「炬燵残留…」

低迷アクション

第1話

「最近はさっ、何処も朝から晩まで暖房MAXで家を固めるじゃん?そんな家々が連なってる訳だから、寒い夜の筈なのに、住宅地は暖かい。だから、鳥も越冬しないで、残る事が多いって、ニュースで見たけどよ…」


そんな前置きをしつつ“友人”の話は始まった。彼の家には所謂“霊道(れいどう)”があるらしい。幼少期から、家の廊下、洗面所、お茶の間で人の影を見る事があった。


亡くなった祖母が言うには、昔から、近所で誰かが亡くなると、影が見える。それは霊道があるせいだと、先祖代々言われているらしい。


小さい頃は“それ”を見る事があった友人も成人を迎えるにつれ、気配や影を見る事が亡くなった。気にしなくなったと言う方が正しいのかもしれないと彼は言う。


だが、それも、最近では少し変わりつつあるらしい…


「そのさっ、冬になるとウチは炬燵を出すんだよ。その炬燵が壊れて、新しいのを買ったの。

すっげぇ、デッカイ奴…そしたら…」


“見えるように”なったのだと言う。


「まるで“炬燵を点けろ”って言ってるみたいにユラユラ、ユラユラ、家ん中を歩き回ってる。這いまわってる奴とか、形がハッキリしてないのもいたな。ホントにやんなる。暖房だって、電気カーペットだってあるんだぞ?何で、炬燵に拘る?」


当てずっぽうで、彼等は何か、目に見える、形として存在する、生前の記憶にもハッキリとある“暖をとるモノ”として、炬燵を好むでは?との指摘に友人は…


「そうかもな…」


と苦笑いをする。


「でも、あれには参った。ホントに…炬燵に足ツッコんだら、なんか当たるモノがあって、中見たら黒い足が一杯あったのは、まだ許せる。でも、中覗いた時に、幾つも真っ黒い頭が

こっち見てて…黒い空洞が二つのも…血走ったのも、普通の目も…全部、こっちを見上げてた。炬燵の中から…」


“炬燵を片付けてみたら?”


と、こちらの提案に、友人は半ばやけになったような口調で最後を締めくくった。


「片付けるのは、簡単だよ?でも、それで、もし、あいつ等が消えなかったら…そん時、

俺はどうしたらいい?なぁっ、ハハッ、わかんねぇなっ、わかんねぇよなっ、ハハッ、俺もだ」…(終)

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「炬燵残留…」 低迷アクション @0516001a

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