第2話
「……マジで?」
「はい」
目を見開きながら聞いた慎也の質問に、桃花は頷く。
ずっと吸血鬼だと思っていた桃花にサキュバスの血も混ざっていたと聞いて、慎也は驚きを隠せなかった。
「サキュバスというと男と性行為をするという?」
「はい。そのサキュバスです」
違うという一部の望みをかけて聞いたが、桃花の回答に打ち砕かされてしまう。
サキュバスは性行為をすることによって男から生気を吸収するからだ。
「じゃあ俺以外の男ともするってこと?」
十八歳になって覚醒すると言っていたのだし、今の桃花が未経験だというのは分かる。
でも、桃花が自分以外の男としたら嫉妬してしまうことは間違いない。
だからサキュバスであってほしくなかった。
「絶対にしません。私が身体を許すのはお兄さんにだけです」
本当に他の人とする気はないようで、桃花はしっかりとこちらを見つめる。
「サキュバスって無意識の内に男を欲情させたりするんじゃないの?」
他の人に抱かせてなるものか、と思いつつ、慎也は桃花を抱き締めて離さない。
吸血鬼が現実に存在しているのを知っているがサキュバスについては知らなかったためにフィクションで出てくるのしか分からないが、サキュバスは異性を欲情させて生気を奪い取る。
「大丈夫ですよ。確かにサキュバスは強制的に男性を欲情させることが出来ますが、私はお兄さんとしかしたいとは思いません。きちんとコントロール出来るから大丈夫です」
「何で分かるの? 今覚醒したばっかでしょ?」
「今まで言ってなかったですけど、私のお母さんがサキュバスだからですよ。お母さんにはサキュバスについて色々と教えてもらったりしました」
新たな新事実に慎也は再び驚く。
確かに桃花の母親は吸血鬼というよりサキュバスのがしっくりとくる容姿だった。
つまりは桃花は吸血鬼とサキュバスのハーフということだ。
「あれ? でも尻尾生えてなくない?」
サキュバスであれば桃花の母親も尻尾が生えているはずだが、以前会った時にはなかった。
内緒にしていたのであれば、服の中に隠していた可能性も考えられる。
「尻尾は見えなくすることが出来るんですよ。私はお兄さんにだけ見えるようにしますね」
見ていて特に変わりはないが、桃花から生えている尻尾は他の人には見えなくなったのだろう。
桃花の母親の尻尾が見えなかったのは、家族以外に見えていないようにしているからと考えられる。
「サキュバスいっても、私はお兄さんにか欲情しませんし、お兄さん以外の人を欲情させるなんてあり得ませんから」
「そうか」
「今から証拠を見せますね。んん……」
桃花の唇によって唇を塞がれた。
いわるゆキスというやつで、桃花の唇は物凄い柔らかくて熱い。
甘い声を出している桃花に慎也は理性が一瞬にして吹き飛びそうになる。
サキュバスとして覚醒した桃花にキスされた影響なのかもしれない。
「私のファーストキスですよ」
唇から自身の唇を離した桃花がそう言う。
「そしてこれが証拠、です」
頬を真っ赤にした桃花は、自分が着ているワンピースの裾を掴んで捲り上げる。
白くて綺麗な太もも、可愛らしいリボンがついた桃色の下着が目に入るが、桃花の下腹部……おへその下あたりに驚くべきことが起きていた。
ピンクのハートマークが桃花の下腹部に浮かび上がっており、ハートマークの中には慎也と白い文字で書かれている。
小学生の時に一緒にお風呂に入って見た時はこんなマークはなかった。
サキュバスとして覚醒したから出てきたマークと考えるのが普通だろう。
「サキュバスが使える魔法の一つです。これで私はお兄さん以外の人に欲情しませんし、他の人を欲情させることはありません。サキュバスの血があったって私はきちんと一途ですよ? このマークはお兄さん以外に見えませんから」
流石にこんなのを見せられては本当だと思わざるを得ないため、慎也はホッと胸を撫で下ろす。
これで桃花を独占することが可能なのだから。
優しく頭を撫でてあげると、桃花は嬉しそうに目を細めた。
「私は吸血鬼の血もありますので血液を摂取してればある程度は大丈夫なんですけど、サキュバスだから生気も吸わなければなりません。私を大切にしているお兄さんには申し訳ありませんが、もう少ししたら生気を吸わせてもらいますね」
つまりは欲情させるということだろう。
ある程度は大丈夫、他のサキュバスよりは頻度は少ないが、定期的に生気を吸わなければばらないということだ。
「大丈夫だよ。学校は休みだし」
ゴールデンウィークで学校は休みなので、血も生気も吸われても問題はない。
むしろ他の人のを吸われるのは嫌なため、積極的に自分のを吸ってほしいと思っていいるくらいだ。
さらには慎也が通っている専門学校は午前と午後の選択制授業を受けることができ、桃花のことを考えて午後にした。
だから午前中は学校に行く必要はなく寝れるので、本当に血も生気も吸われても問題はないのだ。
「じゃあ誕生日プレゼントを上げるね」
「はい」
桃花の腰に手を当てて、慎也は一緒にベッドがある寝室まで移動して身体を重ねた。
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