第14話 私達と一緒にミッションを
ぷはぁっ!
現実世界で洗面器に顔を浸かっている意識が残っているせいだろうか。
この方法でこっちの世界にくると、どうしても一番最初はこうやって息を大きく吸わなければ落ち着かない。
うーん、やっぱりヘッドセットを通じて、共通のアバターを使うよりなんとなくこっちの方が空気が美味しい……生きているって感じがする。
……頭部しかないけれど。
俺はとりあえず、システムウインドウを出して椿姫に電話をする。
「あっ、
通話がはじまるなり、こちらが何かをいうよりも早く椿姫は一方的に喋り出す。
――デスゲームの運営は真っ赤なピエロだったんだ!
――それで、あたしとアオイが選ばれてレアアイテムとかもらえちゃって、ラッキー!
――だけど、急に運営がさあ、その「レアアイテムを巡って争え!」なんていいはじめてさあ……。
と、さっ起こったことを語り始めた。いや、俺ちゃんとその場所にいたっていってるじゃん。なんでいなかったみたいに語ってるの?
椿姫はたぶん良い子で、一生懸命はなしをしてくれているけれど、たぶん人の話を聞いていない。というか、さっき送ったメッセージもちゃんと呼んでいない。
俺だって、目立って無かっただけであの場に『いた』という旨のメッセージを返したのに。
この年頃の女の子ってみんなこんなものなのだろうか。
娘のことを思い出す。椿姫よりは年下のはずだが、妻のおかげかもっと落ち着いた感じの印象だったので、椿姫の勢いに驚く。
こちらが、黙って椿姫が話し終わるまで静かにしていると、しばらくして椿姫は満足したのか、「あっ」と言って、単なる通話からテレビ電話に切り替えた。
画面の向こうには椿姫だけでなく、アオイも映る。
心配そうに見つめる顔がアップで映るが、なかなか可愛らしい。
アクアマリンのような青い髪に清楚な桜色の唇が優しい印象で男性からウケそうだ。というか、このままゲームのキャラクターに出来そうなくらいだ。
「キザさん、さっきはありがとうございました」
自分が画面に映っていることを確認したアオイはそう言ってぺこりと頭を下げる。
そして、頭を下げたすぐそばには小さなドラゴンがふわふわと浮いていた。
「いやあ、まあ。あんな知識でお役にたてたのなら何よりだよ」
俺はそう言って、頭をぽりぽりかこうとしたが、手がなかった。
いや、これホント不便だな。
「んで、本題なんだけどサ」
アオイと俺の間でしばらく無言が続いていると、椿姫が割り込んできた。
「ん?」
「次のミッションのために、この始まりの街もうでていかないとじゃん」
「ああ、そうだな」
そう、さっき俺がデスゲーム運営として参加者には次のようなメールを送ったのだ。といってもマニュアルにある定型文だけど。
『ミッション1:クエストを達成しよう。
始まりの街以外の街には、クエストを受理できるようになっているよ。困っている人々を助けて感謝されよう。
ちなみに、隣の町に行くまでにはモンスターもいるから、殺されないように気をつけてね☆(装備をちゃんと整えてから街の外に出よう)』
非常におおざっぱな説明だ。
まあ、マニュアルなので汎用性が高いのだろう。
おそらく、椿姫とアオイはこのミッションの「殺されないように気をつけてね☆」を不安に思ったのかもしれない。そして、自分たちより熟練してそうな俺に助言を求めたいのかも。
それならこちらも好都合だ。
アドバイスという形で、ミッションクリアのポイントを伝えて、二人には生き延びてもらわねば。
レアアイテムを手に入れたプレイヤーがそれを使ったくせに、早々にデスゲームから退場なんてことになっては、ストーリーを持たせるのが難しいし。
恐らく、この二人は人気がでる。
スポンサーやデスゲーム観戦者たちを喜ばせるために二人には活躍してもらった方が運営としても得だ。
そう運営が得だと判断するんだ。
「分かった」
俺はそう言って、二人とある場所で落ち合うことにした。
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