オチ・考察
澄岡京樹
出オチ
オチ・考察
「なあ、出オチってどうやれば良いんだ?」
「この時点で既に出オチじゃないですね」
以上のやりとりを以って、結果的に出オチっぽくなった。
オチ・考察、了。
「いや『了』じゃないが」
先輩が僕に激しく抗議してきた。なるほど、彼女的にはこれでは納得がいかないということなのだろうか。
「はぁ。じゃあ今から仕切り直しますか? 来るのわかっている状態で繰り出す出オチってかなり難易度高いと思いますけど」
「お前はさー! そうやってハードル上げるよなー!」
ぶーぶー文句を言う先輩。上げるも何も、ただの事実だと思うのだが……。
「ハードルというものは繰り返しの中で上がりがちです。何も知らない状態で体験するのと、対象の内容を知った上で類例を体験するのとではどうしてもファーストインプレッションの方と比較してしまうことが多いと思いますが」
僕はそう言いながら昨日プレイしたゲームのことを思い出した。確か、主人公がハードル跳びをしているのを作中人物のほぼ全員が見ていたことが判明したあたりまで進めたと思う。
そこでふと、アイデアが思い浮かんだ。
「あ、じゃあ先輩。こういうのはどうでしょう。起承転結とは言いますが、強烈すぎる『起』はそれだけでもう『結』……つまりオチになり得ます。要は『この導入は出オチとして扱う』的な特殊ケースになるかもしれないということですね。
……ではどうするか。答えは簡単、先輩には今から校庭にある伝説の樹に向かって『運命の相手現れろや!!!!!』って突撃していただきたいのです」
「なんで!!?」
なんかその樹の下で愛の告白に成功すると永遠の幸せを手にすることができるらしいので、上手くいけば先輩の幸福にも繋がるだろうと考えたのであった。
「なんでもなにも、それだけ多くの人が見ているわけです。運命の相手がいるかもしれません。そして思惑通り運命の相手が現れたら先輩の勝利、現れなくてもオチが発生するので先輩の目標は達成されこれまた勝利。完璧なロジックでは?」
眼鏡を指でクイっとしながら僕はそのように言った。すると先輩はこう言った。
「じゃあ一緒に樹の下に来てくれよ! 恥ずいけどそれがスマートだから!!」
「——は?」
言っている意味がよくわからないな。そう思いかけた刹那、僕は全てを理解した。
伝説の樹、僕をそこに連れて行こうとする先輩、顔を赤らめる先輩——————ああ、僕は——————
——僕は、恋に落ちた。
〜Fall in Love〜
オチ・考察 澄岡京樹 @TapiokanotC
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