第2話 ノーマ区保護施設②

「あっはははははは」と豪快にサンディは笑った。「この施設でそんなに笑うことができるのはサンディだけだろうな」とやや呆れたようにアレンは言う。この施設では、朝7時から夜7時が基本的には、労働時間となっている。労働者が子ども達じゃなくても苛酷な環境だろう。なので、そんな中笑っているサンディはやはり可笑しいのであろう。


「でーも何が今じゃない、よ。かっこつけながらそのまま死んでいきなさいよ」とフユはアレンを小突く。「フユもアレンがいるときは少し元気だね」とサンディはやや安心したように言う。「そうだねえ。僕がいないとフユは氷の人形みたいになるものねえ。やっぱり僕がいないと」とアレンがふざけたような様子でそう言う。フユは無反応だ。「フユだけじゃなくてほとんどの子ども達もそんなものだよなあ」サンディの顔が暗くなる。周りを見渡すとほとんどの子どもが疲弊した様子で夜飯を食べている。夜飯の時間は19時半くらいからになっていて大きい鍋でまとめて子ども達の分が作られる。そこそこの量はあるのだが、とても質がいいとは言えない。いきなりサンディは席をたった。


「ほら、元気出せよ!」とサンディが近くの子に声をかける。「サ、サンディ…」「ほら、これをやるから」「え…でもそれじゃあサンディの分が。フルーツなんて滅多に食べられないのに…」「いいって。いいって。俺そんなにフルーツ好きじゃないから」ニコっとサンディは笑う。


「じゃあ僕からこれ!」そう言ってアレンが席に戻ったサンディにフルーツを渡す。「どこから持ってきたんだよ、これ」とサンディが笑う。「まあ、天からの贈り物さ」そう言ってアレンは流す。「まさか、盗んだのか?今日少し遅れて来たし」「君は鋭いなあ」「俺に食べさせたら、俺も悪いやつになるじゃん」「固いなあ、食べちゃえよ」こんな会話ができるのも、アレンとサンディが最年長で余裕が他の子達よりはあるからであろう。


そして、サンディは硬くなったパンを頬張りながら、「そう言えば今日の点呼の時に部屋替えをするんだよな」と思い出したかのように言った。この施設では夜9時に点呼が行われる。監視の意味とこのように度々行われる部屋替えなどの伝達の意味があるのだろう。「ああ昨日そういっていたな、まあ今回も一緒の部屋にはなれないだろうけどなあ」と言うアレンは少し寂しそうだ。


じゃあな、といって一旦それぞれの部屋に戻っていった。


午後9時過ぎ、全員その場にいることが確認して、所長は部屋割りの発表に移る。「では、今回の部屋割りを発表する。201号室、レイ、アリー…」どんどん部屋割りが告げられていく。フユ達は無関心でそれをずっと聞き流していた。しかし所長のある言葉でフユ、アレン、サンディは思わず呟いた。


「208号室、フユ、アレン、サンディ、チャード。以上だ。」


「「「…え?」」」

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クートニア国 有栖川龍輝 @Arisu_gawa

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