雪の下(旧)

雨世界

1 好きなんだ。だから会いに行くんだよ。

 雪の下


 登場人物


 山根小雪 無口で真面目な黒髪の高校三年生の少女 十八歳


 春山古風 めがねをかけているくせっ毛の優しい先生 二十八歳


 プロローグ


 ねえ、覚えてる? それとも、もう忘れちゃったかな?


 本編


 好きなんだ。だから会いに行くんだよ。


 古い歴史ある小さな家の縁側で、ぼんやりと小さな丸いテーブルの上に片膝をついて、よく手入れをされている立派な庭に降っている静かな雨を見ている高校生の少女がいる。

 少女の名前は山根小雪と言った。

 小雪は自分の通っている七星高校の赤いスカーフと白と紺色をした制服をきている。

 小雪はもうさっきからそのままの姿勢で二時間くらいぼんやりとしながら雨をじっと見ている。

 でも、本当は小雪は雨を見ていない。

 小雪はもっと別のものをその風景の中に見ていた。

 小雪はさっきからずっと考えごとをしている。


 いろいろと難しいことを考えているのだけど、簡単に言ってしまうと、山根小雪は今、恋をしていたのだ。同じ年頃の少年少女たちと同じように。

 恋に迷ってしまっていたのだ。


 その理由は小雪の恋の相手にある。

 小雪の恋の相手は学校の先生だった。

 小雪の通っている七星高校で古典の授業を担当している先生。

 その先生の名前は春山古風と言った。


 ……先生。今頃なにしているだろう? ご飯一人で食べてるのかな?

 そんなことを頭の中で呟いてから、小雪はようやく縁側から動き出して、桜色のエプロンをつけてから家の家事を始めた。


 がしゃん! と言う大きな音がして、小雪が洗い物をしていたキッチンでお皿(大切なお気に入りのお皿だった)を割ってしまったのは、それからすぐのことだった。

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