クートニア国
有栖川龍輝
第1話 ノーマ区保護施設①
「もっとぱっぱと動けよ、なあ?」叫ぶ兵士の声が聞こえる。ここはクートニア国のノーマ区保護施設である。クートニア国では王政がとられているが、この国の民は決して幸せとは言えない。この施設は身寄りのない子どもの保護施設だ。保護施設というといい印象を持つかもしれないが実際は収容している子ども達に農業など労働力として使っており、子どもたちは搾取されている。
「お前らを生かしてやってるんだからもっと敬えよ」「憐れだよなあ。ここで働いて施設でたら、下らない人生が終わるだけだもんなあ」と保護施設にいる見張りの兵士の罵倒する声が聞こえる。それを聞いたフユは思いきり施設の兵士に向かって走りだした。殴ろうとしたのだ。しかし、兵士は音に気づきつき倒した。地面に伏したフユだが、諦めずに兵士の脚に噛み付いた。「いてえなあ。何してくれるんだよ、おい!このクソガキがよ」無論は兵士怒る。「誰がお前らに助けて欲しいと言った!この人殺しども!」フユは声を荒げる。「なんだと?殺すぞクソガキ」そういい放ち兵士の一人が、起き上がってきたフユに向かって平手打ちをした。パチンと言うような長く乾いた音が周りに響いた。フユの頬に赤い手形がついた。他の子どもたちはみんな目を合わさないようにしている。しかしただ1人だけ、その音を聞いたアレンがすかさず近くへ向かってくる。「ごめんなさい。この子は特に小さい頃から親がいなくて教育がなってないんです。勘弁してやってください」と何度も使った文言を発して深々と頭を下げる。しかし兵士は満足せず「そんなもんじゃ足りねえよな?誠意ってもんが足りてねえんだよ。せ、い、い」と言った。
それを聞き、アレンは怒りと屈辱感をなんとか抑えて渋々土下座をする。兵士は頭を踏みつけながらニヤリと笑った。「そうそう。お前らの親が死んだ理由教えてやるよ。お前らの親は税金納めないから殺されたんだよ。本当はお前らも殺してやってもいいくらいだけど王様の温情でこの保護施設で生きていられるんだよ」「私たちから搾取しているだけでしょう!私たちの親だって…」とフユは言い放った。また、フユが襲いかかろうかという所で、アレンが動いた。
ー次の瞬間
ガッという鈍い音が発生した。アレンが思いっきりフユの頬を殴ったのだった。フユが再び倒れる。「本当に申し訳ございません。俺からもこいつがふざけた口を聞かないようにいっておきます」アレンは再び土下座をし、必死に謝った。「お前は賢いやつだ。それが正しい関係ってやつだよ。よーし、分かった。今日はこの辺で勘弁してやる、次はないからな」そう言って兵士はアレン達の元から離れていった。
「お前はバカなのか」アレンは少し怒りつつ、何度いってもどうせまた噛みつくだろうなと思いながらもそう言った。仰向けになりながらフユはいい放った。「犬じゃん」「は?」「だってそうでしょう?そうやって兵士にペコペコしていればいいじゃない。理不尽に親を殺されてここに送られたのに、よくそんなにペコペコ出来るね」「っ…。俺だってやりたくてやっている訳じゃない!だけどしょうがないんだ。フユだってもう15歳なんだ。もう少し理性ってものを身に付けろよ」「じゃあ、あなたはずっとペコペコしてれば?アレンだって17歳になったら…」「もういい、行くぞ」ここまで行ったところで兵士からの叫び声が飛んで来る。「お前ら。とっとと持ち場に戻れ」「すみません。今すぐ戻ります。」アレンは言った。
「なあ、フユ。俺だって好きにペコペコしている訳じゃないんだよ。俺だってあいつらを見返してやりたいしずっと大人しくしているつもりはない。」とフユの耳元で囁く。そしてアレンは最後に一言呟いた。
「だけどさあ。今じゃないんだ。今じゃ」
そういってアレンは持ち場に戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます