第15話 部室に集結
放課後、個人それぞれの行動指針がまだ定まっていないクラスにおいて、興味本位の人たちが僕に話しかけようと集まってくる。
今日1日で部活のことと小野寺さんのこと、その両方をセットにして、何回も同じ話をするのがいい加減嫌になってきた。
だから、僕は宣言する。
「恋のキューピット部、入りたい人は2階の美術室に集合で。あ、それと小野寺さんのことだけど、僕に聞いても答えられるものは無いから。もちろん連絡先も教えない」
ピタッと教室内のすべての人の動作が止まり、一斉に僕に視線が集まる。
そして、クラスの大体の人はこんなことを思っている顔をしていた。
「(北村くんは小野寺さんの元彼ではなく、もう今彼なのでは!?)」
「北村くん、行こ?こえも行こう?」
そしてタイミング良く小野寺さんが教室に入ってくる。兵藤さんに睨まれるが気にしても仕方ない。
「兵藤さん、部室来るの?」
「・・・・・・悪い?」
は?コロスよ?みたいな目で見ないで欲しいな。周りの人に聞こえるようにあえて喋ってるんだけど・・・怒らせちゃったみたい?
「悪くは無いね」
「暇では無いけど行ってあげる」
「こえー?今日は一緒に駅前のカフェ行く予定だったから拗ねてるの?ごめんねー」
「澪は悪くない。極悪人はこいつ」
「ちなみに僕はどんな罪を?」
「中学の思い出を振り込ませた詐欺」
ピギーンと背筋が凍る思いだ。当たらずとも遠からず。
「わたしと北村くんの思い出は共同預金でいつでも引き出せるのっ!」
「まさか思い出を北村に使い込まれている・・・?」
「いいの。大切なもの北村くんに全部あげる。わたしを、使って?」
「僕の王の力が〜!」
どうやらこのアニメネタは通じたみたいだ。小野寺さんは口を押さえて笑ってるし、兵藤さんは顔を背けて震えている。2人に笑ってもらえて何よりだよ。
「北村、王ってなんだ?部長か?」
「三田くん、今からみんなで行こうよ」
「中村さんを誘ったんだが、あいつ水泳部だから頻繁には来れないみたいだな。もう行っちゃったわ」
「三田くんが嫌で逃げたんじゃなくて?」
「かなしみっ!!」
「近藤くんは先に行ったみたいだから、僕らも行こうか」
「はやっ!近藤くんいつの間に!」
そうして僕たちは4人で部室に向かうことにした。
ーーーーーー
僕らの後ろに人だかりができている。
小野寺さんは兵藤さんも可愛くて有名だから、話しかけてくる男子の2割くらいの話題が兵藤さんだった。だから、可愛い子狙いで部室まで来ようとする輩がいるだろうなーって。
・・・ついて来る人全員男子じゃん。
美術室に着いた時、10人ちょっとの集団で来たので近藤くんは嬉しそうに笑った。そして、小野寺さん、兵藤さん、三田くん、僕の順番に入室したのち、ぴしゃんと扉が閉められた。
えっ?
「おい、なんで閉めるんだよ!」
「俺らは入部希望者だぞ!」
どんどんと扉を叩く人がいるが、びくともしない。どこから持ってきたかわからないつっかえ棒があり、近藤くんはパンパンと手を叩いて埃を払った。
「扉の張り紙を見やがれ!」
「なんか書いたの?」
「『恋のキューピット部の入部条件
入部希望者は学校にいる片想いしてる人を探して申し出ること。
自身が誰かに片想いしている場合、そのまま入室してください。』」
シーン・・・。
あれ?廊下が騒がしく無くなったよ?
「近藤・・・わざわざ敵を作るようなことを考える人」
「敵だぁ?違うね。今から恋を始める一年生を入れたって仕方ないだろ?俺らが狙うべき客は上級生だ。そうっすよね?蒲生先輩?」
俺がベランダの方に目をやると、空いた窓の縁に腰掛けている蒲生先輩がいた。この人ぽっちゃりだからお尻痛そうなんだけど。
「ふっふっふ。できる、できるんだぞっ!君たちのようなガッツ溢れる後輩なら、きっと・・・!!」
「ヤドカリ先輩、早くこっちきて」
「な、なぁんであだ名で言っちゃうかなぁ!?」
「ヤド先輩こんにちは、1年の小野寺です。窓が壊れそうで怖いです。そっとゆっくり降りて来てくださいね?」
「カリカリ先輩こんにちは。あまり喋らない方がいいかも」
「女子2人の先輩に対する扱いひどくね!?」
三田くんが驚くくらい、蒲生先輩に先輩としての威厳が無かった。
偽元カノが本気を出してくる。だけど僕は普通の恋愛がしたい。 とろにか @adgjmp2010
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