第3話 秘境にて

優しい歌が わたしをこの秘境にみちびいた

すべての魂が眠るこの澄んだガンジス川のほとりへ


わたしは菩提樹の陰で夢を見る

甘く優しい幼き夢を

精霊がわたしの体によりそう

「さあ共にいきましょう」


そこは静かで広い原っぱで

赤い芥子の花が咲きほこる

聖なる小川のせせらぎに

ヒヨドリの澄んだ声がこだまする


赤いスグリの実をそっと摘み取ると

遠き山の頂より強い風がおしよせる


「ここはおまえの場所ではない」


冷たい風はわたしのほおを打ち身体をつつむ


「嗚呼、なんと冷たい風なのか!」


わたしのほおは濡れそぼり 身体は濡れ鼠のように萎んでいる

半月は高く上り 菩提樹の固い樹皮を蒼く照らしている


嗚呼、どうして追い出すのだ!

わたしをひとり残して









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Masumi Manyama @Maire

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