第5話 魔法の詠唱で無敵
ゴゴゴゴゴゴゴーッ!
なんとか目の前の二人の少女と話をしようとした瞬間、地響きが鳴った。
ドッカーン!
何かが爆発する音がした。
気が付くと巨大モンスターが俺の背後にいた。
えっ?
なんでえ……?
ここは“始まりの街”つまり初心者の為の街なんだからモンスターが出入りすることは出来ないはず……とはいってもそれは俺がこの世界の元となるゲームを作った時の話だ。
人工知能がゲームを作るのに勝手に改変したのかもしれない。
ゲームが面白くなると判断して、始まりの街の中で大量殺戮が行えるようにしたのだろうか。
戦うか……いや、それは無理だ。
だって、今の俺は頭部しかないし。
仕方ないので、俺は“詠唱”を使うことにする。
ぶっちゃけ、普通のプレイヤーは必要ないからゲーム時代はデータを見てもほとんど使う人間は居なかった。
というか、このゲーム剣を振るときちゃんとイメージをしたりある程度決まった型をとれば、ちゃんとシステムアシストが働いてくれる。魔法は剣よりはイメージ力大事だけれどやはり杖の振り方やイメージで簡単に使える。
詠唱なんて一つ言葉をまちがえるだけで、発動しなくなかったり、逆に自分にダメージを与えてしまう。それに時間もかかるので使うメリットなんてないのだ。
ただ、こうやって手足がないとかシステムアシストが何らかの原因で使えなくなった時以外は。
まあ、運営用の隠しコマンドというやつだ。
通常では使うメリットは全くないのだから。
俺は詠唱をする。
使う魔術の種類、攻撃の威力、力の方向、そして座標。
なあに、慣れていればそんなに難しいことはない。
「アクテ!」
最後に発動のための呪文を叫ぶ。
本当は“アクティベーション(avtivation:発動)”にするはずだった。
だが、ゲームを実際に詠唱モードでテストプレイしたところ、日本人のスタッフから噛んでしまって、上手く魔法が発動できないという苦情があったため、短くした。
あの時、苦情をいってくれたアルバイト君は今は俺の部下になっている。よくよく考えると、あのアルバイト君はちょっと引っ込み思案で人と話すのが得意じゃなかった。今考えてみると、単純に彼の滑舌の問題だったんじゃないだろうかと思いいたる。
山下君、大丈夫かなあ。
良い子なんだけど、どうしても押しが弱いというか。
押され弱いというか。
そんな余計なことを考えていても勝手に発動してくれるのは詠唱のいいところ。
あっという間に、水の柱が打ち上がり巨大なモンスターを打ち上げた。水の柱は地面からわき出たり消えたりして、モンスターの巨体を空に打ち上げては地面にたたきつける。
しばらくすると、HPを削られ切ったモンスターはキューというなんとも見た目に似合わない弱々しい泣き声とともに消滅した。
モンスターが消滅したあとには、キラキラと光るエフェクトがのこる。普通のプレイヤーだったらあのキラキラの上をあるけば経験値なんかが得られる。
さて、どうするかな。
俺は頭一つだし、運営だからレベルをあげる必要もないのだが……。
「「あの、助けて下さってありがとうございますっ!!」」
ぼんやりと考えごとをしていると、可愛らしい二つの声が飛んできた。振り向くと、さっき怯えていた様子とは異なり、見た目は美少女な二人が俺にぺこりとお辞儀をしていた。
「えっ? 助けたって、何のこと??」
「あの、モンスター。時々現れるのですが、毎回倒せなくて……」
「だれも魔法とか使えないの?」
「えっ、おっさん魔法使いなの……魔法使いってテイマーと同じくらいの不遇職だっていわれてるのにカワイソー……って、おっさん見た感じじゃ全然、不遇って感じしないわ。なんだ、あの情報はガセだったのか」
少女たちから事情を聞く。
すると、どうやら今回のデスゲーム。この世界が本当に純粋なVRMMOゲームだったころを知っているプレイヤーがいるらしく、そいつが情報を流しているらしい。
ただ、最初に流された情報は正しかったのだが、なんせ匿名で情報を流したモノだから、だんだんガセ情報なんかも流れてきたりしているということだった。
正直、これは予想してない展開だった。
デスゲームの攻略法を不特定多数に流す参加者なんて……もう少し話を聞いた方がいいかもしれない。
「君たち、ちょっと話を聞かせてくれない?」
俺が二人の少女をさそうと、二人ともこくんと頷いた。
えー、これ現実世界だったら事案だぞ。
こんな素直に言うことを聞く女の子が二人もいるなんて、今の子は警戒心が足りないんじゃないだろうか。
だって、二人ともデスゲーム参加者なのに。
デスゲームの参加とは無縁の娘の柚希はきっともっと警戒心がないだろう。このデスゲームが終わったら、もう一度「知らないひとにいは付いていってはいけない」って言い聞かせねば!
ここはデスゲームの世界。俺はデスゲーム運営。
可愛いロリロリしい女の子を二人連れて、お茶をしたとしてもただの仕事だ。
俺は、二人の美少女をこの街のとっておきの場所に連れて行って、話を聞くことにした。
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