第16話 うらら開発計画 ①

 そんなわけで、朝がやってきた。

 作ったばかりのマイホームに、眩しい朝日が差し込む。

 ちゅんちゅんと鳥のなく声がする。

 爽やかな朝だった。


「うらあ……」


 うららも目を覚ましたらしい。

 ベッドの上でムクリと身を起こして、寝ぼけまなこを手でくしくしと擦っている。

 わふっと小さくあくびをして。


「うーーっ!」


 ベッド上で、猫みたいに背中を伸ばしていた。

 ぷりっぷりのケツを上げて。

 申し訳程度の布切れしか身に着けていないくせに。

 お前の服装、ギリモザかよと言いたい。

 そんなギリモザファッションで?

 身体を伸ばしたら?

 普通に見えてはいけないところが、がっつり見える。

 ぷりぷりの尻と、ばいんばいんの乳房。

 つくづく思うが、この女の身体はエロすぎるのだ。

 辞めてほしかった。

 一晩中、お預けを食らった36歳の隣で、何してくれてんの? と言いたい。

 しかも同じベッドの上で。

 こちとら徹夜である。

 一睡もできなかった。

 爽やかな朝日とかくそくらえである。

 なぜ徹夜なのか。


「オハヨ! タツヤ!」


 うららが挨拶をしてくれた。

 朝にふさわしい屈託ない笑顔で。

 そして、普通に可愛い。

 しかし俺が徹夜をした元凶は、この女なのだった。

 金髪碧眼のエロい格好をした美少女。

 そんなのに? 昨夜寸止めのお預けを食らって?

 寝れる奴なんていたら、神メンタルである。

 眠れるわけねえええええ!!

 36歳にもなって、悶々としたパトスを持て余して徹夜するとか。

 一体、神は俺にどんな試練を与えてんのか。

 お前ちょっといい加減にせえよ、と神に言いたい。

 ちなみに、お外でこっそり処理には3回行った。

 それでも収まらない、ボクはもう限界です。


「……タツヤ?」


 頭を抱えこんで、くねくね苦悩してたら、うららがそんな言葉をかけてくれた。

 こてんと首を傾けて、青くてくりくりした瞳を俺に向けている。

 え、かわいい。

 言葉もロクにしゃべれない原始人のくせにめちゃくちゃかわいい。

 この世界は一体どうなってんだ。

 こんな美少女と荒野出会うとかどうなってんだ。

 せめて元いた世界で出会えていたら……一瞬で逮捕されるんですけどね。


「うらら!!」


 しかし、幸いなことにこの荒野におまわりさんはいないのだ。

 荒れ狂う下半身の狂ゾウさんに命じられるがまま。

 ガバっと抱きしめても、おまわりさんはボクを逮捕しないんだ。


「うらー」


 抱きしめても、うららは抵抗しなかった。

 柔らかくて、いい匂いのする身体が、俺の腕に収まっている。

 パオーンっとうちのゾウさんもご満悦だった。

 そう。

 ハグまではOKなのである。

 俺は一晩徹夜で考えた。

 ボーダーラインを探そう、と。

 昨夜は、下の大事なところに手を出そうとしたから噛まれたのだ。

 そんなところ、触っちゃたら、そりゃ噛まれるよね。

 知ってた。

 でも、触りたいところは他にもあるじゃない。

 昨日ちょこちょこと身体をまさぐってみたけど、意外といけた気がする。

 とりあえず、そういうところを触って、ゾウさんを慰めつつ、うららを開発して、許容ラインを下げていこう。

 そう、俺は考えたのだ。徹夜で。


「うらら……」


 そんなわけで、至近距離でうららの名前を読んでみた。

 情感たっぷりに見つめて。

 言外にたっぷりと意味を込めて。

 ちなみに、込めた意味は、乳触るけどいい? である。


「うらー」


 うららはにっこり微笑んで、見つめ返してくる。

 はにかんだ笑顔に、白い歯が溢れる。

 これアレですわ。

 乳揉まれてもいいって顔してますわ。

 そんなわけで、うららの胸元に指を這わせた。

 36歳は愛撫などしない。

 がっつりと鷲掴む。

 五指が、むにゅっと乳房に食い込んでいた。

 ギリモザファッションのせいで、ほぼ生乳である。

 温かい。

 そして、やわらかああい。

 俺は幸せな気分に包まれた。


「うがーーー!」


 !?

 え、お前とか喋れたの!?

 やだ、うららさんが進化している。

 そして、がぶりと思い切り噛まれた。

 ええええ!?

 下じゃないじゃん!?

 そこまでエッチなことでもないじゃん(?)


「えっち! タツヤ、えっち!!!」


 眉を思い切りへの字に曲げ、ベッドの上でジタバタするうらら。

 その顔は真っ赤で。


「うがーーー!」


 なにやら怒り心頭と言った感じだった。

 なんとなくセリフが浮かんだ。

 喋れるわけない気もするけど。


「……うらら、そういう時はバカって言うんだ」


「ばかーーー!! タツヤ、ばかーーー!!」


 いやだから、喋れるんかいっ!

 うららは悪口ばかりを覚えていく。

 悲しい。


 そんなわけで、うらら開発計画は頓挫した。

 乳がだめなら、尻は? と思ったが、試す前にうららは家を飛び出してしまった。


「ばかーーーー!」


 捨て台詞を残して。

 だが、俺は諦めない。

 あの女を開発して、狂ゾウさんの餌食にしてやるのだ。

 とりあえず、それを生きる目標にしよう。

 36歳は、前向きな気分になった。

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