めんどくさい
別の本棚を見てみると、色んな村が記載されている本を発見!
何冊もあるけど、持ってきた資料に書かれている村の名前を探すとしようか。
「あ、見つけた、奇跡」
なんと。適当に手を伸ばした本に、ちょうど探していた村について書かれていた。ラッキー。
中を開くと、村の図解などが書かれてる。
家の位置や井戸、あとは細かく何かが書かれているけど、普通の村紹介だなぁ。
「…………よし。怪しい所がないな」
『阿呆なの馬鹿なの間抜けなの? 馬鹿なのは仕方がないけど、少しは自分が恥ずかしいとか思った方がいいよ。誇りを捨てたら終わりなんだから気をつけなよ』
うるせぇよクソ餓鬼!!!!
『気になる箇所、あるでしょ』
「え、どこ?」
再度同じページを見てみるけど、特に気になる記載はない。闇命君は何を見てそう言っているのだろう。
『なんでも怪しむ事を覚えなよ。人を信じすぎるとこっちが損するだけなんだから』
「いや、それはまた違うと思うけど。それに、今はそんなの関係ない……」
『ここ』
闇命君は鼠の姿から半透明の姿になり、俺の持っている本のある一点を指す。そこは、村の井戸……?
「井戸がなんで怪しいの? 説明文も別に変わってないと思うけど」
『だから、この文を全て信じるなんて馬鹿げてるって言ってるでしょ。馬鹿』
「ハイハイすいませんでした。それで、なんで井戸が怪しいの?」
もうほっとこう。突っかかっていたら話が進まん。
『井戸ってさ、物を隠すのに最適だよね』
「え、それって──……」
もしかして、井戸の中に何かが隠されていたって事? でも、それが件となんの関係があるのだろうか。
あ、もしかして。井戸の中にある物を見つけ出すため、件に予言してもらったとか?
いや、それなら村の人が普通に井戸の中に入り、探し出せばいい話か。わざわざ件や陰陽師の予言を利用しなくてもいいだろう。
『井戸の中に何があるかは分からないけど、確認してみる価値はあると思うよ。正直、件とはあまり関わりたくないけど……』
「え、関わりたくない? なんで?」
『件に予言されたらその内容は必ず当たる。それってつまり、死を宣告されてしまったら抗う事が出来ないってのにも繋がる。封印しても殺しても意味は無い、直ぐに転生してしまう。僕達にはどうする事も出来ないんだよ。だから、関わりたくない』
なるほど。確かにそう考えると関わりたくない……。でも、沢山の依頼があった訳だし、何かあったのは確実じゃないのか。
ほっとくのも気が引けるというか、元々ほっとくという選択肢は俺達に残されていないけど。
もしかして紫苑さん。そういう面倒くさそうな依頼は全て後回しにして、今この気に片付けてもらおうとか考えてないよね……。それなら、さすがに怒る。
『ここで考えても怒りが芽生えるだけだから、やめておいた方がいいよ』
「闇命君が言うならそうだね。やめよう」
闇命君ももう諦めた顔を浮かべてるし、やるしかないんだよね。はぁ……。
『ひとまず、この村に行くしか道はない』
「でも、どうやって外に出るの? 闇命君は陰陽助以上の階級の方と一緒でしか外に出れないんでしょ? また紫苑さんにお願いするの?」
『次は何を言われるか分からないから、それだけは避けるよ』
なら、あの頑固オヤジである……、えっと、なんだっけ。名前……。あ、思い出した。
……えぇ?! あの人にお願いするのも一苦労なんだけど。一緒の行動も避けたいし……。なんで琴平はただの陰陽師なんだよ。あの実力と真面目さ、他人に手を差し伸べられる優しさがあるのなら、もっと上に行っていてもおかしくないのに。
「……行くしかないのか」
『それしかないね。僕も嫌だけどやるしかない』
はぁ、やるしかない。やるしかないよ。もう、諦めろ俺。
とりあえず、ここにはもう用はないから本を棚に戻して、部屋を出よう。
『火を忘れないでよ』
「あ、はい」
火をしっかりと消して、今度こそ廊下に出た。
「とりあえず、どうやって説得するかをまず考えよう」
『その前に説得方法からだよ。僕が何言ってもどうせ聞き入れないだろうし。まぁ、ロバの耳がついているから仕方がないね。目視出来る物とか準備しておいた方がいいかもしれない。耳を使わなくてもいい方法』
し、辛辣だなぁ。まぁ、それだけ嫌いなわけだし、俺も同じだからいいんだけどさ。
紙に書くとか、依頼資料に紛れ込ませるとか……。うーーん。
あ、廊下を歩いていたら前から人。
「………はやっ?!」
闇命君が一瞬にして鼠の姿に切り替わった。めちゃくそ早すぎませんかね?
そんな闇命君を拾い上げ肩に乗せる。こうしないとあとが怖いし……。
「あ、闇命様」
「どうも……」
少し複雑そうな顔を浮かべながら男性はゆっくりと頭を下げてきた。
なるほど、この人の位はおそらく下の方なんだろう。だから、上位にいる闇命君には礼儀をわきまえないといけない。でも、周りからの話で良い印象を持っていない。
おそらくそんな感じだろう。偏見だけどあってるよな、多分。
「では、僕はこれで失礼します……」
「あ、うん」
眼鏡を直し、去って行く男性。背中が丸いし、自信なさげな雰囲気。こんな陰陽寮だもんな、位は低そうだし肩身が狭いんだろう。
『あいつ、使えそうだね』
「使える? 何が?」
『おそらく、一番下位にいる雑用係、
鼻をピクピクしながら何か言っているんだけど。嫌な言葉だなぁ、利用しようとしているのがもろばれ。何をするつもりなんだろう。
『あいつを利用する方向で考えると、手紙を書くのが一番手っ取り速い部屋に戻れ』
「はいはい。仰せのままに」
……………………ん? 手紙? あれ、闇命君って確か、物を持つことが出来ないんだよね? 手紙を書くって……、ま、まさか……。
☆
『お前。まず字を書くところから練習ってどういう事? 今までどうやって生きてきたの。筆すら使えないってどういう事。何この蛇みたいな文字、なんて書いてあるの? 下手にもほどがあると思うけど、馬鹿なの? 君がこの世界に来る前でも筆ぐらいは触った事あるでしょ。なんで書けないの?』
くっそぉぉぉおおお!!!!! 何で俺は部屋に戻った瞬間に筆の準備をさせられ、言われた文字を慣れない筆で書かされてんだよ。加え、この怒涛の攻撃。
筆を握る事すら出来ない闇命君の代わりに、俺が手紙を書くことになったんだけど。転生前ではシャーペンしか使っていなかった俺が、この世界で急に筆を扱えるわけもなく……。
「無理……」
『はぁ、わかった。なら、体を少しだけ返して』
「え、返してっ──」
なんだ、急に意識が。目の前が真っ暗になる。なんだこれ、眠気が──……
☆
『起きろクズ』
「──んっ。え、なんだ? なにが……」
あれ、いつの間にか眠ってた。何が起きたんだろう。
確か、闇命君がいきなり近付いてきて、体を返してとか言って。そこから意識が遠のき、そのまま眠ってしまった──みたいな感じか。確か、前にも同じような事があった気がする。
「あれ、手紙……。いつの間にか書き終わってる?」
目の前にある手紙には、びっしりと文字が書かれていた。その手紙の内容は──
『拝啓 陰陽助様
僕を外に出せ。出さなければこの陰陽寮は破滅するだろう。出せば特に何も起きない。僕の直感が外れた事など一度もないだろう。それでも出さないのならば、この陰陽寮は終わりだ。責任は取ってもらうよ。と、言う訳でご検討、よろしくお願い致します。敬具 安倍闇命』
…………脅迫状?!?!?!
待て待て待て。なんだこれ。え、これ。手紙? 脅迫状じゃなくて? いや、何度見ても脅迫状だ。手紙ではない。
「まさか、これを渡す気?」
『当たり前じゃん。これ以外に渡す物なんてある?』
「無いけどね?! でもでも、これは手紙ではなく脅迫状!!! 手紙はもっと丁寧にお願いする感じで──」
『これをさっきの直丁に渡して届けてもらうよ。多分、あのじじぃに届けられるのは四日後くらいだろう。それまでゆっくりと首を長くして待ってようか』
人の話を聞け!!! くそっ。もう、これを渡すしかないのか。
って、もしかしてさっき使えそうって言っていたのって、こういう事? 手紙を渡す要員して使う木だったの? 最初から?
『早くさっきの人に渡してきて。おそらく今の時間だと資料をまとめるのに調書卒にいるはずだから』
「う、うん」
あぁ、俺がぶつかってしまったばかりに、直丁さん、ごめんなさい。
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