害鳥

春風月葉

害鳥

害鳥

 今より遠い昔、私の先祖は罪を犯した。分不相応にも眩しすぎる光に憧れてしまった愚かな鳥は、自らの美しい銀の身体を失ってしまった。焦げた黒い翼はある時代には不吉の象徴として恐れられた。現代に至るまで私たちは先祖の残した罪から逃れられずにいる。

 光を求めてはいけない。身の丈にあった生き方を選び続けることこそが賢い方法だ。ゴミを漁ることに抵抗などない。害鳥だと罵られようとも気にすることはない。嫌われ者も必要な役割だ。

 私たち烏の考える暮らしやすい場所というのはゴミの多い場所だ。その点、風俗街というのはとても都合がいい。人間の多い夜の間は闇に身を潜め、活気のない朝から昼にかけての時間で夜に出たゴミを漁る。

ある日、いつものように食料を求めてゴミを漁っていると近くの扉がギギギと鈍い声で鳴きながら開いた。扉からは一人の男が出てきた。彼は私に気付くと左の手でしっしと私を追い払うような仕草をした。そして右の手で上着のポケットをゴソゴソとし、タバコを取り出した。私がその場を一度去ると、彼は左手でライターを取り出して一服し始めた。

 嫌な匂いだが、普段の彼らが放つ匂いと比べればタバコの匂いはまだマシだ。この街の人間たちはいつも違う人間の匂いを身に纏っている。色々な匂いが混ざり合った甘い嫌な匂いだ。彼はフーッと大きく息を吐いた。灰色の煙がその様子を上から見ていた私の元まで流れてくる。私は彼を一瞥し、煙から逃げるようにその場を離れた。日は段々と沈み世界は夜を迎える。眼下の街はそれに逆らうように明るく醜く光始めた。私は光に近づかない。

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害鳥 春風月葉 @HarukazeTsukiha

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