雪穂編
雑に言うと、転生した。
悪役令嬢にではなく、BLの世界に。
そして、前世私の友達だったみんなは羨ましがることだろう。
私には可愛い幼馴染がいるのだ!
「おはよう、ゆっくん」
「おはよう、雪穂」
おっちょこちょい、冴えない、可愛い、このすべてを満たしている存在、それが今世の私の幼馴染だ。
「雪穂、今日は俺がっ……ってうわっ」
「! 危ないっ」
派手にその場に転けてしまう姿も可愛い。
さすがボーイズにラブな世界線とでもいうのだろうか、確実に受けな要素が満載である。
今は私のスカートの中身に顔を赤らめているような初心な彼だが、多分数ヶ月後には男の子に対して顔を赤らめていることだろう。
私は自分で言うのもなんだが、それなり賢い、それなりに可愛い、それなりに料理ができるという補正をかけられている。
完全に当て馬補正だ。無念。
しかし幼馴染という立ち位置ゆえ、例え噛ませ犬の女ポジションだとしてもその恋の行く末を近くで見守れるというのは嬉しいことだ。
「……あ、なつくんだ」
「おはよう! 雪穂、夕里」
不意に視界に映ったのは、ゆっくんこと幼馴染の彼氏候補の一人、なつくんである。
ゆっくんの一つ前の席に陣取る彼は、運動神経抜群のクラスの中心的な人で、ゆっくんとは友達になるようなタイプではないように見えて、割と昔からずっと友達だ。
これは確実に確実だろう。
「あ! 夕里!」
「おはよう、ユリ」
多分現実世界には有り得ないであろう艶々としたツインテールを揺らしながら駆け寄ってくる女の子は、私と同じ当て馬ポジションに当てられてしまったであろうユリちゃん。
しかし彼女はとても可愛いので、何とかして悲しまない方向に持っていきたい。私としては悲しむ(風に装う)のは私だけで十分なのだ。
「ユリちゃんおはよう、ねぇ、今日の課題なんだけど……」
「あぁ、あれね……えっと……」
それとなくユリちゃんと2人で、ゆっくんとなつくんから離れる。
あの2人はあの2人でよろしくやるであろう予想は出来ているので、私たちは私たちで暖かく彼らを見守るのみだ。
何を話していたのか、不意になつくんがこちらを振り向く。
邪魔はしませんからお好きにどうぞ、という意を込めて笑顔を返す。
するとゆっくんも何故かこちらを見つめてきた。
一瞬不思議に思ったが、よく考えると、今の段階ではまだゆっくんの恋愛対象は女性なのだ。
男の子二人で距離が近いことをどう思われているのか気にしているのだろう。
私は大丈夫だよ、という代わりに、ゆっくんにもにっこりと笑いかける。
すると、ゆっくんもにこり、と可愛らしい笑顔を返してくれた。
なつくん、早いとここの可愛いヒロインを落としてくれないと、本当に私は噛ませ犬になってしまいそうです。
お互いをヒロインだと思っている2人 花座 緑 @Bathin0731
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます