした。アハッ!」

 これが人間の全ての行動をカードが決める世界になった地球人の生活である。世界中の70億の人々がカードによって生活を決める世の中になってしまった。正に世はカードゲーム時代である。


「ゴット・カード?」

 そんな時、兄の俺は妹のポーに新しいカードゲームを渡した。

「このゴット・カードがあれば人間の日常生活に異世界ファンタジー要素が盛り込まれてカードゲームとして遊べるんだ。」

「すごい! 面白そう! ポーちゃんも遊ぶ!」

 こうしてゴット・カードゲームは始まった。


「ゲームスタート!」

 早速俺のカワイイ妹はゴット・カードを引いてみる。

「勇者? なんだろう?」

 いきなりだが超レアの勇者カードを引いた俺の妹。

「なんじゃこりゃ!?」

 妹が家の外に出て見るとモンスターや魔物がたくさんいた。

「私にどうしろという!?」

 困ってしまう妹。

「そうだ! カードを引いてみよう!」

 俺のカワイイ妹はカードを引いてみた。

「武器、石ころを手に入れた。」

 と、投石です。

「防具、クロユニの服を手に入れた。」

 普通の子供服です。

「これで私に戦えというのか!?」

 はい。その通り。


 家の外に出た妹。

「まずはスライムと戦おう。」

 最初は雑魚と戦ってチュートリアルとレベル上げ。

「ゲームによっては投石最強説もあるし、頑張ろう。えい!」

 俺のカワイイ妹は石をスライムに投げた。

「ギャアアアアアアー!」

 スライムに石が命中する。

「やったー! 勝てた! わ~い!」

 俺のカワイイ妹はスライムを倒した。

「でも、この調子だと永遠に終わらないわね。」

 確かに永遠に前に進まない。

「よし! カードを引こう!」

 妹はカードを引いた。

「早送りカード!」

 俺のカワイイ妹は1時間の早送りのカードを手に入れた。

「早速使ってみよう!」

 俺のカワイイ妹は早送りカードを使った。

「妹はゴブリンに石を投げて倒した。」

「妹はウルフに石を投げて倒した。」

「妹はスライムに石を投げて倒した。」

「妹はスライムに石を投げて倒した。」

「妹はゴブリンに石を投げて倒した。」

「妹はウルフに石を投げて倒した。」

 約1時間の戦闘を早送りでやった。

「レベルが3になった。金を7円手に入れた。お宝として薬草1つ手に入れた。」

 妹は早送りカードの恩恵を受けた。ゴット・カードのお金は実際のお金に変換できるとしておこう。その方が一般大衆が群がるだろう。

「やったー! レベルが上がった! お金も手に入った!」

 楽して喜ぶ妹。

「はあ・・・・・・はあ・・・・・・なぜだ!? 苦しい!?」

 急に妹が苦しみ始めた。

「そうか1時間の早送りは経験値やお金も得られるけど、その分のダメージや疲れも手に入ってしまうんだわ!?」

 恐るべし、呪われた早送りカード。

「こんな危険なカード雑魚が多い所しか使えないわね。今の私なんか雑魚でも倒すのが必死なんだから。」

 俺のカワイイ妹は頭も賢かった。

「お家に帰って寝よう。」

 何度もカードを引き直して、やっとベットで寝るを引き当てた俺の妹。

「zzz。」

 体力を回復させるために自宅で無料で寝る俺のカワイイ妹。



「カード! カード! カード! この世の全てはカードが決める!」

 お金でも武力でもない。カードが全ての世の中。


「よし! ゴット・カード! がんばるぞ!」

 妹の戦いが再び始まる。

「まずは渋谷区の領主にならなければいけない。」

 渋谷区の領主になるためには空白になっている渋谷城の渋谷領主にならなければいけない。

「カードで渋谷区のどこに本拠地を置くか決めてください。えい!」

 カードは渋谷区の渋谷カードを引き当てた。カードの運によっては良い立地と悪い立地に分かれてしまう。

「渋谷区渋谷か、まずまずね。さあ、次はどこに攻め込もうかしら。」

 俺のカワイイ妹はカードを引いた。

「神宮前!? これは最初っから首位攻防戦ね。」

 渋谷区でも神宮前と渋谷区渋谷は大きい領土でありかなりの体力と持久力を要する厳しい戦いになりそうだった。

「でも、カードが選んだのだから仕方がない。神宮前に突撃!」

 妹は神宮前に突撃した。

「おらは神宮前領主の山本だぞ。おまえなんかには負けないからな。」

 俺のカワイイ妹の前に神宮前領主の山本が立ち塞がる。

「私は誰にも負けない! あなたはもう死んでいる!」

 俺のカワイイ妹は勝気だった。

「舐めるな! ガキの分際で!」

 神宮前領主の山本が俺の妹に襲い掛かる。

「ウエーン!」

 山本が怖かったので俺のカワイイ妹は泣いた。


「俺のカワイイ妹を泣かせたな! おまえみたいな奴は許さない! 神の怒りを知るがいい! ゴット・サンダー!」


 俺は山本目掛けて神の稲妻を降り注いだ。

「ギャアアアアアアー!」

 山本は真っ黒焦げになった。

「やったー! 勝った! わーい!」

 職業が小学生勇者の俺の妹は神宮前領を手に入れた。


その頃、俺。

「定番コースで俺のカワイイ妹の勝利なのだ! ワッハッハー!」

 絶賛中の俺。

「おい、笑ってい暇があったら渋谷区の住所が何件あるのか調べるのを手伝え!」

 師匠が仕事をしているので、サボっている俺を怒っている。

「すいません。つい妹が可愛いので。アハッ!」

「この兄バカが。」

「はい。妹ラブなんで。アハッ!」

 諦めて渋谷区の住所を調べることにした。

「多分32ですね。」

「1回戦ったので残り16。2回戦えば8。3回戦えば4。4回戦えば2で決勝戦となる。」

 物語の概要が決まっているので楽である。


「よし! カードを引くぞ!」

 俺のカワイイ妹はカードを引いた。

「次は千駄ヶ谷に攻め込むぞ!」

 カードには千駄ヶ谷と書いてあった。


「なに!? 渋谷区渋谷が攻めてくるだと!? 返り討ちにしてくれるわ!」

 渋谷区の2領を持っている千駄ヶ谷領主の中村。


「助けてください! 千駄ヶ谷領主の中村が暴力ばかり振るうので領民たちは困り果てているんです!」

 領民たちが俺のカワイイ妹に助けを求めてくる。

「分かりました。私に任せて下さい。悪領主は私が懲らしめてあげましょう。」

 俺のカワイイ妹は領民たちと約束する。

「おお! 正に救世主様だ!」

 世紀末ヒロイン救世主ポーちゃん伝説、継続中。

「違う! ポーちゃん!」

 呼び方にはこだわりを持っているお年ごろの俺のカワイイ妹。


「ハアッ!? 小学生だと!? こんなクソガキがケンカを売ってきたというのか!?」

 初めて俺のカワイイ妹を見た相手が暴言を吐くのはお約束。

「ウエーン!」

 そして怖いので泣きだす俺の妹。


「よくも俺のカワイイ妹を泣かせたな! 死をもって償え! ゴット・サンダー!」


 俺は地上に雷を降らせまくった。

「ギャアアアアアアー!」

 千駄ヶ谷領主の中村は真っ黒焦げになって倒された。

「やったー! 勝った! わ~い!」

 俺のカワイイ妹は渋谷領の4つの領地を手に入れた。


その頃、俺。

「ハアッ!? まさか!?」

 俺は大切な何かに気がついた。

「どうした?」

「俺がいつも陰から手助けしていたら、実は妹の教育に良くないんじゃないだろうか!? という疑問が生まれたんです!? それにカードを一般大衆に売りつけたいのにカードゲームらしく進めることが妹が可愛すぎてできません!?」

 致命的な欠点も気づいてしまった俺。

「おまえが兄バカだから仕方がないな。」

「そうですね。妹ラブですからね。」

 どうしましょう?

「何か新しい物語ではなく、従来のカードゲーム方式にしましょう。もうそれしか訂正をする方法が無い。」

「そうですね。普通にカードを買ってきて、従来通り生きてる人間がカードで戦うというような定番で一般大衆が分かりやすいものにしましょうか。」

 結論が出たところで、


「神隠し! 時よ! 戻れ!」


 こうして5度目の時間を戻る旅に出る。


「やろうぜ! ゴットカード!」

 俺の名前は佐藤築。ゲームが好きな小学6年生。

 ゴットカードは今流行のカードゲームである。自らを神として世界を平和にしていくカードゲーム。通常は兵士やモンスターなどのカードで戦う。しかしそれではあまり人気が出なかったので、何でも登場するようにして人気が出るようになったカードゲーム。あまりにも神の領域過ぎるということでゴットカードは名前とリンクして世界的に大ヒットした。


その頃、俺。

「あれ? 俺が主人公になっちゃった!? 俺のカワイイ妹が主人公じゃないのか!?」

「小学1年生では、一般大衆の賛否が難しいかな。やはり懐モンスターみたいに主人公は小学6年生くらいが妥当だね。アハッ!」

「永遠の小学生6年生だがな。」

 刻々と状況は変わる。対応できなければ死ぬしかないのだ。


「ゴットカード・スタートパック。」

 サービス開始にともなって、1枚おまけつきのお得なカードの販売である。

「カードを引くぞ!」

 スマホでもガチャる感じでカードを引くことができる。

「どれにしようかな?」

 お店ではカードを選んで帰る。


「あれ? ゴットカードがない。売り切れたのかな。」

 お店で見ても人気のゴットカードは売り切れていた。

「あ、あるじゃん。ゴットカード。」

 俺はサービスカウンターの奥にゴットカードがあるのを見つける。

「あそこのゴットカードを下さい。」

「あれは間違いで入荷したゴットカードなんだ。返品もできないみたいで、他すしかないんだ。」

「もし欲しいならサービスでタダであげるよ。」

「ええ!? いいんですか!? 下さい! 下さい! 欲しいです!」

「どうぞ。」

 俺はゴミ同然のゴットカードを手に入れた。

「やったー! ゴットカード貰った!」

 俺はとても喜んで家に帰った。


その頃、俺。

「おお! なんか良い感じに書き始まったぞ!」

「伊達にアニメは見てないぜ! ってか。」

 俺と師匠は珍しく書き出しに手ごたえを感じていた。


「何が入っているかな?」

 自宅に帰った俺はワクワクしながら貰ったカードの袋を開けた。

「なんだ!? このカードたちは!?」

 中から見たこともないゴットカードが現れた。


お店で買ったゴットカードの中身。

・影の剣士。

・影の装備一式。

・影の魔法。

・影のペット。

・影のバスターランチャー。

・どこでも使える1000円クーポン。


「なんか呪われてるな!?」

 俺は影のシリーズを見た時にゲッソリした。

「やったー! 1000円クーポンだ! これでおやつを買いに行こう!」

 その頃の俺はまだ何も知らなかった。

「カゲカゲ。」

 ゴットカードの本当の恐ろしさを。


「よし! ゴットカードやろうぜ!」

「おお!」

 俺は友達の鈴木とゴットカードで遊ぶことにした。


その頃、俺。

「カードって、デジタルカードに進化できないんでしょうか?」

「そうすると開発費やおもちゃ屋さんで売ってるカードの金額が跳ねあがるな。子供が買えない。貧乏なお父さんが買えない。」

 貧しさに負けた。また安いからお父さんが威厳で子供に勝ってあげられる犬のエサのようなモノである。

「そうなるとカードは安い紙のカードにして、家で遊ぶならゴットカードの本体を買ってどこにでも遊ぶ。若しくはスマホにカードを読み取らせて遊ぶ。どこのおもちゃ屋さんにもゴットカードの本体は置いてあると。」

「やはり参加してもらうためには、誰でも1日1回参加してくれたら100円クーポン。勝った人の中からランダムで500円クーポンとかのお金を配りまくりですな。」

 実にゲームクリエイターらしい俺と師匠の想像力という活躍ぶりだ。

「ということで、カードのデジタル化と進化、経験値などはデジタルで継承できると。」

 めでたし、めでたし。


「こい! 佐藤君! 僕のカードはこれだ!」

 鈴木は自分のカードを並べた。

「レベル5の歩兵3体!? いつの間にレベルを上げたんだ!?」

「フッフッフッ! お父さんのクレジットカードをコッソリ借りて、カードを引きまくって被らせたので経験値に変えさせてもらったのさ!」

 犯罪なので良い子のみんなは親のクレジットカードを勝手に使うのはやめよう。

「クソッ!?」

(まずい!? まずいぞ!? 俺のカードは歩兵と弓兵と重曹兵だが、レベルがまだ1と2ばかりだ!?)

 貧乏な俺はスマホで課金や、カードを店で買うことができないので弱かった。

(クソッ!? 貧乏人の俺では奴に勝つことができないのか!? 悔しい! 貧乏に生まれた自分が恥ずかしい!)

 その時、俺は何かを思い出した。

(そうだ! お店でタダでもらったどこでも使える1000円クーポンがある! 俺はなんて幸せ者なんだ! アハッ!)

 俺は前向きに考えた。

(どうせ負けるんだし、おまけの影の剣士のカードでも使ってみるか。)

 俺はカードを並べた。

「破れかぶれだ! これで勝負だ!」

「なんですか!? そのカードは!? 見たことがありません!?」

 鈴木も影の剣士のカードは初めて見た。

「そうなんだ。俺も知らない。お店で要らないからって貰ったんだ。」

(見たことのないカード。きっとレアカードに違いない。いや、もしかしたら超レアの可能性もある。欲しい。アホの佐藤くんがカードの価値に気づく前に奪い去りたい!)

 鈴木は影の剣士カードを一目でイレギュラーなレアカードだと見抜いた。

「良かったら佐藤くん、僕のレベル5歩兵と交換してあげよう。」

「え!? いいの! ラッキー!」

 何も知らない俺は喜んで交換しようとした。

「バカ者!」

 その時、俺の持っているカードが喋った。

「ウワアアアアアー!? カードが喋った!? やっぱり呪われてるぜ!? 俺のカード!?」

 そしてカードがぬいぐるみのように実態化する。

「私は影のペットのカゲカゲ。」

「ぬいぐるみになった!? ぬいぐるみが喋った!?」

「落ち着け。おまえは影の剣士に選ばれたのだ。」

「影の剣士?」

「説明するより、実際に見てもらった方が分かりやすいだろう。おまえは影の剣士をセットして戦うんだ。言う通りにしないと呪っちゃうぞ?」

「はい!? 直ぐにセットします!?」

 こうして俺は影の剣士をセットした。

(なんだ!? 佐藤くんのカードに何が起こっているんだ!?)

 鈴木も理解不能だった。ちなみに佐藤も鈴木も小学6年生である。


「ゴットカード・バトル! スタート!」

 名称は神バトルか、ゴット・バトルでもいいかもしれない。

「いけ! 僕の歩兵さんたち!」

 鈴木の3体の歩兵さんが襲い掛かってくる。

「しまった!? 慌ててて影の剣士しかセットしなかった!?」

「大丈夫だ。陰の剣士1枚で十分に勝てる。カゲ。」

 影のペットのカゲカゲは自信満々だった。

「くらえ! 歩兵さんトリプルアタック!」

 説明しよう。歩兵さんトリプルアタックとは、3体の歩兵さんが連携して連続して攻撃してくる恐ろしい攻撃である。

「ギャアアアアアアー! やられた!?」

 影の剣士に歩兵さんの3本の剣が突き刺さる。

「よく見てみろ。陰の剣士を。」

「え?」

 よく見て見ると陰の剣士の体を剣が貫いているが、血も出ていない。それどころか陰の剣士の体が透き通っている。

「なんだ!? あれは!?」

「影の剣士は体を陰に変えることができるので、相手が特殊な攻撃でもない限り物理攻撃は効かないのだ。」

 恐るべし影の剣士。

「やっぱり呪われてるぜ!?」

「ただのスキルだ。」

 俺は影の剣士の衝撃に冷静さを欠いている。

「佐藤。次に影の装備一式を陰の剣士に装備させるんだ。」

「おお!」

 俺は影の剣士のカードに影の装備一式を重ねた。影の剣士に剣、鎧、盾が装備されていく。

「すげえ! 剣士が騎士になった!?」

「シャドー・ナイトだ。シャドー・ソード。シャドー・アーマー。シャドー・シールドだ。」

 装備一式の名称を考えても面白いかもしれない。

「超すげえ! カッコイイ!」

 これがレアが当たった人間の大喜びの様子だ。

「見た目だけだ! いけ! 僕の歩兵さんたち!」

 鈴木の歩兵が攻め込んでくる。

「迎え撃て! 俺のシャドー・ナイト!」

 影の騎士が3体1の数が劣っているが次々と歩兵にダメージを与えていく。

「強いー! 強いぞ! シャドー・ナイト!」

「そ、そんな!? バカな!?」

 通常カードしか持っていない鈴木では佐藤の影の騎士には敵わなかった。

「佐藤。次は影の魔法を使ってみよう。」

「影の魔法?」

「そうだ。シャドー・マジックだ。」

「おお! よく分からないけど、シャドー・マジック!」

 影の騎士は剣と魔法と両方の攻撃手段を使用できる。

「なに!? 動けないだと!?」

 鈴木の歩兵さんたちの動きが止まった。

「いったい何が起こったんだ?」

「影の魔法で、歩兵たちの影を地面に縛ったんだ。」

「すげえ! まさに魔法だ! 忍術だ!」

 影のペットのカゲカゲは影の剣士の戦い方を教えてくれている。

「次は影のバスターランチャーだ。」

「おお!」

 俺は影の剣士のカードに影のバスターランチャーのカードを重ねる。

「すげえ! すごすぎるよ!」

 影のバスターランチャーを影の騎士が装備した。

「この影のバスターランチャーのエネルギーは、敵の悪意だ。」

「悪意?」

「そうだ。おまえが影の剣士を超超超レアと気づく前に奪おうとしたおまえのお友達の悪意だ。」

「なんだと!? 鈴木! おまえ! 俺からカードを奪うつもりだったんだな!」

「ごめんなさい!?」

 ケンカするほど仲が良い俺と鈴木。

「影のバスターランチャーは鈴木の悪い心を吸収して撃ち放つ最終兵器です!」

「なんて省エネなんだ!? お客さんお買い得ですよ!」

 なぜか通販ショッピングを間に入れつつ。

「よし! やってやる! おまえの悪い心は俺が戴く! 悪意のチャージ・スタート!」

 影のバスターランチャーが鈴木の体から悪意を吸収していく。

「エネルギ―充電100パーセント! くらえ! シャード・バスターランチャー!」

 バスターランチャーからエネルギーの光が放出される。

「ギャアアアアアアー!」

 光は鈴木の歩兵たちを蹴散らしていった。

「勝者! 佐藤!」

 ゴットカードのシステム画面に勝者が表示される。恐るべしゴットカード。何でもありの戦い。勝者はカードが決める。

「やったー! 勝ったぞ! わ~い!」

 佐藤は大喜び。

「良かったね! 佐藤くん!」

 悪意を吸い取られた鈴木は良い子になった。

(佐藤。影の剣士に選ばれたおまえには、これから大きな試練が待っている。がんばれ! 影の剣士よ!)

 影のペットのカゲカゲは何か佐藤の運命を知っている様だった。


「影の剣士は人間の悪意を吸い取るのはすごいね。」

「そうだな。勧善懲悪だ! 相手の悪意を吸い取って良い人間に変えることができるんだからな。」

 次の5万字の勧善懲悪の創作ができた。

「佐藤。おまけに鈴木。おまえたちに話がある。」

 影のペットのカゲカゲが真剣な顔で切り出す。

「誰がおまけだ!?」

「私はいつでも真剣だ。」

 カゲカゲは緩いだけのチュートリアル用の見た目カワイイだけのマスコットキャラクターではなく、性格はハードボイルド路線だった。

「これから始まるゴットカード・バトルの中で、様々な悪意を持った奴がたくさん出てくると思う。そんな奴らをがんばって倒してくれ!」

 ゴットカードの持ち主が良い人だけとは限らない。お金で課金しまくって強くしただけの豚野郎。いじめ、恐喝、膀胱でカードを巻き上げた悪人などの悪意を持った人間は必ずいる。

「おお! 任せとけ! 俺は絶対に負けない!」

「もちろん! 僕も負けませんよ!」

「お互いに助け合おうぜ!」

「はい!」

 佐藤と鈴木はお友達。互いに助け合って切磋琢磨して、ゴットカードを強くしていくのだ。 


「そうだ。佐藤くんの影の剣士は強すぎるから目立ってしまうと思うんだ。そうすると力尽くや罠を仕掛けて佐藤くんから影の剣士のカードを奪おうとする悪い奴が現れると思うんだ。」

「確かに鈴木くんのいうことに一理ある。」

 カードを狙われる危険性が高いのだ。

「そこで提案なんだけど、影の剣士に普通の歩兵の姿に変装していたらどうかな?」

 この時点で影の騎士に2バージョンができることになる。

「偽装か。それも面白いかも。やってみよう!」

「おお!」

 スマホのゴットカードのアプリで影の装備一式・・・・・・名称! ゴット・アーマー! 正確には影の装備一式? シャードのゴット・アーマー。うん。名前ができた。

「できた! これでどこから見ても歩兵にしか見えない。アハッ!」

 佐藤たちは影の装備一式を普通の歩兵の見た目に偽装工作した。どこから見ても歩兵にしか見えない。

「うん。これで誰も俺が陰の剣士を持っているとは思わないだろう。」

 こうして弱いはずの歩兵が、実は強い陰の剣士だったというゴールデン・ストーリーが完成した。

(そうだ。それでいい。悪い奴らの目を誤魔化すんだ!)

 影のペットのカゲカゲは悪い奴らを知っているのだった。


 悪の秘密結社。

「はいはい。魔王です。」

「オレオレ詐欺です。・・・・・・じゃなくて、邪神です。」

「鬼神なんかもいます!」

「魔神でーす!」

「オッス! おら妖怪!」

 等々の悪い人たちが悪の秘密結社マリシャス(意味は悪意)にはいます。

「人間は悪意の塊だ!」

「我々が付け込む人間の心の隙間!」

「自分自身には満足できない!」

「人間の他人と自分を比べる悲しいサガ。」

「そして生まれる悪意! 嫉妬、妬み、ジェラシー!」

「ゴット・カードがあるのなら、我々悪役にもイビル・ゴッド・カードがあってもいいじゃないか!」

 こうして生まれた悪意の塊のカード。イビル・ゴット・カード。大好物は人間の悪意。人の心の隙間に忍び込む。所持することになってしまった人間は悪いことを行うようになってしまう。

「でも勧善懲悪ってことは、俺たち最後はやられちゃうんだよな?」

「じゃあ勧悪懲善にしたらいいんじゃないかな?」

 新しい四文字熟語の完成である。

「それいいね! 最高! ワッハッハー!」

 愉快な悪意の集団マリシャスの面々であった。


「さあ、今日の議題はどうやって人間を悪に染めるかだ。」

「そうだ! 正義のヒーローがいられるのは悪役がいるからだ!」

「まったくだ。俺たちに感謝してもらいたいものだ。」

「ケッケッケ!」

 勧悪懲善マリシャスは悪を考える。

「悪いことを考えよう。」

「刑法を調べればいいんじゃないか?」

「そんな知能的な!? 普通に食い逃げ、万引きでいいじゃないか!?」

「銀行強盗!」

「オレオレ詐欺!」

「ロナ・ウイルス!」

「モリモリ会長の女性軽視発言!」

「まったく。人間は人の上げ足ばかり取って何が面白いんだか?」

「それが人間だ。俺たちが悪さをしなくても勝手に人間同士でいがみ合い、いじめ、暴力を行い、最後には戦争。俺たちが何もしなくても勝手に殺し合うのが人間だ。」

「それって私たちの出番は必要ないってこと?」

「違う! 争い合う人間の悪意が我々マリシャスってことさ。」

「あ、そっか。アハッ!」

「どいつもこいつも頭が悪そうだ。大丈夫なのか?」

「安心しろ。正義のヒーローも無くなることはないが、ということは悪役も仕事が無くなることはないのだ!」

「いよ! 永久就職!」

「やったー! これで路頭に迷うことはない!」

「万歳! 万歳! 万々歳!」

「悪役最高だな!」

「倒されても、倒されてもゴキブリのように湧いてくるのが悪役だ! ワッハッハー!」

「その例え汚い。」

 仲の良い悪役の皆さんであった。

「ゴット・カードは何でもありだから、悪役のニューカマーとして、冷蔵庫さんやブラックひげさんとか、シー坊主さんとか何でも登場させられるからな。」

「超便利! コンビニみたい! アハッ!」


その頃、天界の俺。

「師匠、こんな感じでいいんですかね? 悪役さん。」

「もう少し具体的に詰めた方がいいぞ。これじゃあ、書けないかも。」

「そうですか。具体的にスライム。玉ねぎ魔神。玉ねぎ鬼神。玉ねぎ妖怪。玉ねぎウイルス。玉ねぎAIロボット。こんな所ですかね。あ、玉ねぎモリモリ会長も忘れてた。」

「玉ねぎばっかだな。でも会長はいいかも。権力者が悪いことをしているのは時代劇の悪代官が証明しているからな。」

「そうですね。悪いことをしないとお金持ちになれませんからね。」

 それではそろそろ最後の締め。

「俺では絵面が汚くて持たないのでやっぱり妹を主役にしよう。若しくは俺の同級生のヒロインが必要だ。」

「主役捨てるの早!?」

「これもゴットカードを成功させるためですよ。成功のためなら自己犠牲は払います!」

 俺の心意気である。

「ヒロインは高慢ちきで、おまえに悪意を吸われてカワイイ良い人になるにしよう。素晴らしいアイデアだ。悪意を吸い取り善人にする。これぞ正に勧善懲悪だ!」

「それではヒロインの高慢ちきなセリフをダイジェストでどうぞ。」

 ヒロインの名前はポーちゃん。

「あなた、つまらないカードを持っているとつまらない人生になるわよ。」

「人はカードで決まるのよ。どんなカードを持っているかで相手の印象が変わる。自分の印象が変われば、相手の接し方も変わるのよ。」

 カミングスーン。

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神人の落とし穴隠し 渋谷かな @yahoogle

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