調書室

 とりあえず件について知るため、この陰陽寮にある資料室。通称、調書室へと向かった。俺が住んでいた世界で言う図書室みたいな感じかなと予想している。

 様々な極秘資料などもあるらしく、中に入る時は必ず上司への報告が必要。


 紫苑さんに報告すると「君なら大丈夫だよ。自由に使ってくれ」との事だった。信用してくれてるって事でいいんだよね、間違いないよね。馬鹿だから極秘資料とか分からないだろうとか思われてないよね。


 とりあえず、教えてもらった通りの道を進む。すると、暗い廊下から大きな襖を発見。なんか、重々しいなぁ。と、とりあえず開けるか……。


 うわっ、中暗いなぁ。唯一の光源は蝋燭だけか。透明な被せ物の中で淡く照らしている。


『件の資料は、奥にある本棚にあったはずだよ』

「おうい?! お、起きたんだ闇命君、ありがとう」

『何驚いてんの? 気配で気づきなよ、阿呆。どうせ件について調べようとしたんでしょ? 早くしなよ』

「いやいや、なんでわかったの? ずっと寝てたのに」

『僕だから』

「際ですか……」


 闇命君は本当に謎に包まれた少年だなぁ。いや、単純に起きていただけかな。わかんないや。


 調書室の奥へ行くとどんどん暗くなっていく。本棚に置かれている本が見にくいなぁ、題名すら読みにくい。もう少し光源しっかり働いてくれよ、目が悪くなる。


『ここは紙が沢山あるから、必要の際は自分で蝋燭に火を灯す事になっているんだよ。もっと奥に行けば予備の蝋燭があるから火を灯して』

「なるほど。ある意味しっかりしているんだね」


 言われた通り奥へ行くと、確かに火が灯されていない蝋燭が数本とマッチが置かれている棚を発見。振り返ると、壁にはしっかりと蝋燭を立てるための燭台が壁に備え付けられている。


 倒さないように気をつけながら蝋燭に火を灯し立てる。よしっ、先程まで暗かった部屋が少しだけ明るくなった。


 部屋の大きさまでは分からないけど、一般的な図書室と同じぐらいの大きさのようだな。

 本棚が沢山あり、テーブルや椅子などは無い。立ち読みしろという事か。まぁ、別にいいけど。


 本棚には沢山の資料がまとめられた本や、巻物などが置かれている。どれも表紙などに名前が書かれているため、内容がどのようなものかわかりやすいな。


 件について書かれていそうな資料を探していると、ちょうど見つける事が出来た……と、思う。


「件について書かれているのって、結構多いんだね」

『一つの妖でも何通りの仮説や伝承、対処方法などがあるからね。どれが本当でどれが偽物かなんて分からないから、とりあえず、一つにまとめているんだと思うよ』

「そっか。地方によって名前が違うみたいな感じかな」

『知らないけど、そんな感じの解釈でいいんじゃない? 知らないけど』


 なぜ二回も言ったんだこの少年。まぁ、いいけどさ。


 とりあえず、一冊だけ取って中を確認するかな。


 えぇっと? わぁお。挿絵とかはなく字がびっしりと書かれてる。普段から漫画を教科書として見てきた俺にはキツい。あ、やべ。眠くなってきた。


『耳、噛むよ』

「ごめんなさいすいませんでした申し訳ございませんお許しください」


 地味に痛いんだってばだからさ。


 闇命君の脅しに耐えながらも件について調べてみたけど、やっぱりわかったのは、生まれて数日で死ぬ事と予言する事だけだ。

 後は牛から生まれた奇獣とか人と牛の雑種──って、ある訳ないだろそんなの!!! え、有り得るのか? いや、深く考えないようにしよう。妖について深く考えたら負けなんだ。


 他に書いてあったのは、いつ死ぬかの違いとか予言についてばかり。


 たまたま重なっただけなのか? 件の予言派と陰陽師の予言派で別れてたとか?

 え、関係ないよな。人間に頼むか妖に頼むかの違いだろう。ほとんど一緒……、では無いか。


「とりあえず、件についてはなんの進展もなかったな………」

『まぁ、件自身出来る事と言えば予言ぐらいだからね』


 だよなぁ。次はどうすればいいんだろう、何を調べればいいの?


『件自身が駄目なら、次はその周囲について調べたらいいと思うけど?』

「周囲? あ、件にお願いした人とかその年に何があったとかをって事か。確かにね」

『頭悪すぎでしょ。もっと頭を働かせないと生き続けられないよ』

「ご最もで……」


 あぁ、先は遠いなぁ。くそっ、ゴールが見えない。


「頑張れ俺、負けるな俺」

『自分を慰めるのはいいけど、早く目的の本を探して』

「はい」


 とりあえず闇命君に従い件が出現した村や、その年について何か残されていないか探す事しよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る