吸血鬼とサキュバスのハーフ美少女は何度しても締まりは未経験のまま

しゆの

第1話

桃花ももか、誕生日おめでとう」


 日付が五月三日になった瞬間の深夜、佐々木慎也ささきしんやは一緒にいる少女──桜井桃花さくらいももかの誕生日を拍手で祝う。

 誕生日を祝うのは深夜からやることではないかもしれないが、桃花は昼間寝ている夜行性のために夜に祝ってあげるしかない。

 そもそも彼女は吸血鬼のため、昼間の活動はどうしても制限される。

 フィクションで出てくる吸血鬼のように太陽光を浴びて灰になるこということはないが、どうしても日光は苦手なのだという。

 吸血鬼はいるというのは世間一般的には伏せられており、慎也も桃花が吸血鬼というのを最初は知らなかった。

 でも、昔から一緒にいる幼馴染みの関係だったため、桃花は慎也を信じて自分の正体を明かしてくれたのだ。

 吸血鬼の証を見せるために血を吸われたが、別に嫌な気はしなかった。

 血を吸われる時は唾液の麻酔で痛みを感じないし、失血死するほど吸われるわけではないからだ。

 人間じゃないのに自分から離れていかなかったのが嬉しかったようで、桃花は慎也から離れなくなった。

 このことから吸血鬼だと正体を知った者は離れていくというのが分かった。

 だから桃花は最初、自分の正体を秘密にしていたのだろう。

 出会ったのが幼かったので、親から吸血鬼だと言うのを止められていたのかもしれない。

 血は父親が大学病院の院長をしているからそこから貰っているらしく、桃花はたまに慎也の血を吸うこともある。

 ちなみに吸血鬼は長寿だから数はかなり少ないらしい。


「ありがとうございます」


 彼女の飛びきりの笑顔を見て、相変わらず桃花は可愛いな、と慎也は思う。

 吸血鬼というよりサキュバスを思わせる肩ほどまである桃色の髪は艶があって綺麗だし、長いまつ毛にアメジスト色の大きな瞳、透けるような白い肌はシミ一つなく、肩幅や足腰は細いのにも関わらず胸は平均以上で、まさに神秘的な美少女と言える。

 もし、桃花が美少女でなかったら、吸血鬼だと知って彼女から離れていったかもしれない。

 桃花が吸血鬼だと知ったのは中学一年の時で、性などに興味が出てきた頃なのだから。

 可愛い女の子と仲良くしたいと思うのは男の欲求だ。


「お兄さんに誕生日を祝って貰えて幸せです。私はお兄さんに出会う前まで家族以外の人に祝って貰えたことがないので……」


 吸血鬼として生きている桃花は学校に行くこともなく、慎也と出会う前まで友達すらいなかったらしい。

 学校に行けない理由を身体が弱くて病弱ということにしていたようだ。

 父親が医者なのだし、学校から診断書を求められても大丈夫なのだろう。

 桃花と出会えたのは本当にたまたまで、日暮れそうになっていた夕方に外で迷子になった彼女を助けたのがきっかけ。

 ずっと家の中にいて退屈だったから外に出たら迷子になってしまったとのこと。

 家も近かったこともあり、慎也は学校が終わった後や休みの日は桃花の家に毎日のように遊びに行った。

 学校に行けない桃花に勉強を教えたりしたし、今は二人で過ごすことも多い。

 来てくれて嬉しかったようで、桃花は太陽が昇っている時も起きていたりした。

 ちなみに桃花は一つ年上の啓太をお兄さんと呼ぶ。


「また祝ってあげるよ。来年だって再来年だってずっとね」

「はい。離れません」


 ギュッと桃花に抱き締められる。

 ずっと家にいる桃花は同年代の異性は慎也しか知らないのだし、惚れていたとしても不思議ではない。

 付き合っているわけでもないのに、専門学校に通うために上京した啓太に付いてきたくらいなのだから。

 今は間取りが1LDKの賃貸マンションで一緒に住んでおり、最初は断ったが、生活費は桃花の父親が出してくれている。

 吸血鬼だと知っても娘を大事にしてくれるから父親として嬉しいのだろう。

 今はまだ手を出していないが、もう両親公認みたいなものだし、そろそろ桃花の初めてを貰うかもしれない。

 桃花が十八歳になったのだし、色々と気にしなくていいのだから。

 ちなみに吸血鬼はある程度の年齢になると歳を取らなくなるらしい。

 なので桃花の両親は未だに若々しく、特に母親は絶世の美女だ。


「血を飲む?」


 首筋を露出し、桃花の口元に持っていく。

 誕生日なので失血死しない程度になら盛大に飲んでくれて構わない。

 吸血鬼は血以外を口にすることが出来ないため、ケーキの代わりに血を飲んでもらう。


「いえ、私は……お兄さんの、初めてがほしい、です」


 頬を赤らめた桃花は、恥ずかしいのか俯きながら慎也の胸に自身のおでこを当てる。


「桃花?」

「もう気づいているかもしれませんが、私はお兄さんが好きです。私とずっと一緒にいてくれるお兄さんのことが好きでたまりません」

「ありがとう」


 ギュッと桃花の背中腕を回して抱き締める。

 桃花の気持ちは分かりきっていたが、実際に言われると嬉しい。


「十八歳になったらお兄さんに初めてを貰ってほしいってずっと思っていたんです。私がサキュバスとして覚醒する日だから」

「え?」


 思いがけない言葉を聞いた瞬間に驚くべきことが起きた。

 丈の短い桃色のワンピースの中から赤黒い尻尾のような物が出ているからだ。

 うねうねと動く先がハートの形になっている尻尾は、明らかに桃色の臀部から生えている。

 とてもじゃないが機械で動かしているように見えないくらいに滑らかな動きだ。


「私は……サキュバスの血も混ざっているんです」


 どうやら桃花は吸血鬼だけじゃなく、サキュバスの血も混ざっているらしい。

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