第17話 懲りない男

 さてそんなわけで。

 うららの機嫌は治らなかった。

 家から出てみると、普通にその辺にいたのだが。


「うー!」


 俺と目が合うなり、そんな唸り声を上げる。

 お前はウルトラ怪獣かよと思っていると、うららはプイッと顔を背ける。

 ザ・機嫌が悪いのポーズだった。

 なんだよ。

 ちょっとおっぱい揉んだだけなのに。

 ……果たして、それはちょっとの問題なんだろうかという気もするが。

 気にしたら負けだって偉い人が言っていた気がする。

 しばらく放っておこう。

 そのうち機嫌も治るだろう。




 家を立てたのは、小高い丘の上。

 うららんちのお隣である。

 家自体には、満足している。

 しかし、立地が。

 丘の上には、水場が小さな湧き水しかない。

 身体を洗いたい時なんかは、麓の小川まで降りてこなきゃいけない。

 石ころなんかの素材も麓だし、食料となるうりぼーがいるのも麓である。

 丘を降りるまで、徒歩で約10分。

 再び登る時は、その倍の時間がかかる。

 しかも上りは、小太り中年の膝を酷使する。

 呼吸もぜひぜひしてしまう。

 つまり、立地が最悪。

 なんであんな場所に家を建ててしまったのか。

 まあ多分、危険は少ない。

 見晴らしはいいし、隣に美少女が住んでるとか胸アツなのだが。


「う、うー!」


 ふとその美少女を見ると、プイッと顔を背けていた。

 まだ機嫌は治らないらしいが、なぜか近くにいる。

 そんなんだからすぐにセクハラされるんだぞ、と言いたいが、セクハラはしたいので何も言わない。

 まあうららは放っておいてですよ。

 我が家の問題点の立地。

 それを解消するために、丘の斜面に階段を作ろうかなと思った。

 家の土台として使用した『石の床』。

 素材を集めて、作成と念じると1辺が1メートルくらいの立方体ができる。

 これを設置する時は、透明な立方体のマークが表示されて、どこに設置するかを指定できるのだが。

 この透明な立方体マーク。

 地面にめり込んでいても、設置場所として指定できるのだ。

 つまり、丘の斜面に対して、水平な足場として設置できる。

 我が家から、麓の小川あたりまでの階段を作ったら、行き来が楽になるんじゃないかと思ったのだ。

 道路を通す的な。

 凸凹した斜面を上り下りするのは、かなり疲れる。

 整地された階段だったら少しはマシになるはず。

 ……距離は数百メートルあるが。

 え、何個石の床を作んなきゃいけないの??

 まあやるけど。

 暇だし。

 何よりも、生活が満たされていく感じがして楽しい。


 そんなわけで、ひたすら『石の床』を作る。

 必要な素材は以下の通り。

 ・石 ×80個

 ・木材 ×40個

 結構なコストだった。

 その辺にある岩を『石のつるはし』で砕いて、『石の斧』で木を切り倒す。

 ちなみにつるはしで木を破壊することもできるし、斧で岩も砕けるのだが、取れる素材は少ない。

 やっぱり岩にはつるはし、木には斧なのだろう。

 慣れたのもあって、『石の床』を作るために必要な素材は、30分かからないくらいで集められた。

『石の床』をしゅるるーっと作成して、ポンと設置する。

 山の斜面に、階段の1段目が完成した。

 これを繰り返して、川までの道を通すのだ。

 そんなわけで、ひたすら素材を集めて、『石の床』を作り続けた。

 石を砕いていると、たまに鉄鉱石がドロップするのが楽しかった。

 鉄鉱石は剣などの素材である。

『石のつるはし』や『石の斧』みたいな石器から、鉄器になれば文明レベルは飛躍する。

 楽しみである。

 鉄鉱石はレアドロップなので、まだまだ先の話だが。

 そろそろ剣を作れるくらいは溜まっているかもしれない。

 家の窓を作るために、同じくレアドロップのクリスタルを集めまくったので。

 家を作る工数の半分くらいは、窓にかかっていた。

 大変だったが、クリスタルが取れた時はテンションが上がるので、結構楽しかった。

 今もそうである。

 コツコツと素材を集めて、少しずつ階段を作る。

 地味だが、楽しい。


 そんなこんなで、階段を5つくらい作った時だった。

 ぐぎゃーと俺の腹が鳴る。

 中年の腹の音は、怪獣感があるのである。

 くるるー。

 そんな可愛い音が聞こえてきたのは、相変わらず近くにいるうららからだった。

 そういやいたな。

 階段を作るのに夢中で、すっかり忘れていた。


「う、うー……」


 相変わらず唸って不機嫌アピールをしているが、どこか元気がなかった。

 プイッと顔を背けるものの。


「……うー?」


 どこか不安そうに、ちらっと俺を見てくる。

 ずっとほったらかしていたせいだろうか。

 寂しくなっちゃったらしい。

 可愛いかよ。

 そろそろ昼だった。

 腹の減る時間である。

 ここは、大人である俺から歩み寄るか。


「飯にしようか?」


 そう声をかけてみる。


「うら!」


 うららはニコッと嬉しそうに返事をした後。


「う、うら! うらーー!」


 顔を少し赤らめて、プイッとそっぽを向く。

 思わず頷いちゃったけど、まだ怒ってるんだぞ! ということらしい。

 ちょっとおっぱい揉んだだけなのに……。


 しかし、腹減ったな。

 幸い肉となるうりぼーはその辺で、ぷぎぷぎ鳴いているのだが。

 アレとったところで、俺には火をつけられない。

 一度、うららのマネをして木に枝を差してシコシコしてみたのだが、一向に火のつく気配はなかった。

 あんなん文明社会でぬくぬくと暮らしていた俺には無理である。

 そういえば木材のレシピになんかあったな。

『焚き火』

 ・石×10個

 ・木材×2個

 ・火打石×1個

 なんか火が付きそうな予感がプンプンする。

 ちなみに火打石というのは、石を砕いているときにもりもりと取れるオレンジ色の欠片である。

 虫眼鏡で作れるレシピを調べてみると『焚き火』だの『かがり火』だのと大したものは作れないし、死ぬほど取れるのでハズレドロップだと思って、ポイしていた。


「うらー」


 そんな時、うららがスススっと近づいてくる。

 腕を組んで、そっぽを向いたまま。

 コツンと肩をぶつけてくる。

 何か期待をするようにソワソワと。

 これはアレだろうか。

 乳を揉んだことを謝罪すれば、火を熾して昼飯を食わせてやる的な?

 小娘のくせに!!

 ……まあ、謝罪はすべきな気もするが。

 しかし、待てよ。

 俺そんなに悪いことをしただろうか。

 これでもか! ってほど見せつけてくるおっぱいを揉んだだけである。

 おっぱいはそこにあった。

 だから揉んだ。

 至極まっとうな論理である。

 そこに罪はない。

 第一減るもんでもない。

 裁判でも、異議あり! で無罪放免になる理屈だった。

 よって謝る必要はない。


「うら!?」


 そんなわけで、うららを無視して『焚き火』を作成した。

 階段作りをしていたので、素材は十分すぎるほどにある。

 しゅるるー、ぽん。

 目の前に、石で囲まれた枝を積んだものが出現する。

 まあ、一言で言うなら、火の消えた焚き火である。

 でもこれ、しゅるるーぽんで作る必要ある??

 こんなん普通に作れるわ!

 と、思っていた時期が私にもありました。


『木材などの燃料を置いて下さい』


『焚き火』を眺めていたら、そんな文字列が表示された。

 試しに木材を置いてみる。

 しゅぼっと。

 メラメラと炎が立ち上る。

 え、便利。


「うら!?」


 隣で見ていたうららが驚きの声をあげる。

 そらそうだ。

 今まで必死にシコシコしながら火を熾していたのに。

 木材を置いただけで火がついたのだ。

 なんじゃそらと言いたくなるだろうが。


「うらー」


 うららは『焚き火』を眺めて、目をキラキラとさせていた。

 便利すぎることを理不尽に思うよりも、憧れたらしい。

 素直で可愛い。

 まあ、なんだな。

 謝罪を要求したりして、ちょっとイラッとしたが。

 ここは大人である俺から歩み寄ろう。


「さあ、うらら。ご飯にしようか。俺の作った焚き火を使うといい」


「うらー!」


 肩に手をポンと置くと、うららは嬉しそうに身を寄せてくる。

 可愛い。

 なんか機嫌も治ったかもしれない。

 うららはニコニコと俺を見上げている。

 なんというかやたら整った顔をしている。

 金髪碧眼の美少女。

 ピタッと密着した身体は柔らかくて、いい匂いがして。

 すすっと。

 肩に回した手を下に滑らせていく。


「うら?」


 背中をさすさす。


「うらぁ」


 くすぐったいのか、うららはけらけらと笑っていた。

 そのまま手は更に下へ。

 アレでしょ。

 乳を揉んだら怒るんでしょ?

 タツヤ学習した。

 なら。


「うう!?」


 はあはあと息が荒くなる。

 手はうららのほっそりした腰を経由して、スカートへ。

 ムチッと盛り上がったぷりぷりの尻へと。

 肉の詰まった魅惑的な尻に到着した瞬間。

 もみぃっ! と。

 五指に全神経を集中させて、柔尻に食い込ませた。

 や、やわらか……。


「うがああああ!!」


 なぜかうららが全力で噛み付いてきた。

 え、尻を揉んだだけなのに

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文明のない世界に転移したら、原住民が美少女だったので 油揚メテオ @meteo-aburaage

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