第6話
第四児童公園に行く。ここらで一番街中から離れた場所にある公園。ジャングルジム、滑り台、「改修中使用禁止」の札が貼られたシーソー。そして背広姿の上品な顔立ちをした20代後半に見える白人男性がベンチの隣に腰掛けたエイコちゃんに何かを説得するように熱心に話しかけていた。彼は僕とヒカリさんに気付くと憎しみの眼差しを向けながら立ち上がった。
「エイコちゃん、君が密かに恋する塾の先生はテロリストの仲間に成り下がったんだ、彼等の目的は日本占領だ」
彼の日本語には全く訛りが無かったが、やや早口で興奮気味だった。
「失礼ですが、どちらさまですか」僕が問うと彼は素早く名刺を差し出し、
「私は子供用玩具の輸入販売を行っているディーサプライ社の社員、ティム・マクベイと申します」と全く日本式に頭を下げた。
ディーサプライ社。ヒカリさんがCIAのダミーカンパニーと言っていた会社の社長。
「ロシアでスクールバスを爆破した手口を言ってなかったわね。クリスマスプレゼントのネズミのぬいぐるみに誰かがプラスチック爆弾を仕込んだのよ」ヒカリさんが僕に耳打ちした。
「お前がヒカリか」ティム・マクベイが彼女を睨んだ。「君は私の友人を殺害し仲間と血を飲みブードゥー教の儀式を行った」
「宗教は関係無いのは分かっているくせに、なんでそんなことを言うの?」
「日本の当局はヴァンパイアの実在を認めていないので嘘も必要なんだ。私の付き添いで自首するならエイコちゃんは家に帰れる」
「それも嘘で、あたしを拷問にかけるんでしょ?」
拳銃を取り出したヒカリさん。にらみ合う2人。
僕はティム・マクベイとエイコちゃんの間に割って入った。彼女も携帯電話を持っていた筈なので両親に連絡させ、迎えに来させようと考えたのだ。だがエイコちゃんの両手には小型のオルゴールがあった。スクールバス爆破。子供玩具輸入販売。懐かしいメロディー。冷や汗が背中から噴き出た。
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