三食目

 包み紙を捲り上げれば、それが現れる。

 平べったく、均等に焼かれた焦げ茶色。その焦げ茶へと被さるように蕩ける黄色。それらを二つの薄茶色が挟んでいる。それぞれが自らの存在を主張しながらも、ひとつの個として存在していた。

 現れたそれを見つめたまま、開ける時に手についたものを舐める。濃厚な、しょっぱくて、ほんのりと甘い味がした。

 この味だ。いつもの味。

 口元へとそれを近づけて、大口を開けてかじりついた。

 内から染み出てくるような味がする。噛めば噛むほどにバラバラだったそれらが舌の上でひとつになる。こってりとしていて──もう一口もう一口と止まらない。

 二口、三口。あっという間にそれは手の中で小さくなり、押し込まれるように胃袋へと収まった。

 少々濃すぎるくらいの味だ。甘いジュースを飲み下し、ふはぁ、と一息つく。そうすれば、またあの味を求めてしまう。

「──また来よ」

 ゴミを所定の場所に投げ入れ、トレーを置いて店を出た。

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名乗らない食べ物 春野訪花 @harunohouka

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