ひとりだった。
♪
景色は辺り一面、砂。砂漠になっているが時折、文明的な
♪♪
景色は辺り一面、森。獣道さえも存在しない、ただただ緑があるだけ。
♪♪♪
景色はあたり一面、雪。白い世界に目の前が染められている。
♪♪♪♪
イヒ
目繰は自分が今どこにいるのかも分からないぐらい周りが闇に包まれている中、ポツンと膝を抱えながら一点を見つめている。
そうしているとざらざらと模様が浮かんでくるようで、楽しい。
一緒に話す。笑う。悲しむ。食べる。怒る。食べる。そうすると気が紛れる。静けさがいなくなる。
そんな気がするから。
♪
晴れ
ブルブルブルブルブルブ
「はてさてはて、ちくわも今日もいけますかぁ、っと。ん?」
頭の中で何かに気付く。
「なんだ?この組み合わせ。」
歩き始めようと片足を前に出した状態で静止しながら、頭の中を確認する。
『ちくわの生花』
「ちくわの生花かぁ、うんうん。おけまるおけまるー。って、そんなもん見たこと聞いたこともあるかいっ!」
前衛的すぎる本日の※※※※※にツッコミつつもそれを想像する。
「うん、想像できちまう。できちまうけど、シュールすぎだろ。いや、」
考える。
ちくわと生花
一見、アンタッチャブルな組み合わせだと思いがちだが、華道に於いて花は欠かせない物だという考えこそ取り払わなければならないのではないか。
「もっとだ、もっと」
思考に
造花というものがある。文字通り物を使って人工的につくる花である。これをちくわで作くることができれば、それはもう生花ではないのか。
「足りない、もっと」
思考に浸る
溺れる
規則的に羅列されている天井、嵌め込み式の蛍光灯の内の一つを通り過ぎるかのようにちらっと何かが頭の中を通り過ぎる。
パクッ
「ちくわの片端長さ1/3を円に沿って30度の間隔を空けながら切れ込みを入れて、ちくわを咲かせることができるのではないか。そうすれば……」
ここまでの思考 29秒
「よっしゃっ!じゃあきょぅ」
『未熟 カ※レオ※
「あ」
意味不明な力だと思いつつ、なんとなく、ちくわの生花っぽい顔をしながら歩こうとした目繰だったが、頭の中に声が走る。
やれやれとポーズを取りながら、めんどくさそうに再起動を試みる。
「んー、汗かかないしなここ。すべすべだから近くに水辺はないかなぁ。水辺やーい」
自分の体をさすさすしながら、辺りを見渡す。
辺り一面、砂
生体反応、なし
レベベベバベルォボエベレレ
イヒ
レベベベバベルォボエベレレ
イヒ
レベベベバベルォボエベレレ
イヒ
「おえっ」
一点を見つめる
一点を見つめる
一点を見つめる
一点を見つめる。
「いつまで……」
「」
一点を見つめる
「いつまでこんなこと続けなくちゃいけないんだ。」
ただ、荒廃した世界を歩くだけ。
これになんの意味があるのだろうか。
誰でもいい。誰でもいいから何かに会いたい。縋りたい。会って話をしたい。触れ合いたい。
しかし、人間や動物などすでにいない。この結論にたどりついたのはこの世界で目覚めてから早い段階で理解はしていた。
目繰は人間である。それも手垢のついた。
悠久とも言える時間をこの世界で過ごしてきた目繰は、自分が今狂おうとしているのかそれとも正気なのか分からない。ただ、この世界で生物が存在しないこと以外で分かっていること。
狂えない、死ねない。それだけ
そして、どうしようもなく
ひとりだった。
「はぁ、狂えない。死ねない。だから狂ったフリをする。それもまたこの世界を楽しむ
フラフラとまた荒廃した世界を、歩き出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます