意外な人物
手紙を書き、氷鬼家と煌家に送った。漆家には琴葉さんが伝えてくれるみたいだし、水仙家は水分さんが協力してくれるという事だから問題はない。あとは、いい返事が返ってくるのを今は待つのみ。
紅音達は大丈夫だろうか、何も起こっていないだろうか。手紙は受け取っているが、そうだとしても心配な物は心配だ。
闇命君は法力の制御を体に覚えさせるため、半透明な姿で筆や座布団。湯呑や急須などを持っては置いて、持っては置いてを繰り返している。
火付け役の琴葉さんがいないからそうやって感覚を身に着けるしかないのか。なんか、色んな物に興味を持って遊んでいる子供みたいに見えるなっ――――
「どわっ!? おい!! なに急須を投げてんだよ! もし俺が取る事出来なかったら割れていたでしょうが!!」
『変な事を考えていたからでしょ。そんな事を考えている暇があるのなら、蘆屋道満が襲ってきた時にどうするか、しっかりと考えておいた方がいいと思うよ。咄嗟な動きなんて出来る訳がないんだからさ』
「はいはい、すいませんでしたー」
まったくもう。投げられた急須をテーブルに置いて、俺も修行に行こう。一技之長をもっと扱えるようにして、少しでも戦闘で有利に戦えるようにしようか。
「靖弥、俺修行しに行こうと思うんだけど、どうする?」
「…………」
ん? なんか、靖弥が険しい顔を浮かべている? どうしたんだろう。
「靖弥? 何かあった?」
「…………なにか、変な気配を感じないか?」
「え、気配?」
あ、闇命君も靖弥の言葉に反応している。
気配なんて、感じないけど……。
試しに探ってみるけど、何も感じない。人の気配も感じないし、靖弥は何を感じ取っているのだろう。
「重い何かを感じているような気がする、動くのがものすごくだるい」
「俺は何も感じないけど……」
でも、今の靖弥は嘘を言っているようには見えない。膝の上に置いている拳は強く握られ、額には大粒の汗。息が荒いし、肩が上下に動いている。相当きつそうだ。
「靖弥、今は休んだ方がいいと思う」
「いや、休むというより…………」
…………ん? 言葉が途中で切れっ――――
――――――――ザクッ
っ?! 襖から、刀……?
☆
馬車に揺られているのは、自身の陰陽寮に向かっている月花琴葉。腕を組み、外を眺めている。
疲れた体を癒すため、そっと目を閉じた。だが、その眼はすぐに見開かれる。
「っ、止めろ!!」
御者席に座る人に叫び、すぐに馬車を止めさせた。なぜ止められたのかわからない御者席の人は目を丸くし、琴葉を見る。
「なにか?」
「……いや、なんでもねぇ。驚かせて悪かったな、もういい」
「はぁ…………」
外を見る琴葉は、険しい顔を浮かべながら座り直し言う。また手綱を引き、馬車を走らせた。
琴葉は揺られる馬車の中で、外を眺める。その目は至るところに向けられ、奇襲などを警戒していた。
「手紙、安倍家にしか届かなかったか。まさか、途中で俺の式神が…………」
「せめて」と言うと口を閉ざし、今度こそ目を閉じ、動かなくなった。
☆
襖から急に刀……。ぎりぎり当たらないところだったから誰も怪我をすることはなかった。
「だ、誰だ!!」
――――ガラッ
靖弥が叫ぶと、同時に襖が開かれる。そこには、般若の面をかぶった成人男性。
……………………ん? 般若の面? この人、どこかで会ったような気が…………。
「あ!! 靖弥の服を仕立ててくれた人!!」
市場に行ったはいいが、俺以外の人がまさかの人込み恐怖症で困っていた時に助けてくれた人だ。俺を闇命君のお父さん、
というか、なんでこの人が俺達を襲ったんだ? しかも、さっきから何も言わない。
「…………およ? 煌命?」
「いえ、俺は煌命さんの子供である闇命です」
え、またこの会話やるの!?
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