掻きはじめ

森の中を抜けて、急に視界が変わる。


「うぁー!!」


「やっと抜けたが、、、」


♪♫♪♫♪♫♪♫


 極寒の雪山地から暖かな陽射しが差し込む森へ、

先程まで移動していた2人。


 そこからコガメが指し示す方向へ、歩く二人。


「ここで問題だ、コガメ君」


「う?」


「この世界のベースとなっている地面の形はなんだと思う?」 


 まだまだ森を抜ける気配がなく、だがなるべく急いで目的地に辿り着きたい。そんな考えが大半をを占めているが、実際問題、隣にいるアカメに酷似しているコガメの事も気になるのだ。


さりげなく話のネタ的な意味で、突然の質問をコガメにぶつける。


「うー?」


「選択式だ。1、海 2、砂「あう!」っとまてまて、最後に3、石 どれだと思う?」


「あう!」 


 目繰が手で数字を示し、ピースの形をコガメに見せながら言った質問に対して強く頷きながら返す。


 質問が終われば、即座にドヤ顔でこちらにピースをして返す。


「正解は、、、」


「…ゴクッ」


「俺にも分からん」


「?!……うー!!」


 知らんのかい!不服!滑稽!と言わんばかりにポカポカと目繰を叩く。意外と力が強いため、地味に重みを感じながら謝る。


 この地を永く歩き続けてきたが、正直に何も分からないと言うのが目繰の見解であり、それが正解とも言える。


 ただ、この質問で分かったことがある。


「やっぱりお前のことはアカメと思うことにする。そのほうがスッキリするし」


 今の質問で得られたことは、やはりコガメはアカメ、若しくはアカメにひどく近いもの。それならば、もうアカメと思っていた方が頭がスッキリする。


 "堂"は底に近い形で存在している。そこに来るまでにあったのは"砂"なのだ。"堂"は移動し続け、もしかしたらそれ以外の回答もあるのかもしれない。だが、アカメとこの2人を合わせた3人の認識が合うのは砂であるため、仮定に過ぎないが、そう結論付ける。


「俺の癖みたいなもので、雑だと思いきや色々考えちまうんだよ。だから、この時間を借りて勝手に決めつけさせてもらった。ほんと…俺は何ものなんだろうな…。」


「いーんーえーんー」


「え?なんか言ったか?」


「あい?」


 なにかコガメが意味のある言葉を言ったような気がしたが、視界が開けた場所に出たため、そちらに意識を取られる。


(出たのはいいが、森が広いな…。広場みたいだが、奥にはまた森…。しかも結構いりくんでるし。コガメを抱えて走るか?)


 夢現の中、アカメが最後に言った言葉を思い出す。ーー何かが起こっていると。


 それは、自分の怪我の治り具合が早いためだけだったのか、それ以外の事も含めのことだったのか、分からない。


(もう一回あそこに戻って夢の中にもどるか?でもなぁ…。)


 再び同じ状況を作り出したとして、もう一度あの場所に行くことができるかという保障はないこと、コガメがいる時点で一人にして置けないため、その線は消える。


「引き返すな、進め。進むことを考えろ。俺は一人じゃない。」


「あう?」 


「一回、我慢できるか?」 


「?」 


 このままコガメを連れている以上、好き勝手には動けない。しかし、早く目的地とやらに辿り着きたい。この先に何かがある。


 コガメが指し示したからというのもあるが、段々歩くに連れ雰囲気が少しずつ変わっていくのが自身の肌でも感じ始めている。


「よいっしょっ!ほら、ちゃんと捕まってろよ」


「?」


 今から自分がどうなるのか分かっていないのだろう。


「さて、助走距離は充分っと」


 お姫様抱っこをして自分の首に手を回させる。円形の広場から指し示す方向のちょうど向かい端に移動しする。


「成れ」


そう言葉を発した瞬間、目繰の足を光が包む。


「捕まってろよぉぉおお!」


「??」


 軽い助走から始まりーー


 広場の中心に到達、そして


 急速に加速ーー


「ヨッ!」


 飛び上がる。


 だだっ広い緑が真下、あたり一面に広がっており、あのまま歩いていれば時間が取られていたであろうことが予想されるが、次々と過ぎて行く景色の移り変わりが早い。


 目繰が思い付いたのは、単純にルートの短縮。つまり、森を抜けるには森を通らなければよく、上空を移動というものであった。


「きもちぃぃいいい!ふぅ〜!!!」


「…」


 視界に森の終わりが見える。このままいけばちょうど、終わりの辺りに着地する。コガメはフードを深く被せているので、表情が見えない。


 ダンッ  ザザー


 無事着地に成功しする。すぐさまカゴメの様子を確認する。


「……」


「お、おい。やっぱり怖かったか?」


「……」


 コガメの体がブルブルと小刻みに震えている。


(あちゃー、やっぱりまずかったか。)

 さすがに、心構えも経験もなく絶叫アトラクションのようなことをしてしまったのはまずかったか。と、後悔がつのりはじめる。


 しばらく待って落ち着かせようと、ごめんな と言いながらゆっくり座り抱きしめる。背中をポンポンと叩き、宥めるが震えは徐々に増していく。


「ご、ごめんな。悪かったよ。ほんとごめん。なんでもするから、な?」


「……。」スッ


 現時点、森を抜けた先は砂漠地帯。


 周りにあるのは砂地である。高低差もなく、遠く広くまで広がっている視線の奥に黒い粒が見える。それに対し、指を指すコガメ。


「なにか…誰かいるのか…?」


 揺れているように見えるそれはこちらに向かって近づいてくるようにも、見えなくもない。


 ただ、それを見ていると心がざわつくのだ。


 しばらくカゴメを抱きしめ、それを見つめていると、やはり近づいて来ている様で、黒い粒が人形だと分かる位置まで確認できる。


「コガメ…。あれが…怖いのか?」


「…!」


 質問された答えとして返ってきたのは、激しく頭を縦に振る行為。


 真っ黒なそれがもう100mぐらいの位置まで近づいて来た時にはそいつの姿がはっきりみえた。


 全身真っ黒に周りに黒のオーラのようなものが纏まり付きウネウネと全てうねっている。


「ば…ばっ……ばぁ…」


「コガメ、後ろに隠れて距離を空けて待ってろ」


「ばあ……ゔっ、ぶう…」


「おい、お前、止まれよ」


 呼びかけても止まる気配は、ない。


「在れ。止まれよ、おい」


 すかさず、短槍の片鎌槍を出し、構える。


「あ…」


「…。」


「…あ…か…」


「あか?」


 瞬間    「えうい!」 


 ブワワワワワワ    ッバンッ!







 弾けた。






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