第12話流行り病
「なんか、人が全然いないのですよ」
シーロン王国に到着してからというもの、街の人が全然歩いていないのだ。
「これは確かにおかしいわね」
「うん、僕は前にも来たことあるけどその時は賑わっていたよ」
俺達はとりあえず宿屋に向かった。
「あ、いらっしゃい。旅の方かい?」
「はい。4人お願いします」
「はいよ。ただ、従業員がみんな休みだからすまないが素泊まりになるけどいいかい?」
従業員がみんな休み?
「いったい何があったんですか?」
「この国は謎の病気が蔓延していてね・・・。みんな倒れちまったんだよ。病気には治癒魔法が効かないからね」
とりあえず俺達は部屋に荷物を置きに行った。
「病気っていったい・・・」
「ちょっと調べてみる必要があるな」
そして、俺達はまず宿屋のおかみさんの息子の病状を見させてもらった。
「これは・・・」
俺はスマホに入っている医学書を見る。
「やっぱり」
「お兄ちゃん、わかったのですか?」
「ああ、ニューモシスチス肺炎だ」
「ニューモ・・・?」
ナナリーが首を傾げる。
「普通の肺炎とはちがうの?」
「酵母様真菌であるニューモシスチス・イロベチイによって引き起こされる肺炎だ」
「僕にはよくわからないけど、治るのかい?」
「大丈夫なのです。お兄ちゃん、私の魔法なら・・・」
「そうだな。よし、みんな今からいうものを集めてくれ」
こうして、俺達は薬作りを始めることにした。
「じゃあ、ほのか。まずはこの石炭を魔法でコールタールに分離だ」
「はいなのです!」
「次は、コールタールを加熱して、出てきたベンゼンをあっちの鍋へ」
ほのかは火魔法と風魔法を駆使して、ベンゼンを移す。
「そしたらこの硫酸を加える」
「りゅうさん・・・?」
ナナリーとシルフィは訳がわからず眺めている。
「触ったら溶けて死ぬから気をつけるのですよ」
「はぁ!?」
「溶ける!?」
ナナリーとシルフィが同時に叫んだ。
「次にアンモニアを加えて・・・」
「なんか、すごく臭いわ・・・」
「すごく濃いおしっこみたいなもんだな」
「「おしっ!?」」
またしてもナナリーとシルフィが叫んだ。
「ねぇ、これ薬を作ってるんだよね?」
「ほんとに大丈夫なの?」
そして、いくつかの工程を経てようやく完成した。
「よし、完成だ!」
「これが・・・初めて見たのですよ」
「ああ!これが世界に革命を起こした抗菌剤、赤い弾丸『サルファ剤』だ」
そして、完成したサルファ剤を街の人に飲ませて、やがてみんな回復したのだった。
後日、私達はシーロン城に呼び出された。
「わざわざ呼び出しなんて何の用かしら」
ナナリーさんが呟く。
「いいかい、王様の前ではこうやって片膝を床について・・・」
シルフィさんにこの世界での礼儀作法を習う。
そして、王の間に到着した。
「シーロン王国第92代国王シーロン・アールスハイド殿下のおなーりー」
大臣らしき人がそう叫ぶと、王様が入ってきて王座に座る。
「面を上げい」
王様がそう言ったので、私達は顔を上げる。
「そなたらがセイヤ・モチヅキとその仲間じゃな?」
「はい、わたくしが望月誠也と申します」
お兄ちゃんが王様に言う。
「妹のほのかなのです」
お兄ちゃんに続いて自己紹介する。
「エーデルフェルト家が長子、シルフィエット・エーデルフェルトです」
「スピルバーグ公爵家が次女、ナナリー・スピルバーグでございます」
シルフィさんとナナリーさんも続いて挨拶をする。
貴族の挨拶ってああするのですね。
「此度のドラゴン討伐と、疫病治療の件、誠に大義であった。よってそなたらに双竜勲章を与える」
「謹んでお受けいたします」
「それから、討伐したドラゴンの素材はどうした?」
「はっ、こちらにございます」
お兄ちゃんはそう言うと、異空間収納からドラゴンの死体を出した。
それは広い王の間を埋め尽くす大きさだった。
「これは見事。ここまで綺麗な素材は初めて見た。このドラゴンは王国が買い取ろう。ふむ・・・10億ジルでどうかな?」
「じゅっ!?」
ナナリーが叫びかけた。
「はっ、おうせのままに」
お兄ちゃんが返事をする。
日本円だといくらくらいかな。
まさかジンバブエドルみたいなことはないよね・・・。
300兆ジンバブエドル=1円みたいに。
そして、私達は勲章とドラゴンの売却のお金を手に入れた。
お城を出て、ナナリーさんに聞いてみた。
「10億ジルってどれくらいなのです?」
「そりゃあ、爵位が領地付きで買えちゃうわよ」
とりあえず私達は大金持ちになったらしい。
異世界に来ちゃったけどお兄ちゃんと一緒なら大丈夫なのです @pon0610
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