第15話 寸止め

 やがて日は落ちて。

 外で焼いたうりぼーの肉を、1階のテーブルでうららと食べた。

 光源がないので暗いが、窓から差し込む月明かりは十分に明るい。

 石のレシピに竈があったので、室内に調理出来る場を作ってもいいかもしれない。

 生活が充実していく、夢が広がる。

 なんでこんな場所に飛ばされたのか?

 そんな疑問はもうどうでも良くなっていた。

 風雨がしのげる場所で、ベッドで眠れる。

 それだけ十分な気がするのだ。


 食事を終えて、2階に上がる。

 そろそろ眠気を感じる。

 風呂も欲しいが、それも追々である。

 フカフカのベッドに腰を下ろすと。


「うらー……」


 うららが、眠そうに目をこすりながらベッドで横になろうとしていた。

 普通に付いてきていた。


「いや、帰れよ」


「うら!?」


 お前んちは隣だろうがと言いたい。

 もともと夜は別々に寝るべきだと思っていた。

 もう俺の理性は限界だったので。

 隣で金髪美少女が無防備に寝ているとか。

 そんなのは、いけない。

 俺のアレはパンパンなのだ。

 この10日間で、何度かバタ子さんの襲撃を受けた。

 もしかして別人だったのかもしれないが、みんなすべからくバタ臭い顔をしていたので、バタ子さんと呼ぶことにする。

 バタ子さんは常に全裸だった。

 渡りに船とばかりにバタ子さんを捕まえて、性欲を発散しようとしたのだが。


「うらーーーー!!」


 すべて、顔を真っ赤にしたうららに阻止された。

 なぜ。

 彼女ヅラで嫉妬をしているのか、ただ単に近くでエロいことをされるのが嫌なのか。

 とにかくうららは俺の性処理を邪魔し続けてきた。

 馬鹿な女である。

 俺のビーストがメルドダウンしたら、まっさきに被害を受けるのは自分なのに。

 パンパンなアレでパンパンされるのは自分なのに。


「うらら!!」


 そんなうららは俺のベッドにひしっとしがみついていた。

 絶対に帰らないぞの構え。

 自分が何をしているかわかっているんだろうか。

 ここは大人として、危険をわからせてやらなければならない。

 いや、仕方なくね?

 よく映画とかドラマであるじゃんね、そういうシーン。

 そんなわけで、ガバっとうららにのしかかる。

 もう俺は限界だったのだ。


「うら……」


 ビクッとするうらら。

 その顔がどんどん赤くなっていく。

 青い瞳には、俺だけが映っていた。

 月明かりを照らす、綺麗に澄んだ瞳。


「タツヤ……」


 うららの吐息がかかる。

 歯磨きもロクにしてないくせに、その息は甘くて。

 俺の名前を呼ぶ桜色の唇は、ひどく艶めかしかった。


「んっ……」


 唇を重ねてみれば、驚くほど柔らかくて、暖かくて、甘くて。


「あっ……んんっ……」


 うららの小さなうめきが、俺の脳を麻痺させていく。

 小さな頭を抱き寄せて、滑らかな金髪に指を絡めた。

 柔らかな身体をまさぐる。


「あっ……」


 うららは抵抗しなかった。

 小さなうめき声が、やたら色っぽい。


「タツヤ……」


 うららが俺の背中に手を回す。


「んんっ……」


 うららは抵抗しなかった。

 これはいける!!

 脳内の全俺がゴーサインを出していた。

 この変な場所に来てから、約半月。

 溜めに溜めまくった波動砲を解き放つのは今だった。

 俺はじわじわとうららのスカートに手を伸ばして。


「あっ……んんっ……う、うら!」


 何かを必死に耐えるうらら。

 そんなうららの頭を撫でて。

 うららの大切な――。


「うらーーーーーー!!!」


 がぶり、と。

 うららが俺の肩を思い切り噛んでた。

 ええええええ!?

 ここで!?


「えっち!! えっちえっち!! タツヤ、えっちーーーー!!!」


 真っ赤な顔をしたうららがじたばたと暴れている。

 えっちと連呼されても。

 そうですけど、何か? としか言えないのだが。


「うーーーーー!」


 うららは涙目で俺を威嚇していた。


「いや、だからな? 男のベッドで寝たらこういう事されるんだぞ? さっさと自分の家に帰れって」


 とりあえず、当初の目的どおりにそんな説教をしてみた。

 荒ぶるビーストを猛らせながら。

 あそこまでいっていたので、未練はマックスだった。

 え、あそこまでさせといて?

 この女なんなの?

 寸止め女王とか目指してんの?

 ドSなの??


「うら!!」


 俺の説教も聞かず、うららはプイッと顔を背ける。

 俺の過剰すぎるセクハラ、というかレ○プの一歩手前に完全にへそを曲げてしまったようだった。

 いや、悪いのはお前だかんね?


「タツヤ、エッチ! うら! うらら!!」


 プンプン怒りながら、こてんと横になるうらら。

 って寝るのかよ!?

 帰れよ!!!


「うら! うららーー! うら……らら……すうすう」


 寝たーーー!!!

 こいつマジかよ。

 あんな事があった後に、すぐ寝るとか。

 どんなメンタルしてんだよ。

 逆メンヘラかよ!!!

 ……逆メンヘラってなんだろう。


 さてどうしよう。

 この猛りきったビーストをどうしよう。

 ベッドの上ですうすうと気持ちよさそうに寝息を立てるうらら。

 これ犯しても、どんな裁判でも勝てるだろう。

 むしろ無双できる。

 が、しかしですよ。


「うらーーーーーー!!!」


 噛み付いてきたうららの必死な顔。

 脳裏にチラつくのだ。


「はあ」


 ため息をついて、俺はこっそりと外に出た。

 うららを起こさないように。

 一人で処理するために。

 36歳。

 小娘に弄ばれている感がすごくて、情けなかった。

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