第7話 フレンド登録
「あっちが、悪いんですよ。嘘の情報流したから!」
「あんな匿名掲示板の情報鵜呑みにするなんて馬鹿じゃないの自己責任じゃん」
「人を信じて何が悪いんです」
「人は疑うべきだ。信じて良いのは自分だけ。勝手に人を信じたり思いこんで、裏切られたなんてほうが身勝手さ」
目の前の少女は二人ともにらみ合う。
しかし、この二人はこうやって並んでいると本当によく似ている。
同じ服装にしたら双子に見えるのではないだろうか。
一応、デスゲームの参加者はアバターということになっているが、その姿は元の人間からかけ離れすぎないようになっている。
もちろん、運営にあらかじめ申告して余分なお金と誓約書(現実世界に生還できたときにあのアバターは自分だったと本当の世界で申告しないなど)を書くことによって好きなアバターをかぶせることもできるが。結構な金がかかるのでそんな細工をするのはごく少数はだろう。
それにしても、目の前の二人は、結構可愛らしい。
しゃべりさえしなければ、ちょっとしたアイドルユニットと間違えそうなくらい整った顔立ちをしていた。
そして、似ている。
ただ、俺でも区別が付くのは二人の口調とその服装と髪の色が大きく異なるからだ。
言葉遣いが丁寧な方が青い髪を低い位置で一つに結んでいる。服装からするとテイマーだろうか。このゲームでテイマーなんて珍しい。
言葉遣いが乱暴な赤い髪は高くポニーテールに結われている。職業は剣士と言うところだろうか。始まりの街にしてはなかなか良い装備を使っている。
目の前の二人の美少女を見ているとなにか引っかかる。
デスゲーム運営のカンというのだろうか。
いや、ゲーム製作者の勘というほうが正しいかもしれない。
だけれど、俺はその違和感の正体がはっきりと分からない。
考えるんだ。
頭を使え。木崎 修太朗。
ここはお前がかつて作ったゲームをもとに作られた世界だ。
お前はこの世界の創造主。
この違和感にはなにか原因があるはずだ。
お前にしか分からない、お前だからこそ分かることがあるはずだ。
考えろ、考えなくてもいい。感じるんだ。
どこが、おかしい。
ぴん♪ ぽん♪ ぱん♪ ポーン♫
必死に考えていると、なんともまぬけな通知音が響いた。
『ただいまより、デスゲーム第一回中間発表をおこないます。みんな、広場にあつまれー! あっ、ついでにあんまりみんなが集まるのが遅いときは、かけっこが一番遅かった人を失格にしちゃうかも~☆』
女性の声で非常にふざけたアナウンスがされた。
正直、いらっとする。
人がせっかく集中していたのに。
なんていうか、人をおちょくっている。
人の命がかかっているデスゲームなんだ、遊びじゃない!
とこのアナウンスをしているやつにつかみかかりたくなるような、いらだち具合だった。
「「急がなくちゃ!」」
目の前の少女たちは慌てた様子で、ガタッと音をたてて椅子から立ちあがる。
俺は「あー、それ。たぶん失格っていうのは嘘だよ」と言いたい気持ちを抑える。
「「ほら、お兄さんも急いで!!」」
二人は俺に向かって手をさしのべる。
そうか、この二人は俺のことをプレイヤーだと思っていたのか。
あんなにおびえていたのに、“詠唱”を使ったからデスゲームの運営側の人間かお助けイベント用のNPCにでも思われていたのかと思った。
だけれど、残念ながら俺は二人の手をとることはできない。
だって、体がないから。
頭だけの存在。
というか、わざわざ走ったりしなくても、始まりの街の広場なら、街にいるあいだはいつだって初期画面の操作で移動できるようになっている。
そのことを二人に説明する。
「え~、知らなかった」
「すごいです。もっといろいろ教えて欲しいです」
なんて二人は言っている。
ああ、この二人、大丈夫だろうか。
心配になったし、なにかあったときのために一応フレンド登録機能についても説明する。
もちろん、この二人でペアを組んで仲良くしてもらうためだ。
でもなぜだか、俺までフレンド登録されてしまった。
てか、俺のアカウント。ゲームだったときのままで「KIZA」になってるんですけど!?
実名の一部とかあんまり出回って欲しくない……。
二人が、スタートアップ画面から始まりの広場に移動するのを確認してから。俺はゲームからログアウトした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます